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zoom RSS 博士の愛した数式 小川洋子 新潮社

<<   作成日時 : 2005/06/17 22:11   >>

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もう私が何か言わなくても十分に有名な小説なんですが、やはり好きなんで。
今週、私はけっこう新しい本を読んだのですよ。でも、数を読んでも、だめなものはだめなんですよね。あきません。私はここでは好きな本だけ紹介したいので、そういう時は、本棚からお気に入りをひっぱりだすことにします。

小川洋子さんは、「文体」というものを持っている今時稀有な作家さんだと思います。
いま、文体だけでその人がわかるような小説家はあまりいなくなりました。
昔学生だった頃、よく友達同士で好きな(もしくは有名な)作家の文体を真似てパロディをつくり、
よく遊んでいました。漱石、志賀直哉、芥川、川端康成、中島敦、吉行淳之介など。
彼らの文章は、みな一癖も二癖もあって、ページを開いたときの漢字の配分や言葉遣いなどで、香水の違いのように誰が書いたものかわかります。それは読むにつれてリズムになって自分にしみこみ、自分との「関係」を形づくってくれたように思います。

今、そういう自分だけの「文体」を持つ人は少なくなりました。それは、「小説」というものが持つ
意味合いがどんどん変わっていったからもあるだろうし、(どう変わったかは長くなるし、
えらい人が書いておられるだろうからやめますが。また機会があればじぶんなりの意見を
書いてみます。)そういう必要を読み手が求めなくなってしまったからかもしれません。
でも、それは私のような小説の舌触りや触感、匂いまで求めてしまう人間には少しさびしい
ことです。

小川洋子さんは、それをもっておられる、新作を心待ちにしている作家です。
この小説も、とても美しい。「美しい」という言葉がよく似合います。
80分しか持たない記憶。この消えていく記憶のはかなさと、その一瞬の積み重ねでここまで
心をかさねていく博士と、ルートと、家政婦である「私」の毎日のきめ細かさ。
「数学」という絶対の真理(宇宙人にも通じる唯一の真理だそうです)とその毎日の崩れそうな
はかなさの対比が、圧倒的な強さで心を打ちます。その絶対の真理である完全数「28」の
背番号を持つ阪神の江夏が彼らを結びつける鍵なんて、これはもう見事にパズルのピース
がおさまる快感にも似た感動ですねえ。3冊かって、人にあげました。

しかし、この小説は、小川洋子さんの作品のなかでは、特異な作品なのでは・・。
と思います。彼女のいつもの濃い匂いが、幾分薄いように思うのです。
それだけに、たくさんの人に受け入れられやすい作品になっているのではないのかな。
「沈黙博物館」のような小川洋子ワールドも大好きなのですが、この作品は、
10年に一度、の名作といっても言いすぎではないと思います。
まだ読んでない方は、ぜひどうぞ。至福のひと時がすごせます。

おいしい本箱へ → http://www.oishiihonbako.jp/detail.php?book_no=000250
小川洋子さんの本 → http://www.oishiihonbako.jp/detail.php?book_no=000099

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コメント(4件)

内 容 ニックネーム/日時
TBありがとうございます。
私は小川さんの本はこれがはじめてだったのですが、
とても素敵な本でした(^^)
おくだみき
2005/08/01 18:30
はじめまして!
トラックバックさせていただきました。

接し方を変えると、数学がこれほどまでに純粋で美しいものなのかと思いました。
それは、博士や家政婦さんやルート君が魅力的だということの裏返しなのかもしれませんね。

わたしのぶろぐは始めたばかりで稚拙ですが、ぜひ遊びに来てください。
今後もよろしくお願いします!
優樹
2005/10/08 22:41
優樹さん、ようこそお越しくださいました。博士は本当に魅力的です。映画になるそうですが、彼の役は難しいでしょうね。これからもよろしくお願いします。
ERI
2005/10/08 23:11
ものすごーくご無沙汰してしまいすみません!
今頃ですが、この作品を読み、感動に浸っています。TBさせていただきました。よろしくお願いいたします。
それから、ERIさんの「小川洋子の記事」、とても参考になります!一つずつ読ませていただきますね(^^)!
波野井露楠
2008/10/06 19:33

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