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zoom RSS 蒲公英草紙 常野物語 恩田陸 集英社

<<   作成日時 : 2005/07/17 16:29   >>

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昨日予告編(!?)を書いたので、やはり今日はこの「蒲公英草紙」で。
初めて恩田陸という作家を知ったのは、この「常野物語」の一作目でした。「常野」の人々の設定が新鮮で面白くて、夢中になって読んだのを覚えています。当時あまり有名ではなかった恩田陸という作家を、「面白いよ!」と人に勧めまくった記憶が・・。それからあれよあれよという間に次々と作品を発表されて、一躍メジャーな存在になられましたねえ。思い出のあるシリーズなので、とても楽しみにしていました。

今回は「常野」の人々がメインではなく、理想郷のような明治時代の「槇村」という集落の人々を「峰子」という少女の目を通して回顧録の形で描いた作品になっています。「草紙」というだけあって、「〜でございます」という穏やかな語り口で描かれ、昔の映画のような優雅な雰囲気です。物語の中心は「聡子」という槇村のお屋敷のお嬢様。美しくて聡明で、すべてを見通してしまうような恩田作品お得意の少女です。その少女の存在を核に、ふらっとやってくる「常野」の力を持つ家族とお屋敷に暮らす人々のひと時の物語です。戦争前の、美しくてどこか不安な時代の雰囲気がうまく描いてあって、そのあたりの力量はさすがです。

長くは生きられない少女・「聡子」の美しさとはかなさは胸を打ちます。物語の展開は丁寧だし、戦争という大きな渦に巻き込まれていく人々の運命を突然やってくる天災で暗示していくところなど、とてもうまい。それだけにこの聡子という少女の気高さが感動的です。時代を見通して生きる「常野」の人々の存在が、物語にはるかな時の流れを感じさせているのもすごい、と思います。

でも、なぜか食い足りない、と思うのは何でだろう。前作に、一つ一つの短編にもったいないと思うほどの着想とスリルが詰め込まれていたせいか、なんだかこの物語が間延びして思えてしまうのかもしれません。また、「常野」の人々という存在を抜いてしまうと、けっこうありがちな筋書きだともいえます。いや、ありがちな筋書きでもいいんですよ。今この物語を再び書くという強い動機がなさそうなんですよ。前回の「常野」には、体の中にあふれる物語を書くのが楽しくてたまらない、という強い気持ちが流れていて、それが暴走してしまうほどの勢いがありました。今回は、物語の構成や運び方はとても計算されているんだけれども、そのテンションがなんだか低いように思うんです。もちろん作家という職業を続けていく以上、毎作品をデビュー当時のようなテンションで書き続けるのは難しいことだろうと思うんです。村上春樹も言ってますよね、「小説家になるのは誰でもできることだけれど、小説家であり続けるのは大変なこと」だと。(原本あたってませんので、細かい言葉遣いの違いはご容赦)しかし、このシリーズは、恩田陸という作家にとってとても大事なものだと思うんです。もちろんずっと彼女の作品を読んでいる読者にとっても。その期待が大きすぎたのかなあ。美談を読みたいわけではないんです。人の存在の不思議をあぶりだす「常野」という人々の不思議さをもっと描いてほしかった。

とても好きな作家さんだけに辛口なことを書いてしまいました。これも期待の大きさ故。いやあ、ぐだぐだ昼寝してる割にはえらそうだなあ、私。はずかし。でもせっかく書いたので、アップします。

おいしい本箱へ  → http://www.oishiihonbako.jp/detail.php?book_no=000363
恩田陸さんの本  → http://www.oishiihonbako.jp/detail.php?book_no=000284
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多趣味が趣味♪
2006/09/07 22:35

コメント(5件)

内 容 ニックネーム/日時
はじめまして、かいくんと申します。

恩田さんは、偶に期待はずれをやっちゃいますよね。
たしかエッセイ集の「小説以外」でも、「自分は、小説とは様式美のせかいである。」と語っているように、型にはめちゃうところがありますよね。だから新鮮味に欠けるところがあるときもありますよね。

でも、それも含めて「恩田陸」なんでしょうね。
かいくん
2005/10/23 17:42
またやってまいりました。
私も前作(光の帝国)で味わうことのできたスリルのようなものを、
期待していなくもなかったのですが、
これはこれで満足しました。
なぜなら、これは常野の一族の物語なのですから。

とはいえ、このムードのまま終わってもらっちゃぁ困ります(笑)
スリリングなエピソードあり、
柔らかで心やすまるエピソードあり、で、
ずーっと常野の物語が続いていって欲しいと思うのです。
こばけん
2005/12/29 18:34
こんにちは!

> とても好きな作家さんだけに辛口なことを書いてしまいました。これも期待の大きさ故。

そうなんですよねー。私も恩田さんの作品に関しては、いつもそんな感じです。大好きなのに、感想を書き上げてみると誉めてないの(笑)。でも本当に好きなんです。3作目をまだ読んでいないので、楽しみにしています。では!
ゆうき
2005/12/30 02:07
こんばんは〜。
楽しみにしていた「常野」の続きってことで期待していたんですが、
私もちょっと肩透かしだったかもしれません(笑)
悪くはないんですが「〜ございます」口調だったから余計にテンションが上がらなかったのかもしれませんね。
3作目「エンドゲーム」はどうでしょうね?
そちらも読んでみようと思います。
tomekiti
2006/09/07 22:40
>tokimekiさん
確かに語り口がやさしい分、いつものたたみかける迫力には欠けるかもしれませんね〜。常野の物語は、やはりあの一族がメインじゃないと面白くないんですよね・・。自分の思いいれが強いからかもしれませんが。
「エンドゲーム」は、けっこうドキドキしますよ〜!!
私はあっちの方が好きかな!
ERI
2006/09/08 00:15

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