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zoom RSS チルドレン 伊坂幸太郎 講談社

<<   作成日時 : 2005/10/31 23:13   >>

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先日読んだ「魔王」がちょっと自分では消化不良気味だった
ので、初めて読んだ伊坂作品であるこれをひっぱり出してきた。
やっぱり好きだなあ、これ。伊坂氏の体質のようなユーモア感覚が
いい。

短編が五つ並んでいる。そのすべてにからむのは、「陣内」という
ちょっと変わった男。銀行強盗に平気で近寄っていったり、「ギターを
弾かせろ」なんて文句をつけたりする、傍若無人で目立ちたがりで、
はた迷惑なんだけども憎めなくて、それでいてギターを弾いて歌を歌わせ
たらえらくカッコいい男。彼が軸になって、事件や日常の謎がからむ
一波乱のエピソードが並べられていく。時間も五つの短編ごとにいったり来たり
する、ちょっと変わった構成である。それが最後の短編でうまく効いてくるのが
さすが。伊坂マジック、です。

まずこの「陣内」が、ユニーク。かっこいい盲目の青年の長瀬くんには、
「犬に近い」なんていわれて、奇人変人の常識知らずぶりを遺憾なく
発揮しているのだけれども、その世間の思惑にとらわれないところが
魅力なんだなあ。盲導犬をつれている長瀬くんが通りすがりのおばさんに
同情からか妙な善意でお金を握らされてしまうという、普通なら妙に人の
心を薄暗くさせてしまうシチュエーションで、「何でおまえがもらえて、俺が
もらえないんだよ」なんて平然と言ってしまう。「僕が盲導犬を連れているから
じゃないかな」という長瀬に、「そんなの、関係ないだろ」というその一言で、
彼は長瀬の憂鬱をふきとばしてしまうのだ。変ななぐさめや理解ではなく、
全くのその水平感覚が爽快。陣内に関わった人たちは、彼の言動に
振り回されつつも、結局彼のそういうストレートさに救われて、ほっとする。
そんな変人が「家裁調査官」という職業についていること自体が、これまた
おかしいのだけれども、そんな人間のどろどろの只中にあるような職業に
あっても、彼は全く変わらない。そして天の配剤のようにもやもやをすっきり
あるべきところに戻していくのも、また爽快。

もう一つこの短編集の軸になっているのは、「父と子」の関係だろう。
怖いものなしの陣内が唯一こだわり続けたのが、自分の父親との関係
のようだ。彼の父親はどうしようもない男で、彼の変人ぶりも一つはそこから
きている節もある。そして彼は人生のある地点でその父親に見切りをつけて
すっきりしたらしい。
彼が家裁の調査官という職業を目指したのにも、彼なりの思いがあったのかも。
少年事件という、砂浜の砂をすくうような現実やしんどさをふまえながらも
ヒューマニズムという向日性でその問題をさらっと書いていくやり方が憎い。
「そもそも、大人が格好よければ、子供はぐれないんだよ」
伊坂氏の書くかっこいいお父さんの代表は「重力ピエロ」のお父さんだと
思う。血の繋がらない春をしっかり愛して大人にした父親。
あの作品と抱き合わせてこの短編集を読んでみると、また父と子の関係に
対する伊坂氏の考え方がよく見えて面白いなあ。

陣内が、父親とどうやってすっきり決別したのか。
最後の短編に書かれているそのエピソードを読むと、なんだか人間に
対するおかしみと同時に、「こういうやり方もあるんだよね。」っていう
開放感もこみ上げる。このカタルシスが好きだなあ。
「魔王」のアプローチも面白かったし、新しい表現を目指すその姿勢は
素晴らしいと思う。型にはまるのは、つまらない。
でも、やっぱりこの方向も忘れないで書いてくださいね。好きなんだもん。

おいしい本箱 → http://www.oishiihonbako.jp/detail.php?book_no=000287
伊坂氏の作品 → http://www.oishiihonbako.jp/detail.php?book_no=000367
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蒼のほとりで書に溺れ。
2008/05/21 22:39

コメント(7件)

内 容 ニックネーム/日時
トラバ、ありがとうございました。「チルドレン」は、本当に大好きな本です。伊坂さんのほんの中では一番好きだし、伊坂本というカテゴリーをはずしたところで、装丁こみで、大大大好きなほんでもあります。永瀬ファンです(笑)。では!
ゆうき
2005/11/03 01:21
遅まきながら「チルドレン」を読了しましたので、TBさせていただきました。
いや〜!楽しかったです。もっと読みたいです!(笑)
景牙
2006/02/04 11:47
トラバ&コメントありがとうございます。
息子、娘がグレないようかっこいい大人を目指して日々精進します。
カゼトヒナ
2006/06/30 01:26
ERIさん、こんにちは(^^)。
陣内のブッ飛びぶりが、すごく面白かったです。
陣内はなんだかんだ言って、筋が通ってますね。もちろん、フツーの通り方と全然違いますけど。そういうの、本当に恰好いいです!
水無月・R
2008/05/26 10:36
>水無月・Rさん
伊坂さんの作品のヒューマニズムって、いいですよねえ。
自分がなにを大事に生きているか、皆ちゃんとわかってるのが、気持ちいい。
伊坂さん、新作でましたよね?早く読みたいです(*^m^*)
ERI
2008/05/29 00:38
一見、粗雑そうな陣内さんは危うい青少年の気持ちに寄り添える人。こういう人を、若者は嗅覚で見分けるような気がします。実在したらいいのに。目の不自由な人の日常の描写が丁寧で、新鮮でした。健常者の物差しで常に世の中を見てるんだな、私。と反省した。
読み終わってスカッとした、ひさしぶりの小説です。
ツタヤの店頭で、手書きのおすすめポップをちょっと信じて読んでみたら、ヒットでした (^_^)v
catseye
2010/01/12 14:00
>catseyeさん
私も、この作品大好きです。陣内さんの価値観は、綺麗事じゃなくて、まっすぐで、ブレがないじゃないですか。だから、読んでて気持ちいいんですよね。
私たちは、一つの人生しか送れない。でも、物語を読むことで、いろんな眼差しに寄り添うことが出来るんだなあと、気付かされます。
また、ヒットがあったら教えて下さいね!
ERI
2010/01/13 12:21

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