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zoom RSS 砂漠  伊坂幸太郎 実業之日本社 

<<   作成日時 : 2006/01/09 22:42   >>

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画像とっても気になっていた、伊坂氏の新刊です。
「大学」というオアシスですごした四年間の
「青春グラフィティ」とも言うべき物語。
語り手である北村、やませみのような髪型を
したいまどきの若者鳥井、
クールな美人の東堂、おっとりしてそうでなかなか
凄い能力の持ち主の南、
そしてこの物語の核になる爆弾男、西嶋。
読みすすめるうちに、彼らの四年間が終わるのが
ちょっとさみしくなってわざとゆっくり読んだりして。
うん、大満足の一冊でした。

以下ネタばれあり、です。



登場人物がどれも活き活きしていて、楽しい。
皆この四年間が「進学」という
競争を一段落させて新たな「社会」
という砂漠にでていく前の限られた時間であるという
ことがよくわかっている。だから合コンにも励みたい
し、彼女も作りたい。そんな気持ちが充満している
コンパのシーンから始まるのだが、西嶋くんだけはそんな
学生達とは別の次元にいる、ちょっとした異端児なのだ。
小太り、眼鏡、暑苦しい・・。頭に浮かんだのは、
サンボマスターの山口くん。熱く人生と社会を語りまくる
ところなんか、そっくり・・。
「その気になればね、砂漠に雪を降らすことだって、余裕で
できるんですよ」とにかく直情型で、熱くて、うざいタイプ
として登場する彼なんだが、そのストレートさと裏表のない
行動の仕方が、なんだか憎めない面白いヤツなんだわ。
彼は施設に収容されていた、保護期間がきれそうだった犬を
ちゃっと引き取りにいってしまう。(その後どうするか、は考えない
んだが・・。)コンパし放題の鳥井くんは、それがもとで事件に巻き込まれて
しまい、片腕をなくしてしまう。そんな彼にどうやって接していいのか、と
北村たちは戸惑い、遠巻きにしてしまうのだが、西嶋は見事なストレート
さで、そのわだかまりを解きほぐしてしまう。
このやり方はあまりにしょぼくて笑ってしまうのだが、そのしょぼさが
西嶋の魅力。この西嶋くん、若いころに万引きしちゃって家裁に
送られたことがあるらしい。そこで、家裁の調査官に本を貰った、と。
調査官?「チルドレン」の陣内くんだよね、これ。うん、陣内くんと
西嶋くんは、共通するものがあるなあ。
「困ったヤツ」なんだけど、憎めなくて、ストレートで、まわりに
いる人たちが彼を中心にして連帯意識を持ってしまう・・。
「したいと思っててもカッコ悪くてできない」
と思うハードルを、やすやすと乗り越える西嶋。
「人間とは、自分とは関係のない不幸な出来事にくよくよすることですよ。」
なんて、サン・テグジュペリを引用しながら、やはりダサい西嶋くん。
そんな西嶋くんが超クールな東堂ちゃんと紆余曲折を経て
カップルになるところにはじーんとしてしまいましたよ。

「春」「夏」「秋」「冬」というように季節ごとにエピソードが書かれて
いるところも、学生時代を彷彿とさせるうまい構成。南ちゃんの超能力、
キックボクシングジムのチャンピオン、そして西嶋くんのバイト先にいる
怪しい古賀さん(伊坂作品にいかにも顔を出してそうなタイプなんだけど、
私にはわからなかった。どっか、でてましたかね?)が見事に物語りに
からんでいくところも、うならされました。人生はこうやっていろんな
ところで進行する物語が重なっている一つの風景なんだな、と・・。
語り手である北村が、西嶋くんとは全く正反対の冷静で、一歩ひいた
ところから全体を眺めるタイプで、その対比がまたよし。

これは想像なんですが・・。
法学部の西嶋くんは、やはり家裁の調査官を目指すんじゃないかしら?
そうだと楽しいなあ。

中東とアメリカの戦争、期限切れになって処理されていく動物達、
簡単に人を傷つける、それが平気にできるということ。
毎日ニュースを見れば、もううんざりするほど転がっている
「ゾンビ」になりそうなことがあまりにも多くて、私達は途方に
くれてしまう。途方にくれてしまって、かえって心を閉ざしてしまう。
見ないふり、聞かないふり。
西嶋くんだって、たいしたことはできやしない。
私だって、何もできはしない。
でも、「目の前で困っている人がいればばんばん助けりゃいいんですよ」
って、言い切る彼に祝福を送りたい。よし、これを機会にサンボマスターの
ファンになってみるか・・。

・・・なんてことは、まるでない。なんてね。

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伊坂幸太郎『砂漠』  ★★★★☆
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book diary
2006/01/14 23:08
砂漠 伊坂幸太郎
砂漠伊坂 幸太郎 実業之日本社 2005-12-10by G-Tools 大学生活の「日常」を丁寧に描いてくれて、懐かしさを感じさせてくれる本です。ああ、大学時代って、こんな感じだったなあ、と。実際は、麻雀、合コン、ボーリングなど私はあまりしていないことを、彼らはするので、実体験的にはオーバーラップしないんだけど、その「感じ」だけは、たぶん大学に行かなかった人も、「青春の思い出」感覚を共有できるんじゃないかと思います。 ...続きを見る
IN MY BOOK by ゆうき
2006/01/22 11:22
『砂漠』 伊坂幸太郎 (実業之日本社)
砂漠伊坂 幸太郎 / 実業之日本社(2005/12/10)Amazonランキング:位Amazonおすすめ度:Amazonで詳細を見るBooklogでレビューを見る by Booklog <“いつまでも素直な気持ちを忘れずに生きようよ!”ということを教えてくれる青春小説の決定版!> 今までの伊坂作品は本作と比べて読者を選ぶ節があったような気がする。 実際、私の周囲の人に貸しても面白かったと素直に喜んでいただける方7割と、少し斜に構えてるいるんじゃない(理屈っぽいという意味合いだと思われます)... ...続きを見る
活字中毒日記!
2006/02/10 00:05
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いいです。 うん。 いいです。 青春小説です。 ...続きを見る
こばけんdays
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コメント(9件)

内 容 ニックネーム/日時
ERIさん、こんばんは♪
ご無沙汰しております。
活字中毒日記のトラキチです。
多忙な日々から解放され、ほぼ復活できました。
これからもよろしくお願いします。

素晴らしいレビュー読ませていただきました。
私も大好きな作品となりました。
ネットを通じて一緒に感動を分かち合えるって素晴らしいですね。

ご投票いただいている第4回新刊グランプリあと一ヶ月あまりです。
またお暇なときに是非お立ち寄り下さい。
第5回には『砂漠』もエントリーさせていただいております。
現在トップ独走中です(*^_^*)
トラキチ
URL
2006/02/10 00:15
>トラキチさん
復活おめでとうございます!トラキチさんもお気に入りなんですね。
うれしいです。「共感」って、いいですね。
グランプリ、また行かせていただきますね。
ERI
2006/02/10 22:05
ERIさん☆はじめまして
ミステリータッチの作品が多かった伊坂さんだけど、こういう展開もあったのか!とビックリでした。
それにしても、なんて気持ちいいストーリーなんでしょう!
また、時々お邪魔させていただきます。m(__)m
Roko
URL
2006/02/12 00:09
>RoKoさん、はじめまして!コメントとてもうれしいです。
読んでいて快感を覚えるほど楽しい作品でした。青春て、いいな、と。
(爆)お涙頂戴ではない青春のよさを十分味わいました。
こういう作品はまるで自分の思い出のように記憶に残りますね!
ERI
2006/02/12 20:18
こん**は。TBさせていただきました。

良くも悪くも愛すべきキャラクター西嶋くんには惹かれるものがありますね。
そして、

>サンボマスターの山口くん

まさに!(笑)
この部分を読んで、久々にPCのモニタに向かって手をたたいてしまいました。

作品自体は、読み終えてしまうのがもったいないくらいの気持ちいい傑作ですね。
こばけん
2006/02/23 14:31
こんにちは。
先日はTB&コメントありがとうございました^^
伊坂作品も、私はとても好きです。
「砂漠」もとても好きですね。
5人の友情ですか。それがとても素敵です。
陣内登場はびっくりしたけど、とても嬉しかったですね〜^^
チルドレンは伊坂作品の中では1番なんです。私の中で。
「夏」が辛かったですけど、良かったです。
苗坊
URL
2006/03/01 08:44
「チルドレン」は、私もお気に入りです。
伊坂氏の独特のヒューマニズムが、いい感じに心に沁みるんですよね。
「夏」を乗り越えた彼らが、素敵でした・・。
ERI
2006/03/01 22:02
これはですね、語りたいことが多すぎて、結局、自分のブログでは何も語れなかった作品ですよ。こうね、皆で自分の青春譚を交えつつ語り合うべき作品。尤も、夜を徹しても語りきれないかもしれませんね。
すの
URL
2006/03/05 15:19
>すのさん
TBとコメントありがとうございます。読むことで自分の記憶を呼び覚まされ、自分もその物語の一員のように感じることができる作品。それはとりもなおさず、いつまでも読み継がれていく作品、ということになるんじゃないでしょうか。この物語には、それだけの力がありましたね!
ERI
2006/03/05 21:36

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