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zoom RSS ザ・チーム 井上夢人 集英社

<<   作成日時 : 2006/02/26 21:41   >>

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画像久々の井上夢人さんの新刊です。
彼の書くミステリーは、いつも新鮮で期待して待っている。
今回の設定も、なかなか意表をつくものではあったが、
ちょっと彼のものとしては、小粒かな?

話題の霊能力者、能城あや子。相談者の悩みを聞いて、
常にそれに対して千里眼のように正確な答えを出してみせる。
しかし、それは表の顔であり、実はそれは彼女をサポートする
有能なチームの作業によるもの。
マネージャーとしての鳴滝昇治。どこにでも忍び込んで
依頼者の秘密を探る賢一。コンピューターを思いのままに
あやつることで、情報をどこからでも引き出せる悠美。
彼らは相談者も気づかないうちに、彼らの内情やその相談の
背景をさぐり、的確に答えを導き出していく。

一つ一つの短編は緻密で、色々な技術を駆使して小さな
ほころびから大きな情報を引き出していくあたり、やはり
面白くて、一気に読ませる。登場人物それぞれの役割も
はっきりしていて、「チーム」として一つの謎に向かっていく
過程の面白さがくっきりと書かれていて、ストーリーテラーだな、
と思う。「めかくしおに」に書かれている母親の恐怖や、「おがたま」
の、人間のちょっとした気持ちの行き違いなど、謎の設定もリアル
で、今の世相や人のしんどさが、うまく突いてあるし。
でもなあ、最後までもう一つ気持ちが乗り切れなかった。

一つは、なぜこのチームがここまでうまく機能しているのか、
つまりこのチームを結びつけているものが何か、という部分が
希薄なこと。何をきっかけに彼らが出会い、そしてなぜこんな
稼業を続けているのか。大体やっていることは犯罪すれすれ、というか
まあ住居違法侵入という立派な犯罪でもあることをしてまで
彼らがなぜこれがやりたいのか、というところが見えてこない。
こういう違法性ぎりぎりの設定なら、やはりそこが書かれていないと
感情移入して、とっぷり楽しめないんだなあ。

あと、この「個人情報」というのがいとも簡単に暴かれるという
ことに対するうすら寒さもある・・。
これ読んだら、もう私達が個人としての情報をきっちり守ろうと
するのは、まず無理なんじゃないか、と思えてくる。
完璧にやろうとするとノイローゼになるでしょうね、ほんと。
でもきっとどんなにやったつもりでも、この賢一や悠美のような
プロにかかったらひとたまりもない。
まあ、そんなご大層な秘密のあるようなドラマチックな人生を
送ってはいないけれども、それでも人間、知られたくないことの
一つや二つ、あるわけで・・。
この物語にでてくる相談者達は、まずそういう形で「テレビに出る」
という事を承諾してしまった人たちなんだという事はあるのかもしれませんが。

その二点が気になって、というか読んでいる間中ちらついて、
素直に物語に入り込めなかった・・。
そこが残念です。今の情報化時代に、その裏側を突いてミステリーを
書く、というのは当然あってしかるべきなのですが、「ミステリー」という
魅力がそれによってうまく引き出せるかどうか、ということを
考えると諸刃の刃かな、という気もします。
ミステリーがヒューマニズムに満ち溢れている必要は、全然ないのだ
けれども。でも、井上夢人さんの作風は、やはりヒューマニズムにあると
思うんですよね。作家が新しい地平に挑戦する、というよりはちょっと
時事的な面白さにとびついちゃったかな、というところがもったいない。
井上ファンとしては、少し残念な一冊です。

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theTEAMザ・チーム 井上夢人
イラストレーション:おおの麻里。 1982年徳山淳一との競作筆名・岡嶋二人として「焦茶色のパステル」で江戸川乱歩賞受賞、86年「チョコレートゲーム」で日本推理作家協会賞受賞、89年「99%の誘拐」で吉川英治文学& ...続きを見る
粋な提案
2006/10/05 01:23

コメント(2件)

内 容 ニックネーム/日時
コメント、トラバありがとうございます。二階堂黎人さんの「カーの復讐」をアップした時に探させていただいて、ついでに手元にある本と合いそうな記事はメモしていたつもりだったのですが、チェック漏れでした。ごめんなさい(汗)。「きみの友だち」は探せたんですけどね・・・。テンプレートが豊富なウェブリブログですが、検索が付いてないので記事を探す時、ちょっと手間取ったり。あ、もちろんERIさんには不可抗力なので、気になさらないでくださいね。
この作品、私は単純に楽しんでしまいましたが、結び付けている理由と個人情報の危うさ、大きくうなずけました。というより、気づけなかった自分が恥ずかしかったりします。井上さんの作品、読んでいるのはごくわずかなのですが、作風がヒューマニズムというのはわかる気がします。
ライブレポート、楽しく読ませていただきました。テンションがしっかり伝わってきましたよ。私も本以外の日常を綴ってみようかと思ったりもしますが、タイピングがおぼつかないほど遅いので、今の読書感想だけに留めている方が良さそうです。それでなくても飛び飛びがやっとの更新なので・・・(苦笑)。
藍色
URL
2006/10/05 02:02
>藍色さん
そうなんですよ・・。このBIGLOBEは検索しにくいのが欠点なんです。引越しも考えないではないんですが、これだけ書いてしまうと、全部持ってのお引越しも辛くて。すいません・・。

いやいや、単純に楽しむのが正解なんですよ、きっと!!私のは小理屈をこねる、というヤツでして。ちょっと何かいって見たかったのかも(汗)
ライヴレポ・・読まれてしまったんですね(照)
自分で書いといて照れるなって話ですねえ・・・。私も日常を綴るのは苦手です。ちっともドラマチックやないし・・。本もライヴも私にとって特別な存在なんで、いっしょくたなんですわ(爆)
ERI
2006/10/05 21:07

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