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zoom RSS 月族 今村恭子 海竜社

<<   作成日時 : 2006/03/12 23:44   >>

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画像なんとも美しい天野喜孝さんの表紙に
ひかれて、手に取った。
月の光を浴びるような、なんともきれいな物語だった。
初めて出版された本らしいのだが、その初々しさもまた
好ましかった。

薬子は19歳の大学生。
まだ一度も恋をしたことがない。
人が恋に悩む気持ちを実感することが、できない。
人間として何かが欠けているんじゃないか、と思ったりもする。
薬子は、幼い頃から月が大好きだ。いつも月が自分に寄り添って
くれているような気がする。だからいつも薬子は月をみつめる。
そんな彼女は、ある日美しい女性に、自分の息子の話し相手
のバイトをしないか、と誘われる。身体が弱く、家から出られない
飛鳥という彼に会いにでかけた薬子は、そこで彼に月族の話を聞く。
この世界には「月族」という、はるか昔月から降り立った人々の
血をひく人々がいる、という。彼らは常に月に惹かれ続ける。
そして彼は薬子に、昔々のプラリネという月の乙女の物語を
語り始める・・。

物語はこの、誰も愛せない美しい乙女であるプラリネと、
薬子の日常を交互に語る形で書かれている。
今村さんは本当に月が大好きらしい。
振り向くと、月がいつも自分を見ている。
そんな思いは私もよく感じることがある。
うちにはなぜか天窓があるんですが、そこにちょうど月がかかると、
灯りを消した部屋の中が銀色になる。
殺風景な部屋が、その時だけはなんだか違う世界に染まるようで、
月光というのはなんて優しくて淋しいのか、と思う。
人の根源的な郷愁を誘うものですよね、月は・・。
そんな思いを非常に美しい形で物語にして見せてくれる、
そのことに感動しました。

プラリネの物語は、やはり「かぐや姫」のお話がベースになって
いるようだ。たくさんの男達の心をとらえながらも、その誰をも愛せない
プラリネ。「人を愛する」って、どういうことだろう?
その問いに一生を過ごしたプラリネの物語を聞きながらその物語と重なるように
薬子のまわりにも何人もの男があらわれ、薬子に関わろうとする。
しかし、薬子もプラリネのようにその誰にも恋心を持つ事はできない。
月の女神ディアナが処女神のように、プラリネも薬子もこの世界の愛には
なじむことができない。しかし薬子はプラリネの話を、果てしない物語を
薬子に語る飛鳥と、心が結ばれていく。
プラリネは誰も愛することなく生を終えてしまったが、薬子はこの飛鳥の
語った物語を胸に刻むことができた。
誰でも、この世界に自分と同じ魂を持つ人がいて、そんな人とめぐり合いたい、
と強く願う。月を想う、という気持ちは、そういう人の願いが根底にあってのものかも
しれない。同じ魂を持つ薬子と飛鳥は、この世では結ばれることはなかったが、
永遠のときをすごしたような一瞬を持つことができた。
そんな一瞬を月光の中で語るこの物語は美しかった。
しかし、こんな一瞬を過ごした薬子は、これから他の人を愛することが
できるのかな。この薬子が、この後どういう人生を送るのか。
現実の中で、また人を愛することができるのか。
この幻想の手触りを持ちながら、現実に向かう薬子の姿も見てみたい。
そんなことを思った。物語としての完成度は弱いかもしれない。
好きなお話を書く、ということにおっこちそうな危うさもある。
でも、この幻想と薬子の内面を書く喚起力は瑞々しくて、
次の作品も読んでみたい、と強く思わせるものだった。
月への愛がこもった一冊。

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&quot;見つけた&quot;というよりは&quot;呼び止められた&quot;っていう感じだった・・・月族に・・・。いつも立ち寄る本屋さん。入り口手前にハードカバーの作品がレイアウトされていて奥に、コミックや文庫などの本がレイアウトさ ...続きを見る
■猟妻険母■
2006/04/08 23:44

コメント(2件)

内 容 ニックネーム/日時
とても面白いです。
自分も月が好きなので、読んでいてとても共感できます。
新月
2006/12/03 17:44
>新月さん
この本、二巻もでているんですよ。読まなきゃ、と思いつつまだ読んでないんですが。今日も月が綺麗でした。月って、気配がありますね、ほんとに。
話しかけられるような気分になります・・。
ERI
2006/12/04 01:06

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