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zoom RSS ペダルの向こうへ 池永陽 光文社

<<   作成日時 : 2006/03/09 23:17   >>

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画像その土地の持つ力、というのがあるのかもしれない。
この物語を読んでいてそう思った。
人間の力だけでは回復できないことでも、
地面にたち、そこの空気を呼吸することで
そこに潜在する力をもらえる。
そんな日々を送りながら再生していく父と子の話が、胸に沁みた。

洋介という父と、隆という中一の親子。
一年前に車の事故で妻であり、母親である大切な人をなくしてしまった。
その上、隆は自分の右足をひざ下から切断することになる。
その両方のショックで隆は生きる気力を失い、誰とも話さず、
家にひきこもる日々。洋介はその事故の日、別の女性と
会っていた。その良心の呵責から、自分を責めさいなむ、地獄の日々。
そこから抜け出すために、洋介は妻の故郷である宮古島に
彼女の骨を埋葬する旅にでようと隆をさそう。
ひたすら自転車をこぐ、父と子、二人の旅がはじまる・・。

旅先で出会う人たち。
その人たちも、それぞれ自分の失った人の思い出や人生の苦しみを
抱えている。「旅」という日常から切り離されたふれあいは、
強く少年の心に足跡を残す・・。
再生の旅、というのは割りとよくある設定ではあるのだが、
この物語では、そのそれぞれの土地の特色、というか
その場が少年に働きかける力、というものが強く感じられて
そこに感心してしまった。

たとえば、神戸での隆の一日。
父親とはぐれて迷子になった隆は、そこで震災でやはり足を失った
達平と、その彼女の美春と出会う。そこで隆は達平の強さと
美春の優しさに触れることになるのだが・・。
この一日には、秘密が隠されている。
それはネタバレになるのでここでは書かないが、
震災という大きな悲劇を迎え、そこから立ち上がろうとする
「場」の力、が隆におおきなものを与えたように思えて仕方がない。
神戸を悲しみを目の当たりにした私には、このお話の辛さ、美しさが
強く響いてきた。
達平の父が彼を瓦礫から救い出すためにしようとしたこと。
それは、やはり私にもできないかもしれない・・。
こんな場面が実際にあっただろう、そのことを考えると、たまらない。


そして、母の故郷、宮古島。沖縄、というのは「許し」を得るために思う土地
として、懐の深いところなのかもしれない。そこでも人々の心に強く影を
落とす、戦争の記憶。
そんな土地に染み付いた思いと、人間と、自然と、人ならぬものが
混在する土地。そこで隆は、確かな再生の予感を見る。
隆の旅を通じて、池永さんはそれぞれの土地に生きる
記憶と予感、を書きたかったのかもしれない。
それを隆の成長とともに爽やかに感じることができる、そんな物語
だった。


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