おいしい本箱Diary

アクセスカウンタ

zoom RSS チョコレートコスモス 恩田陸 毎日新聞社

<<   作成日時 : 2006/04/12 22:54   >>

ブログ気持玉 0 / トラックバック 14 / コメント 7

画像恩田陸さんの新刊。
いや、面白かった。
最近ちょっと辛口批評が続いてたんですが。
「演劇」という世界の底知れなさがうまく書かれていました。

私は舞台、というと歌舞伎か文楽が多いんで
現代劇はあまり見にいかないんですが、この世界に
はまってしまう感じはそくそくと伝わってきます。
舞台に立つ人は、みんな「ここで死にたい」という。
人間国宝の吉田玉男さん(随分ご高齢で、もう一生を
舞台にささげた方ですが)も、「いつまでも研究して勉強して
いけるところが、この世界の醍醐味ですわ」という。
文楽は人形があって、その形をあやつることで世界を表現
していく。「型」があり、約束事が決まっている。
ところが、誰が遣うかで、もうがらりとその役の性格から
なにから変わってしまうんですよね・・。
その中での表現、解釈、というのがまた古典芸能の醍醐味ですが、
もはや融通無碍の境地におられるように見える玉男さんでさえ
こうおっしゃるのだから・・。
もう自分の肉体そのものを使い、たくさんの人たちと
入れ込んで作っていく舞台、というものがどれだけ
面白く、底ふかいものか、想像に難くありません。

飛鳥、という一人の少女。
演劇経験などまったくない、ずぶの素人。
彼女を神谷、という一人の劇作家が目撃するところから
物語は始まる。混雑する広場で、そこにいる様々な人に
瞬間的になりきってしまう少女。
まるで彼女自身がそこからいなくなってしまうように・・。
恩田さんは、いつも導入がドキドキするほど刺激的。
実はこの物語になんの知識もないまま読んだので、
始めは超能力を持つ少女かなにかのホラーかと思いました・・。

その飛鳥が大学の演劇サークルに入り、ぽっと舞台に出、
そこからある大きな舞台のオーディションに出て行く物語。
そして、東響子という、演劇界のサラブレッドで、スターの地位を
確立している女優が、その同じオーディションに関わる経緯。
それが同時進行します。
この二人が・・・。
言っちゃっていいのかなあ・・。
「ガラスの仮面」の、北島マヤと、姫川亜弓さんを彷彿とさせる(爆)
月影先生は確か公園で百の仮面を持つ少女を見出すんでしたっけ。
そう考えると、この物語の出だしも、そうだなあ。
あれほど熱中して読んだマンガもあるまい・・。
「ガラスの仮面」ごっこ、なんていうのもやったなあ・・。
恩田さんは同世代だからなあ。絶対読んでる!

理屈ではなく、本能でその人物になりきり、演じる飛鳥。
幼い頃からの鍛錬と経験を才能に結びつける響子。
全く違うタイプの二人が、オーディションの舞台で
「欲望という名の電車」を演じていくところが
この物語の白眉です。
そこで二人は、同じ幻影を見る。
そこにあって、実はないもの。
舞台という瞬間の中でしかみることの出来ない、何か。
違うタイプの天才が出会う瞬間でこの物語は終わってます。
恩田さんの物語は、「え?もうちょっと書いてよ」というところで
終わるのが一つの特徴ですが(爆)いつもなら不満に思ったり
するこの感じが、今回はうまく効いてます。
これから果てしなく続く業にも似た二人の世界を想像するのが、楽しい。
・・と、同時にうやらましくもあるなあ。
演劇、舞台に対する憧れをかきたてられる物語、といえるかもしれません。


http://www.oishiihonbako.jp/detail.php?book_no=001045








テーマ

関連テーマ 一覧


月別リンク

ブログ気持玉

クリックして気持ちを伝えよう!
ログインしてクリックすれば、自分のブログへのリンクが付きます。
→ログインへ

トラックバック(14件)

タイトル (本文) ブログ名/日時
「チョコレートコスモス」恩田陸
「チョコレートコスモス」恩田陸(2006)☆☆☆☆★ ※[913]、国内、現代、小説、演劇、ガラスの仮面、読み物 ...続きを見る
図書館で本を借りよう!〜小説・物語〜
2006/05/04 08:59
再び恩田陸『チョコレートコスモス』&『六番目の小夜子』
昨日も、恩田陸『チョコレートコスモス』について書いたが(恩田陸『チョコレートコスモス』→サキ「開いた窓」)、どちらかというと、サキという作家の短編小説「開いた窓」にまつわる思い出が話の中心になり、『チョコレートコスモス』自体については、きちんと書けなかった気がするので、もう少しだけ、書きたい。 ...続きを見る
小さなことを喜ぼう!          ...
2006/05/08 12:45
『チョコレートコスモス』恩田陸
「舞台の上の、暗がりの向こうには何かが隠されている」 「まだそっち側に行ってはいけない。そっち側に行ったら、二度と引き返せない」 無名の学生劇団に少女が入団した。演技経験のない彼女だったが、天才的な演技で周囲を圧倒してゆく。一方、幼い時から舞台に立ち、... ...続きを見る
蓮に鷺
2006/05/28 00:00
『チョコレートコスモス』 恩田陸 (毎日新聞社)
チョコレートコスモス恩田 陸 / 毎日新聞社(2006/03/15)Amazonランキング:位Amazonおすすめ度:Amazonで詳細を見るBooklogでレビューを見る by Booklog <文章で臨場感を表現できる限界に挑戦した作品。まさに恩田陸の独壇場。> ...続きを見る
活字中毒日記!
2006/06/03 02:18
チョコレートコスモス*恩田陸
☆☆☆☆・ チョコレートコスモス恩田 陸 (2006/03/15)毎日新聞社 この商品の詳細を見る 「まだそっち側に行ってはいけない。そっち側に行ったら、二度と引き返せない。」 幼い時から舞& ...続きを見る
+++ こんな一冊 +++
2006/06/04 20:51
ガラスの仮面、完全ノベライズ!?「チョコレートコスモス」恩田陸
チョコレートコスモスposted with amazlet on 06.05.2... ...続きを見る
ayanolog
2006/06/14 17:08
チョコレートコスモス 恩田陸
チョコレートコスモス ■やぎっちょ評価コメント 陸ちゃん本のイメージって、読む本の順番に影響されるのでしょうか??なにしろ、最初に読んだのが「ライオンハート」だったのでSFファンタジー&ラブロマンスのイメージを払拭しきれず。 神谷が最初に飛鳥を見かけるとこ.... ...続きを見る
"やぎっちょ"のベストブックde幸せ読書...
2006/06/26 02:46
恩田陸【チョコレートコスモス】
森山良子のアルバム【あなたが好きで】に収録されている『30年を2時間半で……』という曲をご存じだろうか? ...続きを見る
ぱんどら日記
2006/07/11 15:48
妄想キャスティング――恩田陸【チョコレートコスモス】
この本を読んでいて、ヒロイン「佐々木飛鳥」を演じる宮崎あおいのイメージが頭に浮かんでずっと消えなかった。 ...続きを見る
ぱんどら日記
2006/07/11 15:52
チョコレートコスモス<恩田陸>−(本:2006年114冊目)−
毎日新聞社 (2006/3/15) ASIN: 462010700X ...続きを見る
デコ親父はいつも減量中
2006/11/23 19:30
チョコレートコスモス
チョコレートコスモス ...続きを見る
<花>の本と映画の感想
2006/12/02 19:42
チョコレートコスモス  恩田 陸
チョコレートコスモス 恩田 陸  07−12 ★★★★☆  【チョコレートコスモス】 恩田 陸 著  毎日新聞社 ...続きを見る
モンガの独り言 読書日記通信
2007/01/14 01:14
「チョコレートコスモス」恩田陸
タイトル:チョコレートコスモス 著者  :恩田陸 出版社 :毎日新聞社 読書期間:2007/03/27 - 2007/03/29 お勧め度:★★★★★ ...続きを見る
AOCHAN-Blog
2007/05/07 17:20
六番目の小夜子
★★★★ ...続きを見る
自由の森学園図書館の本棚
2008/12/03 21:52

コメント(7件)

内 容 ニックネーム/日時
おもしろかったですねぇ。本当に。語りだせば幾らでも語れるけど、語るより読め、楽しめ、が正解の一冊かもしれません。
すの
URL
2006/05/04 09:19
>すのさん
今日はTBできたんですが、やはりコメントが入りませんでした・・。
面白かったですね、この作品。やはり響子は松たか子ですね・・。私もなんとなく彼女の風貌を思いながら読みました。
それも恩田さんは計算ずみなのかしら?確かにこれは全くの序章なんですが、序章で終わってることが想像力をあおる、と思ったり。恩田さんは好きなんですが最近「ん?」と思うとこが多かったんですよね。これは久々の快作です。
ERI
2006/05/04 10:59
ERIさん、こんばんは♪
ご無沙汰しております。
TB&コメントありがとうございました。

恩田作品は久々なんですが、本作のような素晴らしい作品に邂逅できるので、みなさん追いかけて読まれてるのかなという気もしました。

確かに、恩田独自の世界に引き込まれてしまいます。
↑のコメントにもありましたが、すべて恩田さんの計算ずみだと思います。
どの読者よりも『ガラスの仮面』のファンなんでしょう。
と言う私自身が『ガラスの仮面』に関しては無知なんですが(爆)

でも楽しめましたよ(笑)

あと、以前ご投票いただきました新刊グランプリにこの作品をエントリーさせていただいております。
投票所に便宜を図らせていただきまして、ERIさんの名前を入れさせていただいております。
お忙しいところ恐縮ですが、またお時間ある時に1票投じていただけたら嬉しく思います。もちろん、他の作家の作品も大歓迎です。
よろしくお願いします。
トラキチ
URL
2006/06/03 02:28
>トラキチさん、丁寧なコメントありがとうございます。
トラキチさんの投票、しようしようと思いつつ、いつも逃がしてしまってて、ごめんなさい。お気遣い、痛み入ります。ぜひさせていただきますね!
ERI
2006/06/04 00:39
面白かったですねぇ。
わたしは『ガラスの仮面』を念頭において書かれたことは知っていたのだけれど
『ガラスの仮面』自体をあまり深く知らなかったのですけれど、
知っていても知らなくてもこの作品はこの作品として愉しめますね。
そして、恩田さんの次につなげる力の素晴らしさにもいつもながらやられてしまいます。
ふらっと
2006/06/04 20:56
>ふらっとさん
そうですね、知っているとどうしてもそこに感覚が集中してしまうけど、
それがなくてもこの物語の緊迫感はそこなわれないと思います。
舞台のシーンがとても素敵。あんな風にかける恩田さんは凄いです。
ERI
2006/06/06 00:01
こんばんは、ERIさん。
この本は、面白かったです。
「欲望という名の電車」は、映画でしか見たことがないので
舞台を見てみたいものです。
この本には、惹き込まれて読んでしまいました。
モンガ
URL
2007/01/14 20:44

コメントする help

ニックネーム
URL(任意)
本 文

記事一覧

チョコレートコスモス 恩田陸 毎日新聞社 おいしい本箱Diary/BIGLOBEウェブリブログ
文字サイズ:       閉じる