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zoom RSS ミーナの行進 小川洋子 中央公論新社

<<   作成日時 : 2006/06/15 23:22   >>

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画像この物語の中に流れる時間がえらく気持ちよくて、
一息に読み終わるのがもったいなく毎日ちょっとずつ
読んでました。時々ありますね、こういういつまでもひたって
いたい本、というのが・・。懐かしくて、暖かくて、快い。
さよならしたくなかったなあ。

十二歳の朋子は、母親の都合で岡山から一人で神戸の芦屋にすむ
叔母の家に一年間住み込むことになる。「フレッシー」という清涼飲料水
を手広く販売しているその家は、大きなお屋敷だった。
まるで別世界のようなそこには、ハンサムな叔父と叔母、叔父の母親である
ドイツ人のローザおばあさん、家政婦の米山さん、そして体の弱い美少女
のミーナ、コビトカバのポチ子が住んでいた。
広大な庭には大きな池とかってあった動物園の名残があり、ポチ子は
そこから、毎日ミーナを背中にのせてとことこ学校まで送っていくのである。
本が好きで、たくさんのマッチの箱にちなんだ物語を自分で書いているミーナ。
一番の親友となったミーナとの日々が始まる。

光線浴室、たくさんの部屋、広い台所・・。まず屋敷の設計から物語を作る
という小川さんらしく、このお屋敷の魅力的なこと。まるでおとぎの箱のような
魔法のかかった場所なのだ。そこで綴られる一年間は、朋子にとっては特別な一年間。なにしろそこにはミーナという少女がいたから・・。
喘息という持病を持ち、本を愛するかよわくて美しいミーナ。美しい顔と
痛々しいからだが不釣合いなミーナ。
でも、彼女は自分の中に深くて豊かな世界を持っている。
きれいなマッチ箱を集めて、その絵柄から思い描くお話をきれいに書き綴るミーナ。
このお話が、またいいんですよ。幻想的で、美しくて・・・。劇中劇のような効果も
あります。この物語、さっきも書きましたが美しい箱のイメージがあります。
大体神戸、という土地は海と山に囲まれたきれいな箱みたいな土地なんですよね。
そこの、また芦屋という神戸でも独特の雰囲気を持つ場所にたつ夢のような屋敷。
赤い光線の満ちる光線浴室。そしてミーナがたくさんの箱に作っているお話・・。
時間と空間のたくさんの箱が入れ子になっていて、それを一つずつあける楽しみ。
朋子のかけがえのない日々は、毎日魔法のびっくり箱をあけるようなもの。
その中には初恋があり、初めてのブラジャーがあり、どうやら浮気をしている
叔父さんもあり、かっこいいい、いとこの龍一さんがいて・・。
大人の世界にちょっと入りかけた少女が出会う初めての世界。
これは小川さんが自分が少女なら、人生の入り口でであってみたい世界なのかしら。
その中でよりそう二人の少女が愛しくて仕方なかった。
まるで小川さんの好きなアンネとその親友のよう・・。そう思ったのは、穿ちすぎかな?

この美しい箱の中には、懐かしさが満ち溢れていて、たまらない気持ちになって
しまった。ミュンヘンオリンピック!バレーボールの猫田・・。あの当時、彼らは
今のサッカー日本代表よりも、もっと熱い少女達の声援をうけていたんですよ。
よ〜く覚えてます。私は王古選手のファンでした(爆)そして、ミーナの読む物語たち。
「眠れる美女」「はつ恋」「変身」「アクロイド殺人事件」・・。どれもこれもやっぱり
私が少女の時にはまっていた本じゃありませんか。そして、フレッシー。
これは某所である人が言っておられて、「あ!」と思い出したのですが、
プラッシー?!プラッシーには「アタリ」がついていて、またそれがよく当たったんですよ。
近くの駄菓子やさんで、そのアタリほしさに口が紫色になるほどプラッシー飲んだのを
覚えてます。小川さ〜ん、同年代!!

この世界を守る妖精のようなコビトカバのポチ子。
彼が静かに息をひきとったとき、ミーナと朋子はこのおとぎ話の箱から出て行く
ことになります。そして自分の人生をたくましく生きていく。
少しだけ書かれているその人生を想像すると、私もポチ子から静かな力を
もらったような気持ちになれる。
これは私の妄想かもしれないけれど・・・。
ミーナのような人生を、小川さんはアンネにおくらせてあげたかったのじゃないかしらん。
留学して、翻訳のエージェントをしながら楽しく仕事をしているミーナ。
聡明な、夢見るミーナと、アンネが私のなかでかさなります。

この少女の息遣いとやさしい思い出に満ちた世界をどうぞご堪能あれ・・。

http://www.oishiihonbako.jp/detail.php?book_no=001077

小川洋子さんの本

 http://www.oishiihonbako.jp/detail.php?book_no=000099
 http://www.oishiihonbako.jp/detail.php?book_no=000250
 http://www.oishiihonbako.jp/detail.php?book_no=000556
 http://www.oishiihonbako.jp/detail.php?book_no=001041







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活字中毒日記!
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2006/08/21 00:33
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装幀・装画は寺田順三。 岡山在住で主人公で語り手の朋子は、1966年に父親を亡くした後、母親が東京の専門学校で1年間洋裁の勉強することにしたため、1972年、中学1年生の4月から翌年3月まで、芦屋に住む伯母夫婦のもと& ...続きを見る
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2007/06/26 16:57

コメント(15件)

内 容 ニックネーム/日時
こんにちは♪
せっかくなのにまたもやTB出来なくてごめんなさい。
『博士』以来久々に私の好きな雰囲気の作品でした。
とにかく登場人物のどの人も大好き!
エピソードのどれも大好き!
おまけに挿絵まで良かったですよね?
小川さんのアンネフリークを知っているだけに、まさにアンネを思い出すようなところもありました。
あんなにステキなマッチコレクション(ストーリー付き)見てみたいわ〜。
ミチ
2006/06/16 09:35
>ミチさん
TB気にしないでくださいね。お手間かけてしまってすいません。
ちいさなエピソードの一つ一つが愛しくて、読んでいる間中幸せな気持ちになりました。マッチね、私も昔集めてました。今はマッチをおいているところがもうなくなってしまって・・。小川さんの出してくる小物はいつも素敵です・・。
ERI
2006/06/16 22:13
ERIさん、こんばんは♪
TBさせていただきました。
本当に素晴らしいですね、この作品。
読み終えるのがもったいなくて、最後に猫田さんに書いた手紙を読み返して感慨に耽りました(笑)

そういえば、マッチて本当に使わなくなりましたよね。
心の灯火だけはずっとすらなくてもつきっぱなしでいたいですね。
トラキチ
2006/06/28 19:58
>トラキチさん
いつもながら、本当に丁寧なコメントありがとうございます。
猫田さんへの手紙は、本当に読んでいて心うたれます。
これまで読んだ手紙のなかでも、一番美しいものかもしれません。
スポーツ大好き、の小川さんらしい賛辞だなと思いました!

「心の灯火だけはずっとすらなくてもつきっぱなしでいたいですね。」
この言葉、素敵ですね。本当にそうありたいです。
ERI
2006/06/29 21:05
こんにちは。コメント、トラバありがとうございます。朋子と一緒にミーナの家に同居しているような、ていねいな物語とオールカラーのイラストで、すみずみまで心地よい空間が広がり、余韻でこころが温かくなる素敵な物語でした。今年のベストになるかも、というくらい好きなので、最初のトラバでこの本を選んでいただけたこと、とてもうれしいです。
ミュンヘンオリンピック、ほのか〜に覚えてます。ミーナの読んだ本を読んだのは、もっとずっと後になってからのことでした。アンネ、スポーツ大好き・・小川さんについて、新しいことも教えていただきました。フレッシーって、プラッシーのことだったんですか?!。むかしなぜかお米屋さんのみの限定販売で、飲んだことがあるような、ないような・・。ラジウム入りだったのか、未確認ですけど(笑)。
藍色
2006/09/27 15:04
>藍色さん
小川さんはとても好きな作家です。まず文体が好き。これはもう抜き差しならぬ好みにぴったりくる、という事なんですよ。
フレッシーがプラッシーかどうかは、確信はないですが・・。
私の中ではそういうことになっております(爆)
アンネについての小川さんの旅を綴った「アンネ・フランクの記憶」は、ぜひ読んでいただきたい本です。おすすめいたしますよ!!
エントリーもしております。

http://oisiihonbako.at.webry.info/200604/article_3.html
ERI
2006/09/27 23:19
今年の誕生プレゼントとしてERIさんから贈ってもらったこの本、やっと読みました! 改めてありがとうね〜。

私にとって小川洋子の世界といえば、先ず、硬質の閉塞感の中で半分酸欠状態に陥りながら恍惚として見るリアルな幻…という印象だったのですが、『博士の愛した数式』やこの作品は、言わば新境地ですね。透明でありながら柔らかな温もりのある、とても心地よい世界でした。
ちょっと、カポーティのイノセント・ストーリーズあたりを思い出したりもして。カポーティの世界よりは前向きで、生き生きした輝きに満ちているけれど。

ところで、帰省の度に大量の要修理品が実家で私を待ちうけているのですが、これってどうなんでしょ?
S
2006/10/11 23:08
>Sちゃん
読み終わったんやね。うん。小川さんの閉塞の世界の幻想に漂うのも、とても好きだし、この新境地もとても心地よいよね。
言葉のつむぎ方は同質なんだけどね。空から木漏れ日が射すようなキラキラ感があるね・・。しかし、こっちから入ったうちの次男は、「薬指の標本」は読めないらしい。
カポーティのイノセント・ストーリー・・・「クリスマスの思い出」を思わせるね、確かに。まだ「カポーティ」見に行ってないねん(汗)
来週あたり、行きたいと思ってるんやけど・・。もう行った?
(なんでこんなとこで聞いてるんだか・・爆)
ERI
2006/10/12 21:32
読み終わってから、小川さんの新境地についてとろとろ考えてみた。
電話で話すつもりだったけど、忘れそうなんでメモとして…

一見異なる二つの世界。
確かに「言葉のつむぎ方は同質」なのに何がこんなに違うのかなぁと思って、改めて読み直してみたんですが、私が思うには "完璧" の描き方が一番違うんじゃないかと。
小川さんはとても "完璧" が好きな方だなぁ、と作品を読むたびに思っていたのですが、そして「博士」や「ミーナ」もやっぱりそうではあるんだけど、例えば「沈黙博物館」なんかとは "完璧" の質が違うように思います。

もともと小川さんは、色や形、大きさはもちろんのこと質感やそこから立ち上る雰囲気まで含めて選び抜いたものを、これまた息を詰めるようにして一つずつ、完璧なバランスで組み上げるようにして作品の世界を作ってこられたと思うんです。だから、どこか一つでも崩れるとすべてが崩壊してしまいそうな危うさ、ものすごい緊張感のある張り詰めた美しさがある。言わば、触れられること変えられることを拒否する "完璧"…小川さんの美学をとことんまで突き詰めた、怖いほど美しい結晶の世界。

S(その1)
2006/10/16 09:27
(メモと言いながら、続きがあるって…(汗) )

でも、「ミーナ」は違いますね。
登場人物はそれぞれにすばらしいんだけど、この作品の "完璧" さは、そこにあるわけではない。さらに、一見何一つ欠けたものなどないように見えるお屋敷内も実はいろんなところに穴や歪みやひび割れをはらんでいて、バランスはかなり危っかしく "完璧" な美とは程遠い。
では、この作品の "完璧" さはどこにあるのか?
それは、まさにそのチグハグなものがチグハグな儘に、それでもその時みんな揃ってそこにいる、ということの美しさにあるのではないか、と。これは変化を前提とした "完璧"…変わらざるを得ない現実の中で、偶然のように出会ったいろんな人の時間が糸となって織り成した模様の必然性。ポチ子も含めた全員が揃って写っている家族写真は、その象徴のようなものでしょう。

うかつには触れられないような研ぎ澄まされた "完璧" と、光の糸で織ったような柔らかな "完璧"。
どちらにしろ小川さんにしか書けない世界を楽しませてもらえるという点では変わりないので、私はどちらも好きですが。

…って、長々とごめん。
S(その2)
2006/10/16 12:10
>Sちゃん
とろ〜ん♪
私、やっぱりSちゃんの文章好きやわ・・。
私の変わりにブログ書いてほしいやん(爆)日替わりブログにするう?

そうやんなあ・・。「研ぎ澄まされた "完璧" と、光の糸で織ったような柔らかな "完璧"」言いたいこと、きっちり言葉にしてくれたわ。
この偶然の必然性・・っていうところが美しいんよね。
過ぎ去る一瞬。でも、そこには至福のきらめきがあるんよね。
なんというか・・。人って、偶然のようでどうしても引き合うものが
あると思うねん。それは初めから決まっていたことなのか、それとも
似た星が引き寄せられるのか・・。(続く)
ERI
2006/10/17 08:14

もうこの日々は、ミーナにも朋子にも帰ってこない日々やけど、
あの一年間は、ずっと出会い続ける博士とルートと「私」のような
星の軌道にも似た出会いなんよね・・。変わっていくからこそ、美しい。
私も小川さんのどちらの世界も大好きやわ。
あれは、小川さんにしか書けない、彼女だけの宇宙やんか。
やはり私は空中から花を取り出すような作家さんが一番好きなんよね。
小川さんの花は、どれも美しくて薫り高い。
「薬指の標本」、こっちで公開きまってん。
見に行ったら感想かくな!!
ERI
2006/10/17 08:15
再びTBさせていただきました
ERIさんの『沈黙博物館』の記事を読ませてもらってからこの半年、小川作品を読んできましたが、ミーナの行進で漸くアンネの夢を著作の中で実現させているのを読んで著者の区切りの本だと思いました。
雪になあれ
2006/10/21 19:43
>雪になあれさん
おひさしぶりです。ずっと小川さんの作品を半年かけて追っておられたのですね。素敵です。そういう本の読み方をしばらく忘れておりました。
深く追えば追うほど、いろんなものが見えてきますね。
この物語にこめられた小川さんの祈りを、またしみじみと思いました。
ありがとうございます。
「区切り」か・・。そういう視点で考えなかったので、
ゆっくりとその考えを転がしてみます。また、コメント書きますね。
ERI
2006/10/21 23:53
こんにちは。
本当に素晴らしいですね、この作品。
みなさんのブログの感想を読んでからの読書だったのですが、
読み終わるのが勿体無い、という意見がよくわかりました。
あおちゃん
2006/12/11 12:46

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