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zoom RSS ドラママチ 角田光代 文藝春秋

<<   作成日時 : 2006/07/18 23:28   >>

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画像コンスタントに作品を発表されている角田さん。
安定感がありますね。どれを読んでも、あまり外れがない。
この作品集は辛口な、角田さんらしい物語達でした。

「コドモマチ」「ヤルキマチ」「ワタシマチ」「ツウカマチ」
「ゴールマチ」「ドラママチ」「ワカレマチ」「ショウカマチ」
という8篇が収められています。
人生の中で立ち止まってしまった女たち。
こんなはずじゃなかったなあ、と思いながら佇む風景が
なかなか心に痛い短編集です。
「コドモマチ」では、絶対浮気なんかに縁がないと思っていた
夫の愛人宅をストーカーする女。
「ヤルキマチ」では、反対に長年愛人をしていた女が、その関係に疲れて
相手の家庭を見にいく・・。「ワタシマチ」では、モデルの仕事もなくなりかけた
美貌の女が、昔に家族ですんでいた場所をこれまた、たずねる。
今、ここにいる自分を、みんなもてあましている。
その彼女達の目に映る風景が、やけにリアルで心に刺さります。

この短編には、全て「喫茶店」が出てくるんですよね。
おしゃれなカフェ、じゃなくて「喫茶店」なんです。
擦り切れたような椅子と、薄暗い店内。冷房も暖房も効きすぎて
かかっている音楽もJポップとかじゃない。
間違っても「カフェマキアート」とかは、ない。「純喫茶」とか、書いてあったり。
今はこんな喫茶店が少なくなりました。
私は昔、喫茶店というのが好きで、ほんとによく入り浸っておりました。
忘れもしない、高校の頃に「マリモ」という不思議な喫茶店がありまして・・。
入り口にマリモの水槽がおいてある。しかも、もう水槽自体が緑色。
入るのは勇気がいりましたが・・。喫茶店フリークとして入らないわけには
いかない・・。あそこで飲んだ珈琲の摩訶不思議な味は、忘れがたい。
喫茶店、てなんだか時が止まる場所でした。
あの頃、私もなんだか自分の居場所がなくて、どっちにいったらいいのか
不安で、先はうすぼんやりとした霧に包まれていた。
歩き出せばいいのだけれど、なんだかその一歩が出ず、自分の中を
ぐるぐる回っていた記憶があります。
そんな自分が一番居心地よかったのが、喫茶店。
ゴハンを食べるわけでもなく、さして何をするわけでもなく、文庫本片手に
何時間も座ってたりして、時間をやり過ごしてた。
今思うと、ちょっと贅沢だったかも。今は何時間も喫茶店ですごす、その
時間そのものがなくなってしまいました。

この主人公たちも、一見どうしようもない状況にいるように思うんですが、
私には、その袋小路で、じっと息をひそめながら密かにパワーを
溜め込んでいるように感じられます。どの短編に出てくる男も
けっこう情けないんですが、自分のどうしようもなさと、男達の情けなさ
を自分の中で攪拌して、それが沈殿するのを、じっと待ってるような・・。
街角で、夕方の商店街で、街ゆく人々と薄い膜でへだてられているような
疎外感を感じながら、なんとか「生」の感触を取り戻そうとしてる。
その足掻きが、はたから見ると滑稽でおかしくても、人は自分の
やり方でしか、そこを抜け出せはしないんだなあ、と。
かっこ悪い女達が、そのかっこ悪さで何かを掴もうとしている。
それが、なんだか既視感、デジャ・ヴを誘う物語たちでした。

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