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いつもコメントを頂くknobさんに、とても素敵なカキコミを頂きました。 そのコメント欄にお返事しようと思ったのですが、字数が足りないし、 読みにくくなってしまうので、別に記事を立ち上げさせていただきます。 いや、こんな素晴らしいコメントを頂くのは、こういうブログをしていて 一番うれしいことです。 <私の裏庭のレヴュー> 「おいしい本箱」のファンタジー特集に入れようと再読したのですが、再び深く圧倒 されました。すごい・・。文句なしに日本の生んだファンタジーの名作です。 「照美」という少女が、近所の荒れ果てた西洋屋敷の「裏庭」から不思議な世界に 入り込み、長い旅をするお話なのですが、この「裏庭」が、この裏庭にかかわった 人たちの心が幾重にもかさなるとても複雑な世界なのです。 一つは、バーンズという家に代々連なる「裏庭」を行き来する能力を持つ人たちの 作り上げた物語。戦争による悲劇でその裏庭を危機に陥れてしまったレベッカの物語。 そのレベッカの姉であるレイチェルと、照美をやさしくうけ入れた丈次の物語。 そして照美の祖母と照美の母親が作ってしまった傷つけあった歴史。照美の双子の弟 で、早くに亡くなってしまった純の物語。これらが見え隠れしながらも見事にファンタジー としてのドキドキや不思議さを保っています。それは豊かなイメージと、センスによる ものなのでしょう。ファンタジーの形をとり、シンボライズされた登場人物で物語を語ることで、 私たちは確固たるイメージで、梨木さんの伝えたかったことを胸に残すことができる。 これは、ファンタジーの王道です。 照美は、いつも「愛されない」自分に苛立ちを覚えています。 この裏庭の旅は、彼女自身の心の中の旅。ときに怒りを爆発させ、過ちを犯し、 人の心を知ることで傷つき・・。そして、すべての旅がおわった時、照美が学んだ ことは、当たり前であるようで、難しい真実。その照美の確信が、すがすがしい。 この物語は、きっと読む人、読む時によって、ちがうものを伝えてくるはず。 私も前回に読んだ時には気づかなかったいろんなことを思いました。 自分の物語が見つけられる、というのもこれまた読書の喜びです。 梨木香歩さんは、とても好きな作家。きっとものすごい教養をお持ちなのだと 思うのですが、それがさりげなく伝わってくるのもこれまた奥ゆかしい。 この作品は、めっちゃやたら刊行される外国のファンタジーなど及びもつかない 深い作品だと思います。翻訳とかはされてないのかなあ。世界にも通用すると思う んだけど。あ〜、「家守綺譚」が読みたくなってきちゃたよ。 <knobさんのコメント> 1年近く前の記事にいまさらコメント付けさせていただくのも何ですが、漸く読み終えたので… 古い大きな洋館、大きな鏡の向こうの秘密の庭、バラバラになった一つ目の竜の化石、崩壊しつつある世界… いかにものファンタジックな道具立てに一瞬腰が引けたものの、読んでみたらとても骨太で、どちらかというと荒々しく厳しい物語でしたね。「ファンタジー」という言葉の一般的なイメージを、いい意味で裏切っている…そこがまさに本格ファンタジーたる所以でしょうか。非常に読みごたえがありました。 ところで…この作品は「エンジェル エンジェル エンジェル」と同じ年に出版されているんですよね。本としての体裁は全くことなりますが、テーマ的にはかなりかぶる部分があるので、それは納得。つまりは自分自身の傷とまともに向き合うということ、傷にとらわれることも傷を偽りの癒しでごまかすこともせず、痛みとともに丸ごと受け容れるということ、更には他人をもその傷ごと受け容れていくということについての物語ではないかと。おそらく梨木さんご自身がこの時期、それについて徹底的に考え抜かれたのでしょう。その末に到達した域で俳句のように生まれたのが「エンジェル」、凄まじくも尊い苦闘の過程を描いたのが「裏庭」なのかなぁ、なんて思いました。作品としては、書き過ぎずに敢えて残した余白に梨木さんらしい気品と余裕を感じさせてくれる「エンジェル」の方が好きですが、「裏庭」は、その梨木さんを梨木さんたらしめている奥の部分を垣間見せてくれる作品であるように思います。まさに梨木さんの "裏庭" の物語といえるのではないでしょうか。 <私のお返事> まったく、knobさんの深い読みに、脱帽です。私のこんなブログの一コメントに書くのは惜しいほどです。私のように、毎日ただ読み散らして蹴散らかしていくのではなく、一つ一つを丁寧にご自分のものとされていらっしゃいます。貴重なコメント、ありがとうございます。 私もこの物語には、深い奈落を感じます。ファンタジー、と呼ぶには、あまりにも激しい苦闘の痕。それを、この道具立てで書ききったところに、並々ではない梨木さんの創作に対する厳しさを感じます。 梨木さんは、いつもSちゃんとも話すのですが、どうも実像をつかみにくい人です。エッセイを読んでも、そこにあるのは確かに梨木さんであるのに、「暮らし」という日常が匂わない。敬愛するトーベ・ヤンソンと通じるものがあります。大きな、深い山。厳しくて、懐が深い・・。 命の美しさも、喰ったり喰われたりする不条理も、その中にある森です。 その梨木さんが、この「裏庭」と「エンジェル・エンジェル・エンジェル」(この作品のレヴューはこちら http://oisiihonbako.at.webry.info/200601/article_2.html)を同じ年に出版されている、ということを私は見落としておりました。こうして、その二つを並べると、確かにそのテーマが浮かび上がってきますね。 「自分自身の傷とまともに向き合うということ、傷にとらわれることも傷を偽りの癒しでごまかすこともせず、痛みとともに丸ごと受け容れるということ、更には他人をもその傷ごと受け容れていくということについての物語ではないか」 これは、本当に難しいことであると、思います。口で言うのはたやすいけれども、それは心を一度突き崩してしまうほどの苦痛を伴うことであると思います。 私も含めて「傷ついた」ということに囚われてしまう人間が、どれほど多いか。 その傷をただなめるのでなく、自分を哀れむのではなく、そこからまた新しい旅を始めようとする、その勇気と苦闘。照美の旅は、その過程を、自分の心をたどる旅であったと、私も思います。そこから始まった旅は、「沼地のある森を抜けて」で、深い奈落の底のような宇宙の中の人間の輝きに、達しようとしてる。人は、光と影、奈落と頂を持ち、輝く湖面の底に、深い果てしない水底を隠した存在であると、私は思っています。梨木さんは、その全てを内包しながら、毅然と前を向いておられる。 そこが、素敵です。この「裏庭」が、なぜファンタジーで書かれているのか。 その心象風景をファンタジーとしての風物に託すことで、それがよりリアルさと 言葉以上のふくらみを内包するから、だと思います。 私小説という形で書かれる、または独白の形で書かれることが多いその心の旅を、 ファンタジーという形で創造した、そのことによって、またそのファンタジーが 幾重にも深く人間のありようを映す名作となる、ということ。 私はけっこうファンタジーを読んでいるけれども、ここまで深い内容を持つファンタジー は、西洋世界にもないのではないか、と思っています。 はじめにファンタジーありき、というファンタジーではない故に、ファンタジーがより深い 輝きを放つ。この作品が持つ、新しさと文学としての深さを、ぜひ世界の人に読んでいただきたい、と思ってます。 最近ポール・オースターの「ムーン・パレス」を再読しまして、自分の心をめぐる旅というのは なんて激しく厳しいのだろうと、40数年生きてきて、今更のように思いました。 私はナマケモノで自分に甘いものですから、ついそこから目をそらそうとします。 私が毎日こんなブログを書いているのも、ちょとでもそんな自分を変えたい、と 思っているからかもしれません。梨木さんには遠く及びませんが・・。 そんな私に、こんな素敵なコメント、ありがとうございます。 深い感謝と、尊敬をknobさんに。 おいしい本箱 http://www.oishiihonbako.jp/detail.php?book_no=000286 梨木香歩さんの本 http://www.oishiihonbako.jp/detail.php?book_no=000285 http://www.oishiihonbako.jp/detail.php?book_no=000416 http://www.oishiihonbako.jp/detail.php?book_no=000417 http://www.oishiihonbako.jp/detail.php?book_no=000518 http://www.oishiihonbako.jp/detail.php?book_no=000577 http://www.oishiihonbako.jp/detail.php?book_no=000277 私のレヴュー http://oisiihonbako.at.webry.info/200601/article_2.html http://oisiihonbako.at.webry.info/200511/article_12.html http://oisiihonbako.at.webry.info/200511/article_9.html http://oisiihonbako.at.webry.info/200509/article_12.html http://oisiihonbako.at.webry.info/200507/article_25.html |
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梨木香歩『裏庭』
児童向けのファンタジー作品ではあるが、人間のそして社会の根源的なテーマを重層的に表現しながらこの作品は重厚な文学作品として成立している。生と死、男性と女性、西洋と東洋、それぞれの対峙と調和を描くことでこの作品は単なるファンタジーの概念をはるかに超えた哲学.... ...続きを見る |
日々のことわり 2007/05/23 21:56 |
| 内 容 | ニックネーム/日時 |
|---|---|
せっかく読んだんだし…と、一種の貧乏症からしてしまった書き込みに、このような過分の扱いを頂いてよいものかと戸惑いつつも感涙です。 |
knob 2006/07/09 23:17 |
>knobさん |
ERI 2006/07/10 22:48 |
「裏庭」はねぇ…初めて読んだときは、正直ピンとこなかったんですよ。ファンタジーってあまり読んだことなかったし、"照美→テルミィ" ってあたりもにわかには受け容れがたいものがあって。 |
S 2006/07/11 23:30 |
>Sちゃん |
ERI 2006/07/12 17:55 |
>バタバタ読んで書き散らしてる私のレヴュー |
S 2006/07/12 21:46 |
>Sちゃん |
ERI 2006/07/14 00:01 |
こんにちは。みなさんほど深く考えていないので検討ハズレかもしれませんが、どことなく「不思議の国のアリス」「ネバーエンディングストーリー」「ブレイブストーリー」を思い浮かべました。アリスは昔すぎて思い出せませんが、現実からファンタジーワールドに飛ぶ子供は、必ず親に構ってもらえないというセオリーがありますよね。そのあたりはセオリー通りだったのでテーマではないんじゃなかろうか?と思いながら読んでいました。(傷のことはそんなに深く考えてませんでした) |
やぎっちょ 2007/08/04 10:41 |
>やぎっちょさん |
ERI 2007/08/08 02:06 |
ERIさん、こんばんは(^^)。 |
水無月・R 2007/09/25 23:38 |
>水無月・Rさん |
ERI 2007/09/26 02:23 |
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