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zoom RSS ひとがた流し 北村薫 朝日新聞社

<<   作成日時 : 2006/08/10 22:03   >>

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画像昨日は息子と母親と文楽を見にいってまして。
久しぶりの文楽、「夏祭」。なんと舞台の上にテロップが出る
ようになっていて、驚いた!まあね、若い人には呪文にしか聞こえない
だろうから仕方ないか・・。でも、けっこう字が出る、ということが気になる
私はお年寄り・・。字に反応しちゃうんだなあ〜・・。
でも、それをのけたら、あの空間は変わらないなあ。以前なら玉男師匠が
遣っていた団七を玉女さんが遣ってはったのと(なかなか素敵な団七でした)
蓑助師匠の使うお辰が、昔より一層深みが増していたのが印象的。
女の肉体を感じました。気丈さの中に夫を思う艶が漂うのがよいですね。
この変わらない、ということの中にやはり歳月がある・・・。
そこに写る自分も変わっているのだろうな。そんな事を思いながら
帰ってきてこの本を読んだらぐっときてしまった。

千波と、牧子と、美々。中年と呼ばれるときに差し掛かった仲良し
三人組。千波はアナウンサーとして円熟に向かいつつあり、牧子は
娘のさきと穏やかな日を送り、美々は写真家の妻としてサポートに
まわり、それぞれが人生の実りを手にしようとしている日々。
しかし、朝の番組のメインキャスターとして張り切っていこうとしていた
矢先に、彼女を病魔が襲ってしまう・・・。

とこう書くと、千波の病気のことばかり書いてあるのか、という感じに
なってしまうのですが。確かにそれがメインの出来事であるけれども、
そこは北村薫さん。三人の視点を変えつつ、その人生を細かい
エピソードや日常を書き込むことで流れの中にふわっと浮き上がらせるような
叙情的な作品に仕上げています。
牧子とその娘のさきちゃんは、「月の砂漠をさばさばと」の親子コンビでも
あって、その世界との繋がりが、またファンにはいい感じです。
さきちゃんはこういう娘に育っていたんだね、という感慨がありますね。
お互い中高生の時に知り合い、ずっとべたべたするでなく、離れすぎず
いい関係ですごしてきた歳月。「友情」という言葉ではこぼれ落ちてしまう
ような、お互いに対する思いがたくさん詰まった作品でした。
女同士で培うもの、って夫婦で培うものとは、また違う。
夫婦が人生を一緒に歩いていく仲間だとしたら、女同士の関係と
いうのは、お互いの人生をずっと見てきた、お互いを写しあう鏡のような
ものかもしれない。ふっとしたことでその人生はいろいろな形をとるけれども、
その道に入り込んでいったのはもう一人の自分であるかのような共感・・。
この物語のエピソードの中に、修学旅行でいった金比羅さんの歪んだ鏡に、
三人が写っている、というものがあります。うん。これだね。全く違う人生なのに、
鏡に映るもう一人の自分・・・。この三人の鏡は、いい形の「ひとがた」を
映していたの違いない。

最後に好きな人と女としていい時間をすごせた千波の一生・・。
人生にはそれぞれの時間があって、母から娘に受け継がれる思い
があって、それは川に流れるように過ぎ去っていく。
川に流れるたくさんの「ひとがた」は、それぞれの願いをのせて
悠久のなかに流れ込んでいくんだなあ・・。
人生は流れに浮かぶ木の葉のようにはかないけれど、それぞれが
愛しい大切なもの。そんな当たり前だけれど、当たり前でないことを
感じることができた。

朝日新聞に連載されてたときのおーなり由子さんのイラストがとっても
よかったんだよね。カバーの絵はおーなりさんだけど、
それも入れた装丁だと、もっとよかったなあ・・。

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ひとがた流し アナウンサーの千波、作家の牧子、元編集者で写真家の妻となった美々は、高校からの幼なじみ。牧子と美々は離婚を経験、それぞれ一人娘を持つ身だ。一方、千波は朝のニュース番組のメインキャスターに抜擢され& ...続きを見る
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ひとがた流し 北村 薫  07−8 ★★★★☆ 【ひとがた流し】 北村 薫 著  朝日新聞社 ...続きを見る
モンガの独り言 読書日記通信
2007/01/09 22:55
ひとがた流し - 北村 薫
前半くらいはまではまったりと読んでいたんですが中盤を過ぎる辺りから話しは一気に加速していきます。人生ってマジでどこで何が起こるかわからないです[:汗:] ...続きを見る
脳内TraP
2007/02/04 02:49
ひとがた流し 北村薫著。
どうも相性が悪いのか、読みづらかったです。 急に視点が変わって一体誰の目線で語ってるのか、ついていけなくて戸惑うこと数回。 たとえば、類の個展で牧子とさきと美々と娘の玲と合流する。 類と玲が喫茶店に移動するんだけど、そこには牧子とさきもいるのかと思いきや、類.. ...続きを見る
じゃじゃままブックレビュー
2007/10/13 16:55

コメント(7件)

内 容 ニックネーム/日時
かなりつたないレビューですが、TBしてしまいました(>_<)
新聞連載時は、おーなり由子さんのイラスト付きだったんですね。
それだとまた印象が違いそう。単行本もイラスト、ちょっとでいいから付けてほしかったです。
kimi
2006/10/04 20:31
>kimiさん
TBありがとうございます。おーなりさんのイラスト、素敵だったんですよ。北村さんとはいいコンビですよね。でも、あの挿絵がつくと、ずいぶん雰囲気が変わっちゃうような気もしますが・・。
ERI
2006/10/04 23:34
千波の病気はショッキングではありましたけれど
三人共にそれぞれ自分なりに幸せなときを過ごしているんだなぁ_とも感じられました。
何もかも満たされているからしあわせで、何かが欠けているから不幸せ、なんていうことはないのですよね。
欠けているものがあるからこそのしあわせ、というものを思わされもしました。
ふらっと
2006/11/19 09:13
>ふらっとさん
「欠けているものがあるからこそのしあわせ」・・。
ほんとに、そうですね。三人とも、どこかが欠けていて、足らないんだけれど、その足らないところがうまく合わさるように付き合ってこられた。
それもまた、一つの幸せ。人生足らないものばかり数えてしまうけれど、
「足らない」ということは、けっこう幸せなことなのかもしれません。
このふらっとさんの一言は、なんだか忘れられない言葉になりそうだなあ・・。
ERI
2006/11/20 22:21
こんばんは、ERIさん。
ここに出てくる人たちは、生きているなーって感じがしました。
友情にも、いろいろあるなー、素晴らしい人生に映りました。
モンガ
2007/01/10 23:30
北村作品慣れてないせいか、ちょっと読みづらかったんですよね。千波たちの男口調にもちょっと拒絶反応が・・・。
牧子とさきは他の作品にも出てたんですね。千波たちは初登場ですか?
じゃじゃまま
2007/10/13 17:01
>じゃじゃままさん
北村さんは、割と文体が固い・・というか、書き言葉の方ですね。だから、女同士のリアルな会話は、ちょっと苦手かも。さきちゃん親子以外は初登場です。
ERI
2007/10/14 00:30

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