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zoom RSS 夜をゆく飛行機 角田光代 中央公論新社

<<   作成日時 : 2006/09/27 22:51   >>

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画像ホームドラマ、家族の小説なんですが・・。
この書き方が、全く角田さんらしいです。
この家族は、ちょうどばらばらになりかけているところ。
両親と家族がいて、それぞれの役割があって、わいわい賑やかに
くらしてて、なんだかんだあっても、その日常になんとなく流れていってくれる。
そんな、ありふれていて貴重な人生の一瞬の時期を、崩れかけていく過程を
克明に書くことで、掬い上げることに成功している・・そう思います。

昔ながらの商店街にある酒屋さん。イベント好きの気のいいお父さんと、
料理好きのお母さん。そして、個性豊かな四姉妹。
主人公の里々子は末っ子。いつも物干し場に座って、生まれることのなかった
弟の「ぴょん吉」と心の中で会話している、高校三年生。
駆け落ちしたことはあるけれども今は結婚している長女の有子、「石になって」高校時代を送った次女の「寿子」、飾るのが好きで女性雑誌に載るのが夢の三女の素子と
賑やかな一家なのだが、寿子が家族をモデルにした小説で新人賞をとった
あたりから、家族の形がくずれ始める・・・。

「猫を飼うのは悲しい思いを抱くことだ」
というお母さんの言葉が、印象的です。
お母さんは猫のことをいってるんですが、「家族を持つ」「子どもを産む」
そのどちらも、幸せと共に悲しみを手にいれること。
幸せと悲しみはセットのもので、そのどちらか、ということはありえない。
そう・・夜の空をゆく飛行機のようなもので、いつかは大なり小なり別れが
やってくる、という行き先は決まっているんですよね。
でも、一緒にいるときには、それに気がつかない。
人はなんでも失ってから、手の中にあったもんに気がつくわけで・・。
家族とのことを考えると、必ずそこには後悔が伴う。
お父さんが、妹のミハルちゃんのことを「あの時にこうしていれば・・」
という思いと共にしか思い出せないように。
でも、それは家族というお互いの生き方に関わってしまう存在だからこそ
起こる痛みでもあるんですよね。そのつながりの痛さと、甘やかさが
角田さんらしい、でこぼこした筆致で語られていて共感を誘います。
この家族の情景は、どこか自分たちに似ている。
この家族たちの不器用さにおかしみを感じ、身勝手さにちょっとイライラしながら、
やはりどこか悲しい。
ぴょん吉という生まれてこなかった弟は、最後に里々子のところからいなくなってしまった
ようだけど、またそのうち、里々子が子どもを生んだりしたときに、ひょっこり
帰ってきたりするのかもしれない。

寿子が賞を取ったときのドタバタがリアルにおかしいのは、角田さんの
体験があるから?・・で、出版社のお姉さまが皆そろって美人で頭
よさそうなのは、職場サービスなんですかね?それにしては辛口ですが(爆)
そこもなんだか可笑しくて笑ってしまいました・・。

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2007/07/08 01:29

コメント(3件)

内 容 ニックネーム/日時
家族ってほんとうに難しいテーマだと思います。
家族じゃなければなんてことない事々が家族だからこそ痛かったり甘かったりするのですね。
その辺りの描き方が角田さんらしくお見事でした。
ふらっと
2006/09/28 06:50
角田さんは少ししか読めてないのですが、里々子がもう戻れないことに気づいて受けた喪失感、そして、いさかいがあったり姿を変えたように見えても、続いている家族のつながりが、伝わってきました。
かなり脱線しちゃいますが、ミハルちゃんの手紙の最後の言葉、バイチャはアラレちゃん、バイバイキーンはバイキンマン、バハハーイはうつみみどり?、バイナラは・・思い出せません(笑)。角田さん、よく知ってらっしゃいますね。
藍色
2006/10/16 04:25
>藍色さん
バイナラ・・知ってるのに、誰だったか思い出せない(汗)
サヨナラ、サヨナラ・・は淀川さん。気になる・・。
角田さんの書く家族は、いつもちょっと壊れてて、それでも陽だまりの匂いがしますね・・。ほんと角田さんらしい小説でした。
ERI
2006/10/16 21:35

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