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zoom RSS ハズキさんのこと 川上弘美 講談社

<<   作成日時 : 2006/10/20 23:44   >>

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画像最近、川上さんの本を読む機会が多くて、うれしい限りです。
旺盛な執筆欲ですね〜。ノッてはるなあ、そんな感じがします。

これは、元々エッセイを、という約束で書き始めたものらしい。
しかし、エッセイが苦手な川上さんは、エッセイの形を借りた小説に
することにしたそうで・・。「本当」のことをちょっとでも書かなければ、
と思うとかけなくなるそう。これはわかるような気がするなあ〜。
私も自分の日常のこととか、全然書けない人間なんで・・。
脳内にうごめいてるあれこれは書けるんやけど。
なんや、恥ずかしいんです。大した日常を送ってない、というのもあるんですが
そんなこと書いたら、裸で歩くような気がする(爆)
妄想書くのは恥ずかしくない、というのってどうなんや〜、と思うんですが
川上さんもそうなんや、とちょっと安心しました・・。

ほんと、文章を書くということは、おかしいもんで、書くとそれが記憶に
なるんですよね。このブログも、だから書いてるのかもしれない。
(川上さんと自分を並べるなよ、と自分に突っ込みながら)
この短編集も、チラチラと川上さんの「虚と実」が混ざって、なかなかおいしい
短編集になっています。
その「実」の混じり方のせいなのかどうかわからないんですが、前回の「ざらざら」
よりも少し苦味のきいた雰囲気です。「ここを過ぎて悲しみの街」という言葉を
ふと思い浮かべました。冒頭の「琺瑯」の、ふらっと居ついて、またどこかに
行ってしまった町子の残していった気配のように、「記憶」には、いつも
甘さと苦味が入り混じる。その一瞬にしかなかったものの残した気配が
匂いやその時の光景とともに、ぽかっと浮かび上がってくることってありますよね。
幸せだったり、うれしかったりした記憶ではなくて、ちょっと心にひっかかっていた
浮かび上がる気配に、ちょっと身構えてしまうような記憶。
「扉」にある押入れに幼い頃に入った記憶とか。
「床の間」にあるような、若い頃にしたぐだぐだな貧乏旅行とか。
これは川上さんの筆から生まれた記憶なのに、読んでいるうちに、確かに
自分が過ごしてきた人生のあちこちに散らばっている記憶のような
そんな気がしてくるんですよね・・。年いって、記憶があやふやになったら、
つい自分のことみたいに人にペラペラしゃべってしまいそうな、そんなリアリティが
あります。無造作に書かれたような無作為を感じるのに、これは川上さん以外が
書くと、きっと興味のない人がつぶやく独り言のようになってしまうかもしれない。

どこかで読んだんですが、新人発掘の賞関係の投稿で一番多いのが、女性なら
川上さんもどき、男性なら村上春樹もどが多いらしい・・。
ふっと、あまりにも普通に書いてあるような文体なんで、「これなら私にも書けそう」
という錯覚を呼ぶのかもしれないな、と思ったんですが。
川上さんの文章は、「普通」とは違うところにあるような気がします。
日常と、非日常の間の、絶妙な立ち居地にいる。
湖面に映る風景のようです。水面のゆらめきに移る風景は、たしかに今目の前に
ある風景と同じものなのに、それが水というものに写ると、なにか違うものに
変身してしまう。風や、その日の温度や、天気、陽の射し方でゆらゆらと姿を
変えて妙に美しかったりゆがんだりして、目をこらそうとすると、ふうっと逃げる。
記憶や日常が、川上さんというフィルターを通すと、なんだか忘れがたいものとして
刻み込まれてしまう。その芸(っておかしいいい方かもしれないけれど)は
川上さんにしかできないんだろうなあ・・・。その芸を、いつまでも楽しみたいものです。

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+++ こんな一冊 +++
2007/01/15 20:36

コメント(2件)

内 容 ニックネーム/日時
>年いって、記憶があやふやになったら、
>つい自分のことみたいに人にペラペラしゃべってしまいそうな

これほんとうによくわかります。
川上さんの虚実と自分の虚実が入り混じってしまいそうになります。
ふらっと
2007/01/15 20:36
>ふらっとさん
心に、ふっと侵入されてますよね。されてる、という意識もなしに。
意識下にそっともぐりこむ。日常に宿る普遍。そんなことを考えてしまいます。
ERI
2007/01/16 20:59

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