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zoom RSS レインツリーの国 World of delight 有川浩 新潮社

<<   作成日時 : 2006/10/24 23:47   >>

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画像先日読んだ「図書館内乱」の中に、この物語が出てきてました。
クールな小牧さんと可憐な毬江ちゃんのエピソードです。
毬江ちゃんは、難聴者です。「突発性難聴」という病気のせいで
音が聞こえにくくなってしまった彼女を支え、愛していく小牧さんが
素敵で、とてもいい感じだったのですが、この「レインツリーの国」の
ひとみと伸も、率直で真摯で、お互いをてさぐりしながら触れ合っていくその過程が
くっきりと心に残る、いい物語でした。

始まりは、ネット。「フェアリーゲーム」というライトノベルについて書かれたひとみの
文章を読んで感動した伸が、彼女にメールを送るところから、物語は始まります。
この二人がネットから始まる、というところが、この物語のミソですね。
私も毎日ここでこうやってブログを書いておりますが、こういうことって、日常の
会話ではほぼ人とかわすことはない。日常の中では声に出すことがない、
自分の中にある大切な部分であり、ちょっと柔らかいところでもあります。
それを読んで共感してもらった相手とのお付き合いというのは確かに普通に
「出会う」ところから始まった関係とは、違うものがあります。
こう・・ちょっとした会話から手探りでお互いを探していく過程をすっ飛ばして
自分をまずさらしているわけでして。私にもネットで繋がるお友達がたくさん
できまして、最近会う機会にも恵まれたりします。
それは嬉しいことでもあると同時に、またコワいことでもある。
相手が自分に対して抱いている予想を裏切ることにならないのか。
そして、自分は相手に対してどんな印象を持つのか。
ネットではストレートに出てくる言葉が、なかなか出てこなかったり・・。
幸い、今のところ私がネットで知り合ったお友達は、素敵な人ばかりで
一気に仲良くなれて楽しい時間を過ごしておりますが、
その危うさはよくわかっているつもり。だから、この恋人たちの喜びと
戸惑いがよくわかりました。

伸は、ひとみの紡ぐ言葉に恋をする。このメールでの言葉によるやりとりが
「ああ、わかるわかる!!」というリアルさで、惹かれあう感じがとても納得
できてしまう。「共感」って、凄いもんです。一気にお互いを結びつける。
しかし、深まっていく言葉のやりとりに反して、ひとみはなかなか伸に会おうと
しない。それはひとみが「難聴」というハンディキャップを抱えているから。
普通ではない、ということがひとみを傷つける。
あなたには私の気持ちなどわからないんだから、という気持ちと、それでも
わかってほしいという矛盾がひとみを苦しめて、離さない。
ややこしい迷路に入ってしまう恋なんだけれども、そのひとみに対する伸の
行動が、いいんです。逃げない。面倒くさくても、苦しくても、傷つけられても
逃げない。自分のやり方で、まっすぐにひとみに向かって心を開いてくれるように
働きかける。この強さはなんだろうと思っていたんですが、彼もまた辛い、自分
ではどうしようもない坂を越えてきたからなんですよね・・。

お互い、人間はいろんな辛い自分だけのものを抱えて生きている。
それを「そんなこと大したことじゃない」「そんなことでうじうじするのはおかしいよ」
と片付けてしまうのは、簡単だ。だって、不幸と名のつくものはいくらでも
この世の中に転がっていて、悲惨なものを探そうとすれば、どこまでも、それには
限りがないから。無慈悲に戦争で殺されていったりする人たちに比べれば、
この日本で出会う不幸なんてたかがしれているのかもしれないし。
でも、それでは何のためにこの世界に同じく生まれてきたのかわからないものね・・。
確かにその人の辛さは、その人だけのもの。それを捨ててしまうことはできません。
しかし、それを抱えてもお互いなんとか理解しあって、笑って生きていこうとすることはできる。
その気持ちに立つことができるまでの二人の葛藤とやり取りが
手に取るように書かれているのが、とても新鮮で心に落ちました。
伸の強さを貰って、ひとみはちょっとだけ、この世界に裸足で、自分をさらして
踏み出そうとしている。自分の弱さも受け止めて、それに向かっていこうとしている。
読後も、その新しくなった髪を誇らしげに掻き揚げている姿が心に残って
爽やかでした。

私はこれまで難聴の人たちのことをあまり知らないで生きてきたなあ。
このひとみの大変さ、そして耳のハンディキャップにも、聾唖、中途失聴、難聴
とあって、それぞれ持つ言葉の文化が違うことも初めて知った。
そして、音が聞こえにくい人たちが、どれだけ「言葉」を大切にしているのかも。
自分が毎日積み上げている「言葉」というものが、どれだけ人をつなぐ
大切なものであるのか。このネットの世界も、「音」のない世界。
言葉だけで繋がっている世界ですよね。
そのコワさと大切さを、強く感じた本でもありました。
恋愛ものとしての楽しさと、そういう問題提起をいつも有川さんはうまく
読ませてくれる。最近、とみに面白い作家さんです。
これからも楽しみだ・・・。

http://www.oishiihonbako.jp/detail.php?book_no=001126

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コメント(10件)

内 容 ニックネーム/日時
聴覚障害という、簡単に越えていけないデリケートな問題を挟んだふたりの気持ち、上手くいかないもどかしさがすごく伝わってきました。ひとみと向き合い、困難を突き破ろうとする伸行の言動が、心に沁みる純愛物語でした。そして言葉の大切さも、提起していましたね。読書ブログをしてることもあって、冒頭、すごく、はまりました。“自分の中にある大切な部分であり、ちょっと柔らかいところでもあります”に共感です。私もERIさんとネットで知り合えて、このご縁を大切にしていきたいと思っています。会う機会、いつか持てたらうれしいです。
藍色
2006/10/25 02:40
>藍色さん
純愛物語でしたね・・。ハンディキャップと、恋人としての気持ちの
行き違いと、二つを乗り越えていく二人のやりとりは、緊迫感があって
読み出したら止まらなかったですよ。
このネットの世界も、広いようで、案外狭かったりします。
なぜか、言葉だけのつながりなのに、割と似たものが集まりやすい(爆)
言葉って、記号なのになぜかその人自身がでてしまう、こわいものでも
ありますね。このネットの海の中で出会えたこと、これも本当に「縁」
です。これからもよろしくお願いしますね。いつか、本当にお会いできたら、いいですね。
ERI
2006/10/25 23:13
自分のレビューでは、肝心の恋愛譚の部分をすっかり飛ばしてしまい、枝葉に拘った感があるのですが、このもどかしい想いって、すっごく共感できるんですよね。本当にこの作家、これからが楽しみですね。
すの
2006/11/03 22:36
このレビューはいいですねー。プロのライターの方の原稿のようです。この本の魅力が、もれなく入っているって感じで。しかも感情もこもってて素敵です。わたしも「ネットでつながるという事の不思議」とか、「共感」のすごさとか、「出会いの奇跡」とか、「理解しあおうとする努力」とか、色んな事を考えたんですけど、うまくまとめられませんでした。まあ、ERIさんが書いてくれたから、いい事にします(笑)。読んだ本は図書館に返してしまうので、きっとまたこの記事を読みに来ると思います。ではでは♪
ゆうき
2006/11/04 01:10
>すのさん
この、二人がお互いを知っていく過程の不器用さが、私にはとても好ましかった・・・。不器用だから、余計にまっすぐで、愛しくて。こんな付き合い方を
忘れていましたよ。新鮮でした。

>ゆうきさん
おっと!!そんなに褒めていただいては、私のほうこそ恐縮至極・・(爆)
私も図書館で借りてしまったんですが、返すのがちょっと惜しくなりました。
・・・て、ついつい買っちゃうと、また家の中がぐちゃぐちゃ・・。反省しろ、っていうところです。ゆうきさんのお宅の本はどんな具合ですか?
一度お聞きしたい・・・。
ERI
2006/11/04 20:10
ERIさん、こんにちは。「ラッシュライフ」に引き続き、こちらもTBありがとうございました。
有川浩ムーヴメントを求め、地味に活動中の、水無月・Rです。
有川作品の「はちきん」が命だった水無月・Rですが、こんな優しい恋愛話もいいもんだな、有川さん素晴らしいわ〜、なんて思ってしまいました。

これからも、有川浩大絶賛を続けますので、また記事をUPしたら、ヨロシクお願いします。
水無月・R
2007/03/28 21:55
 こんにちは♪
 TBどうもありがとうございました。

>お互い、人間はいろんな辛い自分だけのものを抱えて生きている。
それを「そんなこと大したことじゃない」「そんなことでうじうじするのはおかしいよ」
と片付けてしまうのは、簡単だ。
 でも、それでは何のためにこの世界に同じく生まれてきたのかわからないものね・・。
 確かにその人の辛さは、その人だけのもの。それを捨ててしまうことはできません。

 これ、すごく共感します。
 なんだか読んでて泣けてくるくらいでした^^;;

 ネットについても、うんうん、って感じです。
 ポーンと距離が近くなるところが魅力だけど、
 でもとてももろい関係ですよね。
 顔が見えないからこそ、誠意を忘れないようにしたいなぁと
 あらためて思いました。

 http://blog.goo.ne.jp/miyukichi_special
miyukichi
2007/06/30 13:36
>miyukichiさん
丁寧なコメントありがとうございました。
人と人とが理解しあうって、時には闘いのようなもの。
傷ついたり、傷つけられたり・・・。
でも、そこから逃げようとしなかった二人の姿が、とても爽やかでした。

ネットは言葉だけで結びつく関係で、とても怖い一面もありますが、なぜか私は、その出会いに今まで裏切られたことがありません。文章や、短い言葉からでも、なぜかその人が見えたりしますよね。でも、これも反面とてもこわいことです・・。誠意がほんとに大切ですね♪
ERI
2007/07/03 17:22
毬江ちゃんの漢字は
↑です。
なな
2008/03/30 21:29
>ななさん
ありがとうございます。訂正いたしました。
ERI
2008/04/03 21:00

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