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zoom RSS 水辺にて on the water/off the water 梨木香歩 筑摩書房

<<   作成日時 : 2006/12/08 00:02   >>

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画像梨木さんのエッセイです。
以前にも書いたことがありますが、梨木さんという方は、エッセイを読んでも
「生活」が匂ってこない。どことなくミステリアスというか、どこまでも
アカデミックというか・・。このエッセイも、水辺がテーマなんですが、
水辺を漂いながら梨木さんがたどった思索の後を追う、という雰囲気。

梨木さんは、何とカヤック(一人乗りの、カヌーのようなボート)
を操って、川や湖を散策されるらしい。これにはちょっとびっくりだった。
しかし、「自然」というものと人間が調和して生きることを非常に大きなテーマと
されている方なので、ただ歩くだけでなく、もっと近しい形で一緒にいたい欲求
なんだろうと思う。ただ、このエッセイを読んでいてもわかるのだけれど、梨木さんは
非常に行動派だ。思いついたら、そこに行かないと気がすまないみたい。
そこが外国でも、日本でも関係なく、とにかく行ってしまう。
そして、運転でも山歩きでもカヌーでも、結構頭から突っ込んでキケンな目にあったり
してはって。水辺、にからめてアーサー・ランサムや「たのしい川辺」などの懐かしい
作品、アイルランドやカナダの湾や島などの話題が豊富に出てくるところに
「さすがだわ〜」という憧れを抱きつつ、そんな無鉄砲さに、物書きとしての「血」の
ようなものを感じて、ああ、なるほど、と思ったり。端正な中に、一点そんなもの狂おしさが
存在することが、表現するものが持つ貪欲さをあらわしているような気がする。
それがない人は、多分物書きにはならないだろう。そう思う。
そして、ほんとに思い込んだら、まっすぐなんですね・・。
梨木さんの作品には、いつも潔さ、決然と物事に正面からぶつかる雄雄しさを感じるんですが、そんな気質がやはりエッセイにも、伺える。

梨木さんがあちこち旅をするのは、どうやらその「土地」の「物語」に惹かれるからのようだ。
自然と人が積み重なって地層のように折り重なるそこから、立ち上る気配をキャッチする
アンテナが、梨木さんにはあるらしい。どことなく惹かれてたどりついたそこから、梨木さん
は物語を読み取っていく。ダムに沈んだ村から。水と格闘し、支配しようとあがき続ける
沼地から・・。そこに生きて、生活を積み重ねて、そして無に帰っていた人々の声無き声
に、耳を傾ける。それは水辺から海へ、森から流れ出た川の支流へ、それらが流れ込む
生き物の細胞へ、循環しながら、永遠に物語を積み重ねていく。
梨木さんはその物語を読み解こうとする。

「その微妙に違う物語を、読み込む力が人に備わっていないにしても、
そのことに思いを巡らせ、感管を開こうとすることは、今、この瞬間にも、
できることなのだと信じている。そしてその開かれてあろうとする姿勢こそが、また、
人の世のファシズム的な偏狭を崩してゆく、静かな戦いそのものになることも。」

語り部・・・という言葉が思い浮かぶ。その物語を聞くために、梨木さんは真剣に
命を懸けておられる気配が漂ってくるから。宇宙から鯨、そして神話から鳥や魚、
植物に対する深い思い・・。
「考える、ということ、それを文章化するということは、
本当に真剣勝負の、その考える対象と身を交わすぐらいの真剣勝負」らしい。
常に真剣な方だ。いや、その文章にはいつも飄々としたユーモアも漂って
いるので、ガチガチの真面目人間、というのでもないと思うけれども、
とにかく物語、文章を書く、ということに真剣な方だ。
常に自分の経験を言葉にしなければ気がすまない、カヤックに乗って強風に煽られ
ながらも、それを頭の中で文章にしようとするところに、プロ根性を見た!!
ささやかな雫の一粒も、ボイジャーの行き着く宇宙空間も、梨木さんの中で
同じ重さで存在し、何かを語りかけてくるものらしい。その物語が芽吹くところを
ちょっと見せてもらった・・。梨木ファンには、こたえられない一冊です。
あちこちに、「あ、これはあの物語の・・」と思えるようなエピソードを感じるのも楽しい。
もうすぐ新作が出るらしいですね。ますます楽しみだ・・。


おいしい本箱 http://www.oishiihonbako.jp/detail.php?book_no=001160





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水辺にて*梨木香歩
☆☆☆・・ 水辺にて―on the water/off the water梨木 香歩 (2006/11)筑摩書房 この商品の詳細を見る 生命は儚い、けれどしたたかだ-。 川のにおい、風のそよぎ、木々や生き物の息づかい。 カヤックで漕ぎだす、豊か& ...続きを見る
+++ こんな一冊 +++
2007/01/08 06:47
『水辺にて』 梨木香歩
水辺にて on the water/off the waterposted w ...続きを見る
ついてる日記U
2007/02/07 22:48

コメント(3件)

内 容 ニックネーム/日時
物語のようなエッセイだわ、と思いながら読みました。
梨木さんの暮らし自体が物語なのでしょうね。
カヤックが暮らしとひとつになっているのには驚きましたけれど、ERIさんのおっしゃるように、物書きの「血」に通じるところがあるのかもしれません。
梨木ワールドを堪能しました。
ふらっと
2007/01/08 06:46
>ふらっとさん
梨木さんのような生き方って、憧れですね・・・。凡人にはなかなか出来ないことですが。あんなに芯のある強いかたなのに、時々ぽろっと迷路にはまるようにおっちょこちょいなところも、おありで・・(笑)今年もやはり梨木さんを追いかけることになりそうです。
ERI
2007/01/08 21:17
ERIさん☆こんばんは
カヤックで雪の日の湖に漕ぎ出す所がとても素敵で、梨木さんが描く物語そのものでしたね。
行きたいと思ったら、迷わずに行ってしまう行動力にビックリしてしまいました。
Roko
2007/02/07 23:17

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