おいしい本箱Diary

アクセスカウンタ

zoom RSS 竜神七子の冒険 越水利江子 小峰書店

<<   作成日時 : 2007/01/02 11:48   >>

ナイス ブログ気持玉 1 / トラックバック 0 / コメント 0

画像子どもが子どもであることって、時にはほんとにしんどいことかもしれない。
大人なら自分の生き方も自分で選べるけれども、
子どもではそうはいかないから。どうしても、大人の都合の中で
自分の居場所を確保することが大きな課題になってしまう。
今、私達の頃に比べたら、格段に豊かになっていると思うと思ったりするけれど
子どもをめぐる事件はあとをたたず、大人に振り回されてしんどい思いを
している子どもたちは、多い・・。多いですよね。
この物語の女の子もなかなか大変なところを生きています。
でも、その中で、強さと優しさを失わない七子がいじらしく、また頼もしい。


父親が・・・。まあ、一言で言うと、飲んだくれの親父さんなんです。
何でも全部、飲んじゃう。自動車保険のお金まで飲んじゃう。
自分が今身に着けてるものを売ってまで飲んじゃいます。
冒頭、主人公の七子、弟の笑太、それからお父さんで魚釣りに行くんですが、
綺麗な鯉を見ると、このお父さんでっかい石をどぶんと投げ込んで鯉を
半死にしてしまう・・・。無茶するよねえ、と思ったらもうほんまに無茶するタイプ
でした。やくざの車に自分の車ぶつけるわ、いきなりホームレスを連れて帰ってくるわ、
あやしいとこに飲みにいって二階から飛び降りて両足骨折するわ。
あかんやん・・・。反省の色なし。調子だけよし。なんとなく愛嬌があるんですが、
まあはっきり言うて結婚はしたくないタイプ。
で、お母さんがしっかり者なんですね。ああ。これは典型的な関西の突っころばしの
男と女のタイプです。
もちろんお金なんてなくて、いつもすっからかん。常に揉め事あり。
大変や・・・。
お母さんはぎりぎりまでガマンする。
夫の尻拭いをし、自分で働いて借金を返し、子どもの世話して・・・。
ああ、こんな女の人は、こういう頼りない男の人を、つい抱えこんでしまうねん。
ほっとかれへんねんなあ・・。
そんな夫婦の間に暮らしている七子の目を通して描かれる大人たちは
どこか、少しいびつで、「今」をやり過ごすのに夢中で、なにやら
危なっかしい・・。でも、ちょっと考えてみたら、これは私もおんなじかもしれん。
そして、私が幼い頃に見ていた大人の風景も、こんな感じやったなあ・・。

隣の蝶子さんが言う。彼女は、お座敷で立ち回りの芸を見せて生きてる
ちょっと不思議な雰囲気のおばさん。

「女にはな、どんな女にでも、生まれつき観音さんがいはるんや。
こんなとこに、彫り物なんかせんでもや。けど、それだけでは、女は幸せ
にはなれへん。男は、女の観音さんを利用するだけやしな・・・」


きっと七子は、この言葉の半分も意味がわからないはず。
でも、きっと忘れへんやろなあ・・・。七子は、そのまだ曇らない瞳で、大人たちを
見つめている。私も大人をじ〜っと見てる子で・・。母親のところにくるおばちゃん達の
話。親戚の集まりの中で繰り広げられる噂話。あからさまに「聞いてる」という顔を
すると大人たちは、「あかん、こんな話子どもに聞かせたら」と引いてしまう。
その間合いが私はうまくて、ひっそりと大人たちの間に混じっているのかいないのか
わからんような顔をして、耳をそばだてていた。大人たちの言葉はある種判じ物の
ようで、何年か、それこそ何十年かたってから、「あ!!そうか!!」と思ったりする。
七子も、きっとこの幼い日に、大人たちに翻弄されながら聞いた人生と、その時の
自分をまざまざと思い出したりするのだろう。女としてのあれこれを知ってから。
それを思うと、しょっぱいような、この七子がとても愛しいような、つんと胸を刺すものを
覚えます。この七子が昔の自分のように思えて、苦労しなければいいな、と思ったり。
(いや、自分がそんなに苦労してるわけじゃないんですが。)

この本のタイトルが、なぜ「竜神七子の冒険」なのかと思いながら読んでいたんですが・・。
親に翻弄されながら生きてる七子、そしてやはり親の縁に恵まれずに、でも精一杯「自分」というものを通して生きていこうとする心平という男の子。
彼らにとって、この世の中に根を張って自分の場所を獲得していく、それこそが
冒険で、戦いなのだと。大人になると、そんな戦いがあったことも忘れてしまいそうに
なるけれども、それはけっこう大変な、身一つの捨て身の戦いなのだ。
その中で、柔らかい心を失わずに生きていってほしい、と願ってしまう。

「人生、七転び八起きやろ、お母さん」

そうやで、その通りやで、と七子に話しかけて、この物語の扉を閉じました。


http://www.oishiihonbako.jp/detail.php?book_no=001167



テーマ

関連テーマ 一覧


月別リンク

ブログ気持玉

クリックして気持ちを伝えよう!
ログインしてクリックすれば、自分のブログへのリンクが付きます。
→ログインへ
気持玉数 : 1
ナイス

コメント(0件)

内 容 ニックネーム/日時

コメントする help

ニックネーム
本 文

記事一覧

竜神七子の冒険 越水利江子 小峰書店 おいしい本箱Diary/BIGLOBEウェブリブログ
文字サイズ:       閉じる