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zoom RSS モノレールねこ 加納朋子 文藝春秋社

<<   作成日時 : 2007/01/08 20:54   >>

驚いた ブログ気持玉 1 / トラックバック 4 / コメント 5

画像加納さんの短編集です。柔らかくて優しい持ち味は、いつもの
まんま。そして、その中に瑞々しく書き込まれる人の心が、こちらに
語りかけてくるように伝わってくる。一篇一篇がとてもよく練られていて
人が自分の顔の後ろにひっそりと隠しているものを教えてくれます。
ほんとに、不器用な人間の気持ちを描くのが、加納さんはうまい。


「モノレールねこ」

「モノレールねこ」って何やねん・・って、この本のタイトル聞いて思ったんですが
物凄く納得しました。この表紙にもなっている不細工でおデブちゃんの猫と
サトル少年のほのぼのした組み合わせ。そして、その猫が繋ぐ、顔も知らない
子との、手紙でのやりとりと、友情。それが、十何年たったあとに、また素敵な出会い
を呼ぶ。話の運びも会話も、テンポがよくて引きずり込まれてしまう。
忘れられなくてずっと心に抱いている思いがあるからこその、再会が心を
明るくさせます。


「パズルの中の犬」

自分が心にずっと抱いていた棘。それを浮かびあがらせるジグソーパズルのピース。
それに初めて向かい合ったとき、知ったのは自分が放った棘。
親子であることは、時に苦しくてお互いを傷つける。
お互いに不完全な人間として認め合うことができればよいのだけれど・・・。
母と娘の難しさと、またそうであるから切れない絆を感じる一篇。


「マイ・フーリッシュ・アンクル」

思いがけない事故で家族を失い、たった一人残された少女カスミ。
同じく残されたのは、本当に役に立たない、成長をとめてしまった
かのような30男の叔父さん。気丈にふるまう少女の涙は、そんな
ダメダメ叔父さんにしか見せられない・・・・。カスミと叔父さん、それぞれが
外に向ける顔と違う自分を認め合う、その瞬間が氷が解けるような暖かさに
満ちている。叔父さんの、不器用な、あまりに不器用すぎる思いが、切ない・・。


「シンデレラのお城」

一人で生きていくことが楽しいのに、周りからは結婚をせっつかれて、鬱陶しくて
仕方ない。そんな二人が、果たした偽装結婚。それは、まわりをうまく騙すため。
・・・その嘘の影に隠した昔の傷と、今愛する人への思い。
失ったものに囚われてしまった男を愛した女の一途な嘘は、幻を呼び寄せる。
幻想と悲しみに満ちた気配が美しい物語。


「セイムタイム・ネクストイヤー」

これは、以前「黄昏ホテル」というアンソロジーで読んだことがある。
幼い娘を亡くした女性を、皆で騙す優しい嘘。
騙すほうも、騙されるほうも、わかっていて続けるお芝居の中に
真心という真実がある・・。「シンデレラのお城」と対になるような
物語。「―来年の同じ日に」という約束を誰かとしたくなります。



「ちょうちょう」

何もかもうまくいくように見えた自分の夢に負けそうになった男。
ぶっきらぼうに見える女の子の、そっけない優しさに支えられている
ことにちゃんと気づいたやん、偉かったね、とおばちゃんニコニコしました。
だから、また一からやり直せる。若さとまっすぐさがまぶしい。


「ポトスの樹」


アホンダラでロクダナシなクソオヤジ。
小さい頃からその親父に振り回されて、妙にしっかり育ってしまった俺。
一番幼心に傷ついた記憶は、親父が溺れた自分を救おうとしなかったこと。
しかし、それは親父が一生背負っている負い目の記憶と繋がっていた。
それを知り、父親を違う目で見ることができたある日の
光景がやさしい。父から子へ、子から父へと流れるぶっきらぼうな優しさは
「似たもの同士」という言葉がふさわしい。
この中で、一番好きな短編。こういうロクデナシの男の人を飼ってる?!
お母さんの気持ちがわかってしまうな。


「バルタン最期の日」

バルタンというのは、ザリガニの名前。
ある日、公園の池から吊り上げられたザリガニの視線から、つつましくて
不器用な三人家族の姿が描かれる。
お母さんの、なんとも時代遅れなギャグの数々がどうにも寒くて
必死で、一歩間違えれば自爆ものの辛さなんですが、その捨て身
の笑いが、波紋のように家族を癒していくんですね。
「ガラでもないことしちまったなあ」というバルタンの小さなハードボイルド
ぶりが、またいい味です。



人間、一番大切なものに対しては、本当に不器用になってしまうということ。
思いが強すぎて空回りしたり、はたから見てて、情けなかったり。
まっすぐに向かうのがコワくて、目をそらそうとしたり。
無理やり笑おうとしたり、自分の勝手な思いをぶつけてみたり。
でも、そんな不器用な人間だからこそ、愛しいと思う。
心に大切に持っているものは、見えないことが多い・・・。
見えないから誤解されることも、多い人の心。
その見えないところを優しく掬い上げる加納さんの筆に、心がはんなりと
潤う物語たち。加納さんの物語には、いつも心洗われる。
読んだあと、暖かいものが胸に流れる。ふっと優しい虹がかかるようです。
大切な人に思いを伝える前に、読んでみたら勇気をもらえるかも。
そんなことを思う短編集でした。



http://www.oishiihonbako.jp/detail.php?book_no=001171








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コメント(5件)

内 容 ニックネーム/日時
「ロクデナシ」がいい味を出していましたね。
忘れてはいけないのに忘れがちなことを思い出させてくれるような一冊でした。
ふらっと
2007/01/09 06:55
「ねこ」とこの本の雰囲気からでしょうか、「魔女の宅急便」に使われたユーミンの「やさしさにつつまれたなら」が頭の中に流れてきました。
加納朋子さんのやさしさにつつまれた気分です。
小葉
2007/01/10 10:25
>ふらっとさん
本当に、ふっとどこかに紛れたら、取り出せなくなってしまいそうな、でも大切な思いを優しく描いた物語でした。暖かい物語というのは、いいですね・・・。

>小葉さん
あの曲、大好きです。「ささらさや」や「てるてるあした」も大好きでしたが、この本もお気に入りの一冊になりそうです。
ERI
2007/01/10 21:40
どのお話も宝物にしたいような輝きを持っていましたね。“一番大切なものに対しては、本当に不器用になってしまうということ”気づかせていただきました。とても暖かく優しい気持ちになれて、うれしかった1冊です。
藍色
2007/01/26 16:32
>藍色さん
こういう物語を読むと、人間という存在が愛しくなってしまいます。
大切にしたいもの、心の奥にじっと持っている、誰にもいえない思い。
その肌触りが、ほんとに優しく描かれていますよね。人柄・・なんでしょうか。とても魅かれます。
ERI
2007/01/26 22:18

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