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zoom RSS 玻璃の天 北村薫 文藝春秋

<<   作成日時 : 2007/05/20 01:57   >>

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画像「街の灯」の続編。ベッキーさんシリーズ2作目です。
この時代の、家柄のいい令嬢が主人公・・って、北村薫さんの雰囲気に
よく似合うんですよね。品がいい。先日行った鎌倉で見た、個人のお家とは
思えない素敵な洋館を思い出し、そこに英子ちゃんを坐らせてこの本を読みました。
うん、いいな。とびきりの美人ではないかもしれないが、聡明な面差しと
感じやすい表情が、くるくる入れ替わるような、魅力的な女の子。
その彼女と、「男装の麗人」という言葉が良く似合う、「別宮」ことベッキーさん
は、なかなかいいコンビだ。

「幻の橋」
昭和初期の、まだ戦争で破壊される前の東京。
戦争の黒雲も微かに見えながら、まだ日本を覆ってはいない。
その雰囲気を、さらりと教養を織り込んで巧みに書きながら、
ロマンスに落とす。とても北村さんらしいお話で、楽しみました。
この当時の図書館は有料で、しかも年齢制限もあるんですよね。
市民の図書館ではなく、選ばれしものの図書館。
英子のようなお嬢さんでも、滅多にいかないところなんやなあ。
そんなところにも、興味を惹かれてしまいますね。
うん、何というか、北村さんには、教養小説が似合う。
教養とは、一種の享楽能力である、というけれど、それをさらっと
楽しく感じさせることに、北村さんは長けてはります。
うっとうしい、高圧的な男をへこませるのに、漢詩がすっとでてくる
ベッキーさんが、かっこいい。彼女の強さが、何に裏打ちされているか、
よくわかりますね。自分の生き方と、教養が結びつく人は、かっこいいわ。
・・・ここで出あった爽やかな男性と英子ちゃんは、これから、何か繋がり
が出てくるのかな?

「想夫恋」
「あしなが おぢさん」と表記されている、ウェブスターの作品は、私も
少女の頃、大好きでした。手紙の形式を取った物語が楽しくて。
今から思うと、いろいろ考えさせられるテーマを含んだ作品やと
思いますが、あの頃は、友達の手紙を読むような気分で、読んでたなあ。
「若草物語」「赤毛のアン」、そして「アンネの日記」。
遠い外国の話なのに、なぜか気持ちがシンクロする、その不思議さ。
英子ちゃんもそれそ感じたんやろうな〜、と、なんだか微笑ましい。
・・・と、子ども扱いしていたら、ところが、どっこい。
おいおい、ちょっと駆け落ちには、まだ早いんじゃないですか〜!!と思いましたが。
(英子ちゃんではありません)
でも、昔のお嫁入りなら、15、6は、当たり前の年なんですよね・・。
昔は、大人になるのが、早かった・・。昨日話題にした漱石が亡くなったのは
私と、そ〜んなには変わらない年・・。寿命が長くなった分だけ、人は大人に
なれなくなったのかしら・・。
いわゆる、暗号もの。暗号はすぐ解けても、恋は終わらないのね。
あでやかな一篇でした。


「玻璃の天」
表題にもなっている、一篇。
館もの。ステンドグラスに、英子ちゃんの振袖、雪・・と、視覚効果の
高い、ちょっと古風な匂いのするお話に仕上がっています。
ベッキーさんの過去が、徐々に明らかになっていく。
男装の麗人には、悲しい過去がよく似合う。
傷つけられたことに対して、どんな姿勢で臨むか。
最近、そこに人としての生き方の分かれ道があるかな・・って思ったりします。
誰でも、生きてたら、いろんな事で、傷を受ける。
そこから、どうやって歩き出すか。
理不尽なことは、当たり前のように襲ってくる。
神様、なんて人がいるとしたら、それはきっととても意地悪な人なんじゃないの、
と思うこともたくさんある。
傷つけられたことを、同じ行為で返そうとする側と、そのループから抜け出して
生きていこうとする側。このお話は、その対比が一つのテーマかな、と
思うんですが・・。ベッキーさんの強さは、うらみのループに囚われることを拒む。
ベッキーさんを支えるものは、自分の生き方にたいする美学だと思う。
その美学を貫くことをよし、とする人間の方が、今少ないような気がします。
人がどう生きるのが美しいのか。そんなストレートなことを言うことも
バカにされかねない。この昔の時代の設定で、それを書くことで、そこも
さりげない主張になる。クラシックロマンの良さが、漂うお話だったと思います。

北村薫さんは、やはり存在の仕方がマイナーポエットです。
でも、それだからこその、良さがありますよね。
どのお話も、上品な味わいで、口に含むとふわっと溶ける上等なお菓子みたい。
まさに、おいしい一冊でした。ご馳走様。







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玻璃の天 北村薫 (ベッキーさんシリーズ2)
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2007/06/24 18:58
玻璃の天<北村薫>−(本:2007年81冊目)−
玻璃の天 出版社: 文藝春秋 (2007/04) ISBN-10: 4163258302 ...続きを見る
デコ親父はいつも減量中
2007/08/15 13:33

コメント(2件)

内 容 ニックネーム/日時
ようやく読みました(^^;)
ベッキーさんの正体がほぼ明らかになってきましたが、続編あるのかなぁ?ぜひ読みたいです。
北村さんは教養小説。なるほど〜。
そうとは思わせずに、そうなところがすごいですよね。
ただただその読書量と知識の豊富さに感動してました、私(^-^)
でもまさにその集大成な『詩歌の待ち伏せ』がずーっと読みかけで止まってます(爆)
kimi
2007/06/24 19:04
>kimiさん
この時代の設定。お嬢様。上流階級・・知性と教養。
北村さんにぴったりですよねえ・・。女心をくすぐりますわ。
ERI
2007/06/26 02:05

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