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zoom RSS 夕暮れのマグノリア 安東みきえ 講談社

<<   作成日時 : 2007/07/05 00:42   >>

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画像初めて人が死んでしまう存在なんだと知ったときの事を覚えている。
なぜ「死」を意識したのか覚えていないのだけれど、いつか一人ぼっちに
なっていなくなってしまうんだという事が寂しくて悲しくて、理由も言わずに
泣いていた覚えがある。私は小さいころ、非常に怖がりの泣き虫だったので
親も、「またか」みたいな感じでほっといてくれたなあ。
そういう、大切で、でも目に見えないから誰も説明してくれないことを、
自分で感じる瞬間。それは、答えのない答えを自分で探していく旅の
始まりなのかもしれない。

この物語の主人公の灯子は、中学一年生。
色つきのグロスが欲しかったり、クラスの中で浮かないように気を遣ったり、
気になる男の子にぎこちなくなったり、ごくごく当たり前の感覚の女の子。
でも、幼いころから、夕暮れ時に時々不思議なものを見る。

全部で6話ある物語には、六つの幻想が書き込まれている。
一つ一つのお話のエピソードは、日常の中にある、同じ年頃の女の子なら
切実に身に迫るものだと思う。
特に学校でのあれこれ・・。「空気が読めない」という言葉で、回り持ちで繰り返される
バッシングの部分は、読んでいて心に刺さるリアルさです。
トカゲを殺そうとしていた男子に、「やめて」と言い出せない自分。
それを、ちゃんと言った凛と、ほんとは心は同じなのに。
皆から浮きたくない。おかしい奴、って思われたくない。
・・夕暮れの不思議の中でみたその子の顔は、涙で濡れていた。
思わず、バスの停車ボタンを押して、凛と一緒に帰る灯子。
その二人の傘が、あたたかい・・。

そのほかの短編の幻想も、それぞれ不思議な色を湛えた美しさ。
初めの、リュグウノツカイが空から飛んでくる情景には心奪われました。
どうやら、灯子には、自分の幻想に人を引きずりこむ力があるらしい。
いや・・引きずりこむ、というよりも、その相手の深層心理を増幅してしまうというか。
美しいものも、醜いものも、増幅してしまうらしい。

「真実のハート」で、それぞれの嫉妬やウソを「いい子ぶってる」という言葉で
ごまかそうとした時に、見えた理科室から伸びる黒い影。
それは、まさにその時、その場にいた皆が心に抱えた闇の具現化ですね。
そして、「黒森の宵まつり」で、獅子と藤の精が寄り添う幻想は、誰かを愛しいと
思う心の映像化・・。なんて、言葉をあてはめることもできるんですが、
これはただ読んで、この心の色を感じ取ってほしい。
それが、この世界を感じることそのものだと思うから。
現実の色合いから少しずれた、鮮やかな色合いの心の風景に魅了されます。

幻想の形をとりながら、その実、全部が自分の心の中にちゃんと用意されて
いるものなんですよね、きっと。灯子は、それをちゃんと見ることを、おじちゃんに
プレゼントされた。でも、それは、きっと見ようとしなければ絶対見えないもの。
その感触と手触りが、微妙な筆遣いで描き出されています。
「見えないってことはいないってことにはならない。世界は見えているものだけで
できているんじゃないってことを」
だれもが、ひっそりと心に抱えているのに、口に出しては語らないこと。
その人生の一時期を過ぎれば、もう見えなくなってしまいそうな心情を
瑞々しく描いた佳編だと思います。
やっぱり、このYAというジャンルは好きだなあ。

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『しずかな日々』
『しずかな日々』 著 者: 椰月美智子 出版社: 講談社 発行月: 2006年 ...続きを見る
会社ともおの読書日記
2007/08/10 13:05

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