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help リーダーに追加 RSS 楽園 宮部みゆき 文藝春秋

<<   作成日時 : 2007/08/20 00:55   >>

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画像圧巻の上下巻。やっぱり、凄いですね、宮部みゆきさんは。
あれだけの分厚い上下巻、一気読みでした。全く筋運びが
だれることもなく、たくさんの登場人物が混同することもなく。
見事に物語が盛り上がり、クライマックスに向かって収束し、最後に
消えない余韻を残して、完結する。いつも宮部さんに進呈している言葉ですが
やはり彼女はミステリーの女王です。

「模倣犯」でおなじみの前畑滋子さんが、またこの物語の追求役です。
前回の事件で癒えない傷を負ってしまった彼女・・。やっとその傷にカサブタが
張り始めたときに、また出会ってしまった、大きな事件。
その発端は、12歳の少年が残した、一枚の絵。
交通事故で亡くなった彼が残したのは、床下に埋められた少女の死体の絵だった・・。


画像

この滋子に、とっぷりと感情移入してしまいました。
前回の「摸倣犯」の事件の痛手で、いったんは文章を書くことができなくなった彼女。
その彼女を突き動かしていくのは・・・そう。「知りたい」という欲望なんですよね。
彼女は、何が知りたいのか。言ってしまえば、人の心にぽっかりと空いている
底知れない洞のような部分・・その深い裂け目を覗き込み、そこに何があるのか、
それを知りたいと思う衝動です。
ひっそりと、慎ましく暮らしてきた夫婦が、なぜ自分の娘を殺して埋めなければ
ならなかったのか・・。その自分の娘を埋めた家で、ずっと暮らしてきた、その心の
ありようを。そして、そんな人の心を、人が隠している昏い部分を心に映してしまう
少年の感じたことを。どうしても知りたい・・。
その衝動に、どんどん私も飲み込まれ、止まらなくなり・・一気読み。
たどり着いた真実は、どうしようもなく残酷なものだった。
宮部さんの描き出す闇の深さには、いつも途方にくれてしまうようなやりきれなさが
漂う。人間とは、こんな一面を心に抱える存在なのだということを目の前に突きつけられる。
そのどうしようもない理不尽な洞を抱えるのが、わが子であったなら・・。
この苦しみは、人の親なら、決して他人事ではない。それがまた、恐ろしい。

ただ、宮部さんは、同時に、必ず光を描くのを忘れない。
この物語のタイトルが「楽園」であること。そこが切ないなあ・・。
敏子と等が肩を寄せ合って生きていた、そこに流れていた時間。
それこそが、楽園だった。人が毎日を、誠実に送るという小さな幸せがあるということ。
この重い、切ない物語の中で、そこだけがキラキラと煌いていることが
宮部さんの思いなのかもしれない。
子どもが親を選べないように、親も子どもを選べない。
敏子に等という宝石のような息子がいたことも、土井崎夫婦の娘の茜が、引き返せない
暗闇に飲み込まれてしまったことも・・。これは本当に、ただのめぐり合わせなのだ。
だから・・・この悲劇は、そのまま私達の悲劇であり、幸せでありえる。
そのことが、重く心に残った物語でした。
物語が照らす光に、「自分」を照らしてみること、その重みを、久々にとことん
感じさせてもらった。

宮部さんがこの物語を書いたのは、自分の夢かららしい。
「自分にはもう一人姉がいて、わたしの知らぬ間に殺害されており、その亡骸が
家の床下に埋められている」という夢。
土の下にずっと埋められていた茜。
でも、きっと土井崎夫婦は、心の中で、茜をずっと抱きしめていたに違いない。
宮部さんも、それを願って、この物語を書かれたのではないかしら。
そんな気がします・・。






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楽園(上・下) 宮部みゆき
カバー写真は小山泰介。装丁は鈴木正道。産経新聞連載。 「模倣犯」事件から9年。深く関わりダメージが残るフリーライター・前畑滋子。訪れた荻谷敏子の奇妙な依頼。…12歳で交通事故死した息子・等は、16年間隠されてきた& ...続きを見る
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楽園 宮部みゆき著。
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