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zoom RSS 木漏れ日に泳ぐ魚 恩田陸 中央公論新社

<<   作成日時 : 2007/08/25 00:55   >>

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画像恩田さんの、密室心理劇。
男と女。生活を共にしていた二人が過ごす、最後の夜。
お互いに、言いたいことを胸に抱えながら、それをどこで切り出そうか
どこで吐き出してしまうか、もやもやとしながら、空っぽの部屋で
会話が始まる・・。初めは普通の恋人同士かと思っていた二人は
二人だけの秘密を共有しているらしい。その秘密をナイフのように
ちらつかせながら進む、探り合い。その緊迫感を楽しむ趣向ですね。

読んでいると、手練れの役者二人が火花を散らす舞台を見ている
ような錯覚に襲われます。うん・・これ、本当に舞台にしたら面白いかも。
同じ部屋の中で、どんどん煮詰まっていく、空気の濃度とか。
少しずつ剥がれていく、日ごろ心を覆っている、鎧とか。
そんなものを、会話だけで成立させるような舞台。
読み終わったあとも、二人で闘いつくした、空虚感と一緒にやってくる
清清しさを感じて、やはりお上手だなあ、と思いました。
言葉を交わす、ということは不思議な作用を人に及ぼします。
隠れていた心の中の秘密が、ひょいっと顔を出したり・・。
それまで覆われていたものが、一気に目の前に広がったり、
失ったと思っていた記憶が、転がり落ちてきたりします。
二人で、とことん交わす会話から、それまで二人を縛ってきた秘密が
ボロボロと樹皮が剥げ落ちるように姿を表していく過程は、とてもスリリング。
読み手を飽きさせませんね。

ただ、そう・・劇みたい、なんですよね。
とっても面白いんだけれど、千裕と千明という登場人物を、どうも
誰かが演じているような感覚がずっとある。
恩田さんの物語は、そういう、現実感から体一つ分くらい離れているところが
魅力的なんですよね。ただ、男女の心理劇、というこの物語の題材が、その
雰囲気と、ちょっと馴染まない感じがあるかな〜・・。
いかにも美男美女が演じてそうな恋愛で、恋愛としては、私の遠くにありますねえ。
(遠くでも、ええやん、という声が聞えてきますが)
まあ、物語と自分との距離が、物語を読む、ということの一つなんで、あえて書いて
みました・・。

ほらねえ・・恩田さんの小説は好きなのに、やっぱり一つ何か言いたくなる(笑)
これも、もしかしたら恩田さんの小説が愛される所以かもしれませんね。


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木洩れ日に泳ぐ魚*恩田陸
☆☆☆☆・ 木洩れ日に泳ぐ魚恩田 陸 (2007/07)中央公論新社 この商品の詳細を見る 一組の男女が迎えた最後の夜。明らかにされなければならない、ある男の死。それはすべて、あの旅から始まった――。運命と記憶、愛と葛藤が絡& ...続きを見る
+++ こんな一冊 +++
2007/08/25 09:21
木洩れ日に泳ぐ魚 恩田陸
装画は佐々木悟郎。装幀は中央公論新社デザイン室。「婦人公論」2006年1月22日号〜2007年2月22日号連載に加筆。 高橋千浩と藤本千明が、数年間一緒に暮らしたアパートで迎えた最期の夜。二人とも、一年前に旅先で起 ...続きを見る
粋な提案
2007/09/06 13:02
明日も暑いらしいです…
明日も真夏日になる予定という天気予報をみてすっかりやる気をなくしている今日この頃です。 今日は予報どおり暑かったので、うちでゴロゴロしながら恩田陸さんの小説以外を読んでいました。 タイトルどおり小説以外のエッセイ集(主に本に関するもの)が多かったです。私.... ...続きを見る
熊五郎のうつ病日記
2007/09/15 20:35
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恩田陸『木洩れ日に泳ぐ魚』 中央公論新社 2007年7月25日発行 ...続きを見る
多趣味が趣味♪
2007/09/28 22:11
木洩れ日に泳ぐ魚<恩田陸>−(本:2007年116冊目)−
木洩れ日に泳ぐ魚 出版社: 中央公論新社 (2007/07) ISBN-10: 4120038513 ...続きを見る
デコ親父はいつも減量中
2007/10/17 00:37
木洩れ日に泳ぐ魚 恩田陸著。
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2007/11/24 17:08
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たぶんこれは、一枚の写真についての物語なのだろう… ...続きを見る
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2007/12/02 15:29
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僕らは明日になったら右と左に分かれて歩き出すことだろう。 ...続きを見る
ぱんどらの本箱
2007/12/04 16:31
木洩れ日に泳ぐ魚 恩田陸
木洩れ日に泳ぐ魚 ■やぎっちょ書評 久々の陸ちん。 ややや。最初からいきなりミステリーです。 ジャンル設定が難しい陸ちんの作品にしてはとてもわかりやすい。そしていきなり謎。導入が本当にうまいですよね。久々に読むと思い出しながら感心します。 ...続きを見る
"やぎっちょ"のベストブックde幸せ読書...
2008/04/08 23:01

コメント(6件)

内 容 ニックネーム/日時
舞台、いいかもしれませんね。
その場所にいながら、過ぎた時間の思い出と幾重にも仕舞い込まれた記憶の襞を探る旅をする。
「遠い、あまりにも遠い」という言葉が迫ってくるようです。
ふらっと
2007/08/25 09:26
>ふらっとさん
人の脳というのは、本来「忘れる」ということがないと、どこかで読んだ記憶が・・それだと人間がもたないので、「忘れる」という機能がついているんだとか。そう思うと、人の脳というものには、どれだけのものがしまいこまれているのか?呆然としますね。
ERI
2007/08/27 00:33
まさに舞台上で行われる二人芝居の体裁でしたね。
会話で膨らむイマジネーションの行方から目が離せなくて、一気に読めました。
次々と記憶が甦る場面がスリリングでした。
珍しく(?)腑に落ちる読後感ですっきりです。

「楽園」にもトラバさせていただきました。
藍色
2007/09/06 13:01
こんばんは♪
ホントに舞台みたいで楽しめました。
人数極小の物語って結構好きなんです。
2人芝居って絶対お互いの騙しあいというか、闘いっぽくなって面白いと思うんですよね〜。
>いかにも美男美女が演じてそうな恋愛で、恋愛としては、私の遠くにありますねえ。
というERIさんのご意見はもっともですけど(笑)
私も感情移入するというより、物語を外側から眺めている気分でした。
tomekiti
2007/09/28 22:20
>tomekitiさん
ほんと、「対決」という姿勢でしたね、この二人。
この一晩のドラマって、一生分くらい濃いやりとりですよね。観客の立場でいるのが、一番いいのかも(笑)
ERI
2007/09/30 00:12
ああ、確かに読んでいて、誰かが「演じてる」という感覚はありました!!
恩田さんって舞台とかそういうのになにか肩入れしてるんでしたっけ?そういえばそんな作品最近多いですよね。
じゃじゃまま
2007/11/24 17:11

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