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zoom RSS クレイ デイヴィッド・アーモンド 金原瑞人訳 河出書房新社

<<   作成日時 : 2007/09/10 00:11   >>

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画像デイヴィッド・アーモンドの作品は、いつも詩情と奇妙な味を湛えた
独特な味わいなんですが、この作品も、その両方を味わえる佳品に
なっています。自分達の街にやってきた、一人の少年。
なにやら異端の匂いを漂わせる、その少年は、やたらに粘土で
人の形を作るのが上手い・・。その少年に何故か惹かれていくデイビイは、
その少年・スティーブンの言うがままに、粘土で男の形を作って
命を吹き込む儀式を行う。途中でコワくなって逃げ出した次の朝・・。
デイビィは、いつも苛められていたモウルディという少年が死んだことを
知らされる。それは偶然なのか、それとも・・・?
恐怖に打ち震えるデイビィのところに、二人で作った粘土男(クレイ)が
やってくる・・・。

アーモンドの魅力は、一番に文章の美しさですね。
彼の手にかかると、石ころ一つ、ささやかな花一つが、揺らめきのような
空気感を伴って、読むものに迫ってきます。
それはただの物体ではなく、そこにあるべくして、在るもの。
他には代替できない、必然として、そこに在るもの・・・。
存在し、この世でめぐり合い、呼吸している全てが、結びついて
「命」という詩を紡ぎだしていることが、感じられる。
私は彼の小説に登場する「少年」が好きで。
この世界にたいする目線が、いい。
大人と子どもの間・・・矜持と恐れの間にある、人生で少しの間しかもてない目。
立ち向かわなければいけない人生が目の前に伸びていく、
その分岐点にいて、そっと周りを見渡す一瞬にしか見えないもの。
そんな瞬間に見える人生の不気味さや不条理が、少年の心のひだに
刻印する傷跡。若さの真っ只中にいるからこそ見える「死」の気配が
色濃く漂って、美しくも不気味です。

放課後の教室で、友達と「いけない」と思いながら熱中した心霊遊びの
感触を思い出しました。やっている間に、段々熱気とトランスを引き起こす
妙な興奮。
泥人形のクレイが歩き、しゃべるシーンは、妙に美しい。
これを、深層心理に眠る悪の存在・・・という図式に、ついあてはめて
みたくなる誘惑もあるんですが、どうもそれだけでもない。
このクレイは、あまり悪いことができなさそうなんですよ。
冷たいからだで、恐れるデイビィを抱きしめ、人を傷つけることも
しきれない。最後に魂が消えて、ただの泥に戻るシーンなど、哀れをさそう
感じです。「物」に心が宿る、というのは日本人には心安いことですが
キリスト教文化では、強い異端の匂いのすることでしょう。
それを、単純な勧善懲悪ですまざずに、存在の悲しみ、を漂わせて
描出するところに、アーモンドの詩情があると思います。
その存在の悲しみは、デイビィを散々驚かしたスティーブンにも色濃くて
デイビィという真っ直ぐな少年の魂に寄り添いたくて、彼はクレイを無理やり
作ったのではないか、と思えてしまう。
この展開を、一体どう収束させるのかな、と思って読んでいたのですが、
そんな少年の気持ちを背負ったクレイの残骸から、様々に命が芽吹いて
いくんですよね・・。日本の「古事記」の神話のように、「死」から様々な
豊穣が生まれてくる、その情景に心打たれました。
この、不条理の中に生まれる向日性が、YA作品です。
恐れと勇気を背負う、少年に読んでいただきたい作品でした。

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コメント(2件)

内 容 ニックネーム/日時
私もこの本を読みました。読み終わった後、なんだか命はすごく大切のものなのだと、改めて知らされたような気がしました。
らん☆
2007/11/19 22:18
>らん☆さん
コメントありがとうございます。
そうですよね。日常をただ過ごしているだけでは気づかないこと・・それを教えてくれる物語でした。レスが遅れてごめんなさいね。
ERI
2007/11/24 01:11

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