12歳。思春期の入り口。女の子は、男子より早く大人に踏み込んでしまう。男子ほど急激ではないけど、その入り口に立つときの 恐れにも似た戸惑いは、よく覚えている。 主人公の朔は、12歳。舞踏を生きがいにしている父親と二人暮らしの 感受性の強い女の子。父親の没頭している、おそらく前衛的な「舞踏」の 世界を理解したり、「ノルウェイの森」を読み、その勘所がわかったりする 大人びた心を持っている。う〜ん・・でも、これはねえ。経験的に言うと、その 年齢で、そんなものがわかるというのは、あまり幸せじゃない。 もちろん芸術的な感性を持ち合わせているということなんだけれども、 この物語に描かれる、彼女が感じている風景は「孤独」だ。 自分をとことん愛してくれる人が・・いない。母親は出て行ったきり、音沙汰がない。 父親も、愛してはくれているのだが、もう彼には「舞踏」という一生の恋人がいる。 頭のいい朔は、そんなことも全て飲み込んで、毎日をやりすごしている。 回りの幼い同級生たちや、学校という体質にうんざりしながらも、なんとか そこに自分を置こうとは、しているのだ。その全てを抑えた彼女の気持ちが 思春期という、性の揺らぎを迎えて、抑え切れない蒸気のようにゆらめく。 その陽炎のような目に見えない感情を、島本さんは冷静な筆で描く・・。 同級生の男の子へのほのかな思いと、年上の男性の強さに惹かれる思い。 そのどちらもわかるだけに、そんな彼女が落ちてしまった罠の残酷さには 胸がふさがれるような苦しみを覚えてしまった。女で・・・この屈辱を、許せる人は いないはず。朔は、思春期の入り口で、こんな厳しさに遭遇してしまった。 この傷は、人しての誇りを踏みにじられた傷。それがどんなに赤い血を流すか 欲望にかられた人間にはわかりはしないだろう・・・。そこから、自分で立ち直ろうと する朔が、いじらしくて抱きしめたくて、そして悲しい。女であるという性の悲しみが そこに透けて見えるようだ。こういう悲しみ・・屈辱は、女であれば誰もまた感じる 場面がある。その痛みに溜息しながら、こうして物語にすることで、その痛みを 鳥のように羽ばたかせて、希望に変えようとする強さも感じた。 しかし・・やはり、こういうことは・・許せない。どうしても許せない・・。 一番許せないのは、朔に「ここに来たお前が悪い」と思わせようとしていること。 少女の孤独に付け込んだこと・・。この論理のすり替えに苦しむ少女達が どれほどいることか・・。 この物語を読んでいるときに「怖い絵」(中野京子・朝日出版社)を読んでいて そこにムンクの「思春期」が紹介されてたんですよ。それを見て、「ああ・・これだわ」と この物語とシンクロした。見開いた目。体を固くして、「何か」におびえている少女。 体の後ろに伸びている黒い影・・・。それは、性という自分を自分でなくするものへの 恐怖に見える。瑞々しい感性を持つ朔が、これから生きていく人生には、悲しみが たくさん待ち受けているだろう。しかし、だからこそ見える風景も、感じる幸せも あると、願うような気持ちで思ってしまう・・。闇夜は、必ず明けるから。 おいしい本箱 http://www.oishiihonbako.jp/index_f.php |
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あなたの呼吸が止まるまで 島本理生
装幀は帆足英里子。プロデューサーは栗本知樹。初出「新潮」2007年3月号。 語り手の野宮朔は舞踏家の父と暮らす12歳の少女。鹿山さんの強さに憧れ、田島くんが気になる学校生活。父親や舞踏仲間の変わってる大人たち、瑞江 ...続きを見る |
粋な提案 2007/10/10 12:02 |
あなたの呼吸が止まるまで 島本理生
あなたの呼吸が止まるまで ■やぎっちょ書評 島本理生さん最新刊です。良かったですよぉ。 説明文の丁寧な書き方が全体の雰囲気をうまく作ってくれていました。島本さんとしてはなかなか新しい?・・・でも彼女らしい雰囲気が出ていた気がします。 「大きな熊が〜」から.... ...続きを見る |
"やぎっちょ"のベストブックde幸せ読書... 2007/10/15 16:42 |
「あなたの呼吸が止まるまで」島本理生
「あなたの呼吸が止まるまで」島本理生(2007)☆☆☆★★ ※[913]、国内、現代、小説、少女、思春期、父子家庭、女流作家 ...続きを見る |
図書館で本を借りよう!〜小説・物語〜 2007/11/15 20:25 |
| 内 容 | ニックネーム/日時 |
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ERIさん |
やぎっちょ 2007/10/15 16:51 |
いろいろありますよね。 |
アルゼンチン人にあるぜちんちん 2007/12/18 16:04 |
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