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zoom RSS タルト・タタンの夢 近藤史恵 東京創元社

<<   作成日時 : 2008/02/06 01:04   >>

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画像美味しい料理にうっとりしながら、同時に謎解きの楽しさも
楽しめる。最近、こういうグルメミステリーとも言うべき物語を
よく見かけます。それだけに、二番煎じではない、自分の色を
出すのは、なかなか大変なことかもしれません。
単なるウンチクものになっても詰まらないですしね。
近藤さんは、さすがにお上手です。七編ある物語、一つだけ・・と
思って読み始めたら、とまらず。メニュー仕立てになっている
短編を、一つ残らずお腹に収めてしまいました。

たった4人で切り回す小さなビストロで紡がれる、小さな人間の物語。
様々なお客さんが訪れるその場所で、交わされる何気ない会話。
そこから生まれるドラマを、近藤さんは丁寧に描き出します。
こういう短編は、思うより芸がいる。

お腹にもたれてはいけない。
下品になってもいけない。
読み終わったあと、いい一皿を食べたあとのようなカタルシスを
感じさせたい。

食事、というのは、生きる喜びに直接繋がるものだから、そこから
生まれる物語は、やはり食べてよかったな、と思うものにしたい・・・。
読んでいて、そんな近藤さんの願いが、ひっそりと胸に届くような
細やかな気配りを感じました。この、「パ・マル」という小さな店には、
深い奥行きがありますね。
(「パ・マル」というのは、フランス語で「悪くない」という意味。
フランス人は、いいものを褒めるのに、この「パ・マル」
をよく使います。直接的なものいいでないところが、ひねりを効かせる
フランス人っぽいなといつも思います)
それがよくわかるのが「ガレット・デ・ロワの秘密」という短編。
繊細な二枚目である志村さんに、飛び切りの美人で、シャンソンの歌手で
ある奥さんがいる。この奥さんとのフランスでのエピソードがね、いいんですよ。
すべてが語られるわけではない、この二人のロマンスが、いいワインの香りの
ように、ふっと立ち上ります。
こういう、「人」を描き出すイメージの喚起力というのは、なかなか狙って
できるものではありません。
それぞれの登場人物が、「生きている」みたいですもん。

無愛想で、武士を思わせる渋い男前の三舟シェフも
男の子みたいな髪をして俳句が趣味のソムリエの金子さんも、それぞれの
顔や、立ち居振る舞いが、くっきり浮かびますから。
それぞれが、それぞれの人生を持ち寄って、この小さなビストロにいる・・。
それが、生き生きと感じられるのが、この物語の一番の魅力ですね。

近藤さんは、いつもそんなに派手な物語を書くことはされない。
でも、とても細やかで、「人」の心をしみじみと感じさせます。
読めば読むほど、滋味のように、その味わいが効いてくる人。
このシリーズ、もっともっと読みたい・・。
近藤さんの持ち味が、とてもよく発揮される設定のシリーズだと思います。
楽しみだなあ・・・。

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『タルト・タタンの夢』 近藤史恵
タルト・タタンの夢 (創元クライム・クラブ)posted with amazle ...続きを見る
Roko's Favorite Thin...
2008/02/09 22:12
タルト・タタンの夢 近藤史恵
ブックデザインは緒方修一。カバーイラスト・デザインは谷山彩子、本山木犀。初出「ミステリーズ!」。創元クライム・クラブ。連作短編集。 下町の小さなフレンチ・レストラン、ビストロ・パ・マル(悪くない)。風変わりな三舟 ...続きを見る
粋な提案
2008/02/20 02:23

コメント(3件)

内 容 ニックネーム/日時
ERIさん☆こんばんは
お料理もステキでしたけど、シェフが作ってくれるヴァン・ショーが心も暖まりそうで良かったですよね。
これってシリーズ化しないかなぁって思ってます。
Roko
2008/02/09 22:17
>Rokoさん
こんばんは!!ヴァン・ショーはぜひ一度飲んでみたいですね〜。今年は寒いので、三舟シェフが作ってくれるあったかいお料理がことさら美味しそうに思えて、お腹がすいて困りました(笑)
ERI
2008/02/10 19:10
こんばんは。
好感が持てるあたたかいミステリでしたね。書かれている近藤さんの気配り、「人」を描き出すイメージの喚起力に素直に酔いしれた一冊でした。食べ物の説明、おいしそうで、ついよだれが(恥)。
年度末なのでかなりお忙しいはずで、うかがうのにちょっと迷いました…。いくつか合う記事が増えてきて、以前の「カレンダーボーイ」「仏果〜」のトラックバックがまだでしたので、今回はこの記事のみトラックバックさせていただきました。お手を煩わせると思いますが、よろしくお願いします。
藍色
2008/02/20 02:23

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