おいしい本箱Diary

アクセスカウンタ

help リーダーに追加 RSS ムンク展 兵庫県立美術館

<<   作成日時 : 2008/03/20 20:57   >>

トラックバック 1 / コメント 2

画像息子が見たい、というので、出かけたついでに
ムンク展に行ってきました。
ここは、車でないと行きにくいんですよね、家からだと。
生憎の雨模様でしたが、たくさんの人が見にきて
おられました。

オスロ市立ムンク美術館の協力ということで
たくさん作品が・・。
「オスロ市立ムンク美術館の所蔵作品を中心に全108点で
たどるムンクの装飾的プロジェクト」と題される展覧会。
見たことのない作品も多く、なかなか新鮮。

ムンクというと「叫び」「マドンナ」「病める子供」などが有名で
どちらかというと、不安と孤独の気配が印象に強い作家。
私も、そういう印象が強かったのだが、今日、この作品展を
見て感じたのは、ムンクの詩情と、命に対する輝く眼差しだった。


絶望、不安、孤独・・。繰り返されるメランコリックなイメージには
頻繁にシンボリックな「女」が登場する。
髪が伸び、男に巻きつく女。挑発的に誘う女。自らの衰えをみつめる女。
女はいつも命そのもののように、強く、美しく、逞しい。
対して、男は常に青ざめ、ぼんやりと立ち尽くし、常に「従」の存在。
そのもっともたるものが「吸血鬼」に描かれる男女で、
男の首筋にキスをする女性の、白くて豊かな腕は、青ざめた男を抱く
母性の塊のように思えてしまう。
これだけ、人間の不安や弱さと向き合った作家は、珍しいのではないか。
繰り返されるモチーフ、「マドンナ」の陶酔の表情の女と、その片隅に
うずくまる胎児を見ながら、そう思ったりした。
海と、女が同時に現れるモチーフが多いのも、
命を生み出す無限の存在と、やはり命のを生み出す存在である「女」
が強くリンクしているように思う。
何か大きなものに抱かれたい、という憧れを常にもっていたのかもしれない。
ムンクと対するとき、人は、そのムンクの不安に、自分が日ごろ隠している
やはり、不安や孤独、何かに抱かれたいと思う願いのような
気持ちを、心置きなく乗せることができる。
それが、人気の一つの要因なんだろうと思う。

そんないつものイメージと共に、私が今回新鮮に思ったのは
「星月夜」「声/夏の夜」や、「人魚」に漂う詩情と、
「リンデ・フリーズ」の連作に
見られる、少女達を描いた命の輝きだった。
特に「星月夜」に漂う、透明な詩情は、美しい。
「人」のいないモチーフ、(影が画面手前に見えるが)
空という大きなものに対峙した時の素直な憧れが、
静かに伝わる一枚だと思う。
そして、これも初めてみたのだが「赤い蔦」。
これが、なかなかユーモラスで心惹かれた。
赤い蔦のからまる四角い家をバックにこっちを見ている男が、
「ちょっと、気持ち悪いでしょ、この家」と語りかけているような感じ。
あら、こんな感じもあるのね、と思いながら、たどっていくと
現れる「リンデ・フリーズ」の連作は、華やかな色彩と
鮮やかさに溢れた作品群だった。
もっとも、これは子供の部屋のために依頼されたにも関わらず
ムンクが、抱き合う男女を書いたために、突き返されてしまった
らしいが。果実をもぐ少女の後姿に、今輝く命への賛歌が感じ取れる作品たち。
モチーフと自分というものが、深く手を握り合っていたはじめの頃の作品とは
違って、そこには、対象への心の余裕が感じ取れる。
作品として、心が吸い寄せられる、とまではいかない出来だが、
作品の出来不出来よりも、私にはその距離感の変化が面白かった。
こういう見方は、美術作品に対してどうなのかはわからないのだが、
そこには、確かに一人の「ムンク」という人間のたどったドラマがあった。

そのドラマの最後に飾られていた「太陽」。
もう、ただひたすら無垢な、その光の眩しさに、私は目がくらむような
気持ちがした。長い心の旅をたどり、たどりついた、ムンクの
感じた光は、どこまでもキラキラと輝いて、生きている誇らしさに
溢れている。
元来、ムンクは、こういう伸びやかさと、突き抜けた明るさを持つ人だったのかも
しれない。そんな一面を教えてもらえて、面白かった企画展だったと思う。
あまり装飾的とは思えなかったムンクだが、彼が芸術というものに
対して持っていた、敬虔な気持ちを感じ取ることができた。
3月30日まで、兵庫県立美術館で開催されています。

おいしい本箱 http://www.oishiihonbako.jp/index_f.php

設定テーマ

関連テーマ 一覧

月別リンク

トラックバック(1件)

タイトル (本文) ブログ名/日時
国立西洋美術館で「ムンク展」を観る!
上野・国立西洋美術館「ムンク展」 ...続きを見る
とんとん・にっき
2008/05/15 19:28

トラックバック用URL help


自分のブログにトラックバック記事作成(会員用) help

タイトル
本 文

コメント(2件)

内 容 ニックネーム/日時
ムンクと言えば「叫び」の絵と晩年の橋の上の人々(こう言うタイトルでしたっけ?)
それしか知らないですけど。
晩年は若いときの、バイタリテーが無いと言われてます。
北里さんのブログでここを知ったんですけど・・
北里さん3月以降書き込みされたいません。
プライベートがお忙しくて更新できてないのなら
よろしいんですけど。
ミント
2008/05/10 15:07
>ミントさん
ブログは、毎日書いていると、時々言葉を綴るのが、辛くなるというか・・苦しくなってしまうときもあります。もちろん、お忙しいのかもしれませんしね。また、戻ってこられる時もあるでしょうから、あまり心配なさらずに待っておられたら良いんではないか、と思いますよ。
ERI
2008/05/10 23:25

コメントする help

ニックネーム
本 文