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zoom RSS 変愛小説集 岸本佐知子編訳 講談社

<<   作成日時 : 2008/06/20 01:51   >>

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画像「愛」って、何?
なんて、からかいがちによく言いますが。
何かを愛する・・囚われてしまうほど強く愛する、っていうのは
ほんとに傍から見たら、ある意味滑稽なことでもありますよね。
なぜ、その人を、もしくはそれを好きなのか、魅かれてしまうのか。
本人にとっては抜き差しならない思いであればあるだけ、
人には理解してもらえなかったり。
この短編集は、そんな、「愛」の、へんてこりんで、奇妙な一面を
描き出した物語を集めたもの。訳しているのは、これまた奇妙な味の
エッセイを書かれる岸本さん、ということで、面白そう、という嗅覚が
動いたんですが、ばっちりその勘は当たってました(笑)

この短編たちに漂う奇妙さは、気持ちの過剰さ、その有り余る
情熱や、愛するエネルギーの激しさからくるものが多い。
「五月」に描写されている、木蓮の木を愛してしまう瞬間の、
心に膨れ上がる「美」への愛。
「ブルー・ヨーデル」の、自分の元を去って飛行船に乗った女を
ひたすら車で追い続ける、抑制のきなかい執着。
「リアル・ドール」に描かれる、人形に対するフェチな、歪んだ愛も
まさに、くらっとするほどの過剰さで、テンションの下がっている時に読むと
飲み込むのに苦労するほどの、お腹いっぱいぶりである。
でも、悲しいことに、「愛」って、激しくなればなるほど一方的で
空回りだったりする。
「僕らが天王星に着くころ」では、体が足からどんどん宇宙服になっていき、
全部が宇宙服になってしまったら、そのまま空に旅立ってしまう、
という妙な病気にかかる設定だが、その病気にかかった愛する彼女を
男がどれだけ引きとめようとしても、その努力は全て無駄に終わる。
しかも、その努力を、当の彼女も、そんなに有難がっていないという悲しさ。
木に恋しても、その木蓮の生えている庭に通うだけでも、変人扱いだし。

その他、お母さんに対する恋愛のススメだったり、草刈のバイトに来ている
男の子を、くるっと飲み込んでしまう奥さんの話だったり、どの短編も、
「普通」ではない設定と、奇妙なエロスの漂う作品ばかりなんだけれども、
その設定のおかしさゆえに、どれも「恋愛」というものの本質をかえって
浮き立たせているようなところがある。
だから、それぞれのお話に「おかしいって」と突っ込みながら、同時に
胸の中に、ひやっとした真実のナイフが刺さる気配があるんですよね。
それが、痛かったり、ちょっと気持ちよかったり、切なかったり、痛快だったり。
にやっとしたり、そうそう、と思ったり、自分のイタさに思い当たって
参ったな〜、と思ったりできるのが、面白い。
ただし、ユーモア感覚が乏しい人が読むと、ただのグロテスクなお話の
集まり、としか思えないかもしれません。
一歩間違えると、悪趣味になるぎりぎりのところで、ユーモアや
ペーソスになっている、玄人好みの選択。
そのあたりの微妙な匙加減が、岸本さんらしい選択で、絶妙ですね。

「愛」というものの持つグロテスクな側面と、グロテスクになってしまうほどの
切なさと、可笑しみ。こんなに自分の気持ちに振り回されてしまう
「人間」ってねえ・・なんだろう、なんて思ってしまう。
もちろん、クスっと笑いながら、「アホやねえ」で終わらせてもよし、
そこに「愛」の深遠を見るもよし(笑)
いろんな風に楽しめると思います。
愛を遍歴してきた大人に・・。ひゃ〜、遍歴なんてしてない私が、言ってしまったわ(爆)
すんません。

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