何気なく手に取った本なのですがこれが、思いがけず良かった。 時間を忘れて、必死で読む本って、いいですねえ・・。 舞台はアラビア半島。 昔、とっぷりはまった、千一夜物語を思い出させる物語なんですが 一人の王子の数奇な人生を通して、自分と闘う力、運命と闘う意味を 考えさせる冒険の物語になっています。 砂漠の王国、キンダの王子・ワリードは、ジン(精霊)に祝福されたと 自他ともに認める、美しい才能に溢れた王子だった。 その彼が一番の情熱を燃やしたのが「詩」を作ること。 カスィーダという、教養と技術を要するその詩のコンクールで一番を取り 金文字で神殿の前に垂れ幕として掲げられる、という栄誉を 得るのが、彼の最高の夢であり、自分ではそれがかなえられると思って いたのだ。しかし、そのコンクールに参加する前の、自国内のコンクールで 王子は、その自信を粉々に砕かれてしまう。 一人の貧しい絨毯織りの詩が、観衆の賞賛をさらってしまったから。 その絨毯織りの男・ハンマードの詩には、人の心を打つ真実がこもっていたからである。 嫉妬にかられた王子は、ハンマードに国史編纂という無理難題を押し付け、 家族と引き離す。何とかそれをやり遂げた彼に、今度は「人類の歴史を全て 織り込んだ絨毯が欲しい」と言いつける。 絶望の果てに、今度はその絨毯にとり付かれ、完成させた瞬間、ハンマードは 死んでしまう。過去と未来の全てを飲み込んだ絨毯を目にした王子は 自分の犯した罪の恐ろしさに耐えかねて、王国を捨て、放浪を始める・・。 「詩」というもの、芸術が人の心を打つ「何か」。 どれだけ美しく形式を整えてもそれだけでは、人々の心を 捉えることはできない。 王子は、国を捨ててから、ただ一人の男として、生きていくことを学ぶ。 自分の手で家畜を育て、なんの飾りもない自分で人と信頼を結び、 守りたいたった一人の女と出会う・・。 そして、知る。自分の人生は、自分の力一つで成し遂げることのみが 実りをもたらす、ということを・・・。 運命に翻弄され、自分の罪にいつも心さいなまれつつも、 ワリードは、罪の意識に目覚めてから、そこから逃げることを しなかった。 そこが、良かった。逃げないことって、難しい。 自分に負い目があればあるほど、難しいと思う。 「見ない」ほうが、簡単だから・・。 嫉妬に駆られて自分を見失ったワリード。 人は、誰でも罪を犯すことがある・・。 でも、またそこから歩き出してもいいんだ、というメッセージが、力強い。 よく聞け。われわれなみな、自分のすることに責任がある。よい行いにも これは父王がワリードにいう言葉ですが、この物語の芯は、ここに詰まってますね。 その時には本当には理解できなかった言葉が、ワリードの心に届くまでの彼の苦労が 読み応えがあります。 自分一つの才覚で生き抜いていく人生の面白さ。 砂漠の匂いのするような、風景描写も楽しい。 夏休み、親子で楽しめる一冊だと思います。 おいしい本箱 http://www.oishiihonbako.jp/index_f.php |
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『漂泊の王の伝説』
『漂泊の王の伝説』著 者: ラウラ・ガジェゴ・ガルシア 松下直弘 訳 出版社: ...続きを見る |
会社ともおの読書日記 2008/07/21 11:59 |
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