久々に、非常に好みの作家に出会ってしまった。空中楼閣の楽しみ。 12の短編が収録されています。 非常に精緻な、磨きこまれた小さな世界。 こういう物語が読みたかった・・と、 どの短編も、むさぼるように読んでしまいました(笑) 言葉の紡ぎ出す魔法。職人芸のようなプロのお仕事です。 うっとり・・。私が知らなかっただけなんでしょうが、 こういう作家に出会うと、いやー、本を読んでてよかったな、 と思いますわ。 短編のタイトルをあげてみましょうか。 「ナイフ投げ師」 「ある訪問」 「夜の姉妹団」 「出口」 「空飛ぶ絨毯」 「新自動機械人形劇場」 「月の光」 「協会の夢」 「気球飛行、1870年」 「パラダイス・パーク」 「カスパー・ハウザーは語る」 「私たちの町の地下室の下」 ね?匂いますよね?ひっそりと息をしながら読まれるのを 待ってる、物語たちの発散する空気が。 とっても言葉のセンスがいい。これは、訳されている柴田さんの力でもありますが。 表題になっている「ナイフ投げ師」は、「ナイフ投げ」という、ありふれた芸を、 研ぎ澄ますように追求して「芸術」の域に極めた男のステージが再現されます。 ナイフ・・刃物という存在が持っているあやうさと、それに魅了される人間の 心性が、ステージの上で、息詰まるように進んでいく。 志賀直哉の『剃刀』という短編も、刃物が引き起こす誘惑にも似た衝動が 描かれていましたが、ミルハウザーの、この芸は「衝動」ではないのです。 それは、一つの芸・・一つの欲求を、自分の意思と自己表現の飽くなき追及で 追い求めた、とことんまで人間が何かを追い詰めようとした、結果。 「種において完璧なものは、種を越える」といいますが、その過剰さはある一点を越えて 「人」としての範疇を越えようとする。身の丈15cmの自動人形が、精緻の限りを 尽くしたあげく、一人の天才によって「作り物」、「人間の摸倣」から、人形としての 自己意識を持った、切ない「生」を与えられてしまうように。 『協会の夢』『パラダイス・パーク』の、蟻の巣ほどの空間に、これでもか、 これでもか、と詰め込まれた官能と欲望の坩堝。ミルハウザーの魔法の筆先から 生まれる混沌に身を任せる、隠微な楽しみ。それは滅亡の予感に裏打ちされて ますます妖しく輝いている。どこまでも果てしなく突き上げる欲望の危険さ。 絨毯に乗って、空高く舞い上がる少年が、どこで一線を越えて、イカロスのように きりきりと舞い落ちるのか・・それを知りたいような、知りたくないような、 胸焦がれる一瞬。人の胸のうちに潜んでいる果てしないものを追いかける、業のようなものを、 ミルハウザーは、卓越したイメージと文章力であぶりだしてみせる。 ・・かと思えば、『月の光』『ある訪問』『夜の姉妹団』のように、静謐さを、細身のナイフで 切り分けるような短編もある。月光が照らす蜘蛛の糸のような、玲瓏とした世界に酔えます。 ミルハウザーの紡ぐ美は、どこかグロテスクさを孕んでいて、そこもすっかり好み。 この世界は・・ちょっと病み付きになりそうです。 『私たちの町の地下室の下』には、普通の町の地下に、どこまでも 迷い込める迷路のような通路が張り巡らされているというお話。 その町の住人は、他の町の人から、どんなに批判されても、その地下に 迷い込むことがやめられない。その通路が何なのか、どうして存在するのか、 わからないままに、町のそこかしこに開いている口から、どうしても その中に迷い込む時間を心が欲してしまう。 どうやら、私も、ミルハウザーという地下迷路を見つけてしまったようで。 柴田さんも、極め付きのミルハウザー病らしいですが、その気持ち、よ〜くわかります。 私の好きな作家は、大概そうなんですが、寡作です。 どうやら、彼もその匂いが(笑)大事に読まないとね。 おいしい本箱 http://www.oishiihonbako.jp/index_f.php |
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ナイフ投げ師 スティーヴン・ミルハウザー
ナイフ投げ師 スティーヴン・ミルハウザー 白水社12の短編集 ナイフ投げ師 ある ...続きを見る |
ナカムラのおばちゃんの読んだん 2008/10/21 22:02 |
| 内 容 | ニックネーム/日時 |
|---|---|
こんばんは |
ナカムラのおばちゃん 2008/10/21 22:08 |
>ナカムラのおばちゃん |
ERI 2008/10/22 20:53 |
はじめまして。いつも楽しみに拝見させていただいております☆ |
ろっか 2008/11/25 22:27 |
>ろっかさん |
ERI 2008/11/27 00:58 |
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