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zoom RSS ばかもの  絲山秋子  新潮社

<<   作成日時 : 2008/10/28 21:11   >>

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画像「ばかもの」というタイトルが、印象的でとても気になってました。ほんとに、ばかものの話なんですが。読後・・なんだか、泣けてしまって困りましたよ。ばかものである、人間がなんだか愛しくて。絶望の果てに、人を愛しいと思わせてくれる絲山さんが好きですね。

主人公のヒデが、堕ちていくんです。その堕ち方が、実にリアルで胸に迫ります。アルコールという魔物にハマっていくヒデの狂気が自分の内側にもある、そんな怖さです。この、ヒデが堕ちていく泥沼は、そんなに遠くにあるわけではなくふと見ると、自分の足元にもぽっかり穴を開けて待ってるかもしれない。狂気、というものの恐ろしさを一番真に迫って描くことができたのは、ゴヤという画家だと思っているんですが、彼にとって、狂気というものは、いつも自分の外側にあるものではなかったように思います。自分の子どもを喰らいながら、おびえた目をしていたサトゥルヌス。彼は、その絵を、自分の家の壁に描いた。ゴヤのような画家は、自分の中にある、得体の知れない何かをそうして作品の中に、昇華することができる。しかし、ヒデのように、いつも、「行き場のない思い」を、どうしようもなく抱えているだけの人間が、その想いだけに囚われてしまったら・・。こうして、ずぶずぶと泥沼にはまってしまうのかもしれません。

このヒデの堕ちていく過程に、妙な親近感を覚えるのはなんでやろうかな・・と、ずっと考えてたんですが。そうやわ・・私の活字に対する欲どしさも、ここに通じるものがあるんやわ、と、ふと気がついたんですね。欲どしい・・っていうのは、方言ですか。欲深い、の最上級です。ほんっと、意地期汚いですわ。とにかく、自分の周りに、到底読みきれないほどの本を積んどかないと、不安で仕方がない。大体、目が弱ってきて、若いころほど本が読めなくなってるのに自分でその事実を認めたくないもんやから、「無理!」と自分に突っ込みながらも、大長編の本を手元におきたがる。家事や庭仕事をなるべくサボって、本を読もうとする。忙しい時に限って、本が読みたくなり、「ちょっとだけ」と思いながら何時間も経ってて、びっくりする。ただ、アルコールと違って、本を読む、という行為は、人を傷つけないし、まあ・・人畜無害なので、そんなに人から非難されることはないんですが。ただ、母にはよく怒られました。灯りを消したあとで、布団の中に懐中電灯を持ち込んで本を読んでたり、歩きながら本を読むので、電柱にぶつかってこぶをこしらえたり、本に夢中になって、習い事の時間を忘れたり、歯止めの聞かない子どもの時分には、ほんとにおばかさんな事を、たくさんしたもんですから(汗)だから、本をたくさん読むことを、人に褒められたりすると、ちょっと面映いというか、すんません、という気分になるんですね・・。本を読む、という事は、私には快楽やから。快楽を褒められるとほんと、恥ずかしい感じが致します。ヒデがアルコールを、自分の中の穴の中に流し込んでいたように、私は、そこに、活字をとめどなく詰め込んでいるだけなのかもしれません。でも、こう考えてみると、私は、本に出会えて幸せだったんやな、と思いますね。先ほども書いたように、本を読むということは、基本、自分だけの楽しみで、人を傷つけるということはないですから。うん、ほんとにその事には、感謝しなあきません。アル中と、活字中毒を一緒にしたらあきませんか。でも、淫する、ということにおいては、何か共通するものがあるんですよねえ・・。

そんなヒデを、唯一満たすことのできる女が、額子という女。なぜこの男じゃないとダメなのか、なぜ、この女だけが自分を満たすことができるのか。それって、言葉で説明できる事ではなくて。その言葉で説明できないところを、肉で感じるように描くことができる絲山さんの筆力が見事やな、と思います。そんな人に出会える、ということは、あまり、そのへんに転がってることではない。出会っていても、額子とヒデのように、いったん道が離れてしまうこともあるし、そのまま一生が終わってしまうこともあるだろう。お互い大事なものを手ひどく失ったあとに、他の誰にもわからない、多分理解されないだろう、たった一つの大切なものに気づいた。掴むことができた。それは、誰にもわからない、ヒデだけの確信だから、「想像上の人物」として、ヒデにしか見えないのだろう。暗い夜の向こうから、光が差し込むようなラストに感動でした。人が人と出会うこと、絆を結ぶこと、人生の価値観。いろんな事を、肌で感じさせてくれるような物語。絲山さんのさりげない文章の強さを感じて、心が軋みました。

このレビューを書くのに、えらい苦労してしまった。絲山さんの小説を読むと、何かいいたくなるのに、文章にするのはとっても難しい。でも、スルーできない(笑)困ったもんだ。

おいしい本箱 http://www.oishiihonbako.jp/index_f.php







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