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zoom RSS 蟋蟀 栗田有起 筑摩書房

<<   作成日時 : 2008/10/10 20:20   >>

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画像栗田さんの本を読むのは久しぶり。
でも、読み出すと、ああ、この感触、と
思い出せる。ゆるいような、とぼけたような、
ちょっと眠いような、もやっとした感触。
昼寝から起きたときみたい。
まだ頭は半分眠りの中にいて、
体だけ起き上がっている。
さっき見た夢がぼんやり前頭葉あたりに
漂ってるんだけど、はっきりとはしない。
午後の、少し傾きかけた陽射しの中で
夢と現の間にいる感じ・・。
見たあと、薄ぼんやりと寂しくて目覚めてしまってよかったような、
ちょっと残念なような、そんな夢。栗田さんだけの世界ですね、これは。

夢の中って、現実の中に、一点どうしてもヘンな設定が
混じってることありますよね。
私がこないだ見た夢は、どこかの綺麗なオフィスで働いてるにも
関わらず、自分が、どう見てもサティで上下1050円で買った
パジャマを着てるというものでした。
横じまの、ぼや〜っとした、色気もなんにもないパジャマです。
自分でも、その事が気になってるんですが、まわりは見事にスルーで
それがかえって居心地悪い。見て見ぬふりをしてくれてるのかしらん。
だとすると、ここにいる自分は、そんなに人に気を使わせてるという事なのか。
着替えたい・・でも、着替えがどこにあるのかもわからないし。
何だか忙しくてそのチャンスもない。悩ましかったですねえ。
ここに納められている短編も、そのあたりに転がっていそうな普通の風景の中に
一点夢の中のような、幻想が混じっています。その混じり方が、
いかにも栗田さんらしい。
その幻想は、全部生き物の形をしているんですが、
無意識の霧の中から、ふうっと形を成して現れるような、
そんな生き物なんですよね・・。
その無意識の底は、いつか私たちが長い旅をした後にたどりつく場所かも
しれないし、まだ生まれる前に、なんとなく漂っていた場所かもしれない。
そう思えるような独特の気配が、以前より深くなっている気がします。
栗田さんは、いい鉱脈を掘り当てられたみたい。


付き合ってる美女が、いきなりバーで側転をしてしまう「あほろーとる」。
失恋して死のうと思っているのに、自分を嫁と思ってる猿が現れて
「あいのうおいの嫁んどなんどう」とか言われてしまう「さるのこしかけ」。
この2篇もとぼけた味で良かったけれど、表題になっている「蟋蟀」と
最後の「ユニコーン」が好きだなあ。
人は、ゆらゆらと不安定な生き物で、「心」なんていうものがあるおかげで
あっちに行ったり、こっちに行ったり、忙しい。
とめどなく流れていく人生の中で、このたった一つだけあれば、「自分」だと
思えるものがあるかどうか・・。
おばあちゃんの腰にある蟋蟀の刺青がそっとよりそっているように。
自分の中にいた馬が、いつの間にかユニコーンになっていたように。
自分だけの大切な何かがある、と思える瞬間を、ぼんやり切り取った素敵な短編でした。
(この、ぼんやり、というのは褒めてます。鮮やかに切り取ったら栗田さんじゃないし)

この本、寝る前に読むと、すんなり夢の世界に入れるかも(笑)


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蟋蟀
筑摩書房
栗田 有起

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