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<<   作成日時 : 2008/12/03 08:52   >>

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堀江さんの小説は、非常に繊細だ。
いつも連想するのは、気が遠くなるほどの手間をかけて
紡がれた、蜘蛛の糸。過去という名の記憶・・・。
その「土地」に生きて、暮らしてきた人たちが
積み重ねてきた、ひそやかな溜息や眼差し。
そして、「今」をともにする人と人との、繋がり。
縦と横にはりめぐらされた、ひそやかな人生の糸に
一瞬の陽があたって煌く「今」を、文章の力で見せてくれる。
それは、私たちが日常の中で、誰でも持っていながら
自分では捕まえられない「今」なのだ。

「今」はすぐに流れ去って永遠の中に漂いだしてしまう。
それを、言葉という、普遍の網ですくって、「存在」させていく。
ここに描かれている、鉄塔のある山に暮らす人々の風景は
とりたてて目新しくもなく、波乱万丈なわけでもない。
でも、だからこそ、この中に描かれるそれぞれの人生に
そっと心をもぐりこませることが、ドキドキなのである。
この小説の扉を開くと、私の心は鳥のように、この鉄塔の
並ぶ集落に旅をする。その小説世界に生きる人たちの
心の中にそっと潜り込んで、何度も流れ過ぎようとする
「今」を味わう。これは、実は神の視点なのかもしれない・・。
人という星々が、偶然という名の必然で結ばれて星座をつくり
生きている、そのミクロをマクロから見る視点。
堀江さんの小説を読んでいると、
それぞれの心に最も近いところを通りながら、なにやら遠く果てしない
ものを感じる。星空を見ている感覚にも近いかな・・。
未見坂のあたりに住むひとたちが、送ってくるそれぞれの光が
そっと瞬いて星座をつくる。そのシグナルが、懐かしくて暖かく、
物悲しい。この短編全てが響きあうことで、独自の世界を作り出しています。

一番好きだったのは「方向指示」。
理容店の中でのほんの短いひと時。他人の肌に剃刀をあてながら
修子さんが繰り広げる意識の流れが、なんとも絶妙な間で描かれます。
言葉のリズムがねえ・・ほんとにうまい。
顔を剃るという緊張感の中で、鏡の中から、幻想世界がふっと歩いてくるような
奇妙な味の一篇になっています。ああ・・うまく言えないのがもどかしい(笑)
「滑走路へ」という少年の視点から始まって、次々といろんな年代の人たちの
心をめぐり、最後「トンネルのおじさん」で、再び少年にたどりつくのも良かった。
ふと気がつくと、この短編集のあちこちに、少年がいる。
少年たちは、どの子たちも父親の不在、もしくは父親がいなくなる不安を抱えている。
その揺らぎが映す大人たちの姿が、いちいち腑に落ちるというか、わかるというか・・。
心にひっかかったまま、きっと、何年もたった後で、「ああ、あの時は・・・」と思い出して、
疑問氷解する、そんな情景なんですよ。なにやらひどく懐かしい。
・・・でも、その滋味がわかるのは、やっぱり大人になってからかな。
こまやかな味わいの小説をよみたい人に。おすすめです。

昨晩アップしようと思ったらメンテナンスにひっかかってしまった。
・・で、こんな時間に更新です(笑)ちょっと新鮮?(笑)
ささ。掃除しよっと。


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