おいしい本箱Diary

アクセスカウンタ

zoom RSS 四とそれ以上の国 いしいしんじ 文藝春秋

<<   作成日時 : 2009/01/09 02:09   >>

ブログ気持玉 0 / トラックバック 2 / コメント 2

画像このタイトルを見た時、「四」が何なのかわからなかったんですが、「四国」なんですね。「塩」「峠」「道」「渦」「藍」の五つの短編で構成されているのですが印象としては、この短編すべてが響きあって一つのいしいさんだけの「四国」を作っているらしいということ。これは、「感じる」文学。これは何?とか、どうなってるの?とか考えるのではなく、この次から次へと繰り出される言葉の海に溺れ、奔流のように立ち上がるイメージに身を任せ、どこまでも流されてみるのが正解かと。

四国のいろんなモチーフが顔をのぞかせます。「浄瑠璃」「漱石」「鳴門の渦潮」「正岡子規」「野球」「お遍路」「平家物語」・・。しかし、ここに描かれているのは、いしいさんだけの「四国」。そこは、遥か彼方にある遠い場所のようでもあり、よく知っている懐かしい場所のようでもあり、これから行く場所のようでもありここまでたどってきた道のようでもあります。でも、どうやら一つだけ確かなのは、この果てしなくたどる巡礼のような旅の道は、他の誰にも見えない自分だけの「筋」であるらしいということ。それはやはり「人生」そのものなのでしょう・・。

男は道を自分が歩いていくというより、道自体が自分を乗せて旅をめぐっているという感覚にしばし駆られた。自分が歩かないとそこで道が途絶えてしまうことはじゅうじゅう知っている。
     ―「旅」より―


この小説は、自分との距離がとりにくい。なにしろ、文章がこれでもか、これでもかとイメージを投げかけてくるので、それに対して心全開にして全てを感じていかなければならない。混沌のカオスの中に身を投げる感じ。ヘンなたとえですが、うーん・・・意味深に言えば一緒に寝る感じですか(何を言い出すやら)あれこれ言わんと、身ィ任せんかい、という強い生命力のオーラを感じます。命のエロスがあるんですよね・・・。そう思って読んでるうちに、このいしいさんの四国が、一人の女の身体のように思えたりする。一人の女から、生まれて、死んで、旅して、また、生まれて、縁を結んだりほどいたりしながら、くんずほぐれつ、歩いていく。双六のように、ぐるぐる回るその光景をいしいさんとたどっているうちに、言葉のリズムが体中に沁みこんで、心臓の鼓動のように「命」の音楽を奏でていくように思う。最後の「藍」で、男が放った藍色が、四国の海を「永遠の若さを持った伝説の生き物」のように浮かび上がらせる光景は「言祝ぐ」(ことほぐ)という言葉を思い出させます。

「四」は「死」に繋がるのかもしれない。浄瑠璃は必ず「死」という犠牲を条件にしてドラマを浮かび上がらせる。巨大なクジラの死が、様々なものに生まれかわって命を育むように滅んだもの、滅び行くものから生まれる、「いのち」の力をいしいさんは歌う。命はリズムであり、鼓動であり、音楽・・。「みずうみ」に感じた命の清冽な気配とはまた一味ちがう、これはいしいさんにしか歌えない遥かな命の祝福の歌であると思う。

いしいさんの小説は、いつも架空の・・というか、この世にはない場所。この四国も、現実の四国とは全く違う場所ではありながら現実の四国のモチーフが下敷きになっていることで、妙にイメージが生々しい感じです。強い。とにかくイメージの喚起力が強い。新しい境地に、また一つ踏み出されたように思います。私はとても好きな小説でした。頭ではなく、心で感じる人におすすめです。

おいしい本箱 http://www.oishiihonbako.jp/index_f.php











四とそれ以上の国
文藝春秋
いしい しんじ

amazon.co.jpで買う
Amazonアソシエイト by ウェブリブログ


テーマ

関連テーマ 一覧


月別リンク

ブログ気持玉

クリックして気持ちを伝えよう!
ログインしてクリックすれば、自分のブログへのリンクが付きます。
→ログインへ

トラックバック(2件)

タイトル (本文) ブログ名/日時
『四とそれ以上の国』/いしいしんじ ○
う〜わ〜、難しかったぁ・・・。 着地点の見えない展開、そしてオチのない終わり。迂遠で、曖昧で、象徴的な、何か。こう・・・背中がぞわぞわとするような、何かが蠢いているような、落ち着かない気配。たった一文字の章題も、なんとも不安感をそそる。 いしいしんじさんは、結構当たり外れが(水無月・Rとしては)あります。ハマった時はとんでもなく心奪われてしまうのですが、今回は・・・何とも評しがたいですな〜。 ...続きを見る
蒼のほとりで書に溺れ。
2009/03/17 22:25
「四とそれ以上の国」
藍はフンフンいいながら路線図を見あげる。読めない漢字ばかりだがそれがかえって新鮮 ...続きを見る
COCO2のバスタイム読書
2009/04/08 00:14

コメント(2件)

内 容 ニックネーム/日時
ERIさん、こんばんは(^^)。
「四国」というだけで、身贔屓から読んだこの作品。
何というか・・・難しかったです。ただ、勝手な思い込みで「私の中にも小四国がある!」という盛り上がりはありました(笑)。
ERIさんのレビューを読んで「四」は「死」にもつながる・・・というところで、はたと膝を打ちました。
荒々しい力強さの中に、静かな「死」を感じる部分もあった・・・と。

しかし・・・私とERIさん、同じ本読んだんですよね(笑)。この違いは如何に(^_^;)。
水無月・R
2009/03/17 22:36
>水無月・Rさん
いやいや、違うから、面白いんですよー、きっと。
この、お遍路さんの道をぐるぐる歩くような、迷いと幻想が強烈でしたねえ。翻弄されますが、私はけっこう、こういうの好きです。自分の価値観がゆらぐ。ゆらぐ事で、見えてくる何かがあるような気がします。それを言葉にするのは難しいですが・・。
ERI
2009/03/20 02:15

コメントする help

ニックネーム
本 文

記事一覧

四とそれ以上の国 いしいしんじ 文藝春秋 おいしい本箱Diary/BIGLOBEウェブリブログ
文字サイズ:       閉じる