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zoom RSS 夜想曲集 カズオ・イシグロ(早川書房)と、最終目的地 ピーター・キャメロン 新潮社

<<   作成日時 : 2009/07/21 00:22   >>

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このブログを、すっかり更新せず、ご無沙汰してました。
薬師寺のライブのあと、そのあまりの凄さに、
すっかり腑抜けになっていたのが一つ。
うーん・・彼は、まさに奈良という地に降り立った
若き音楽の神の化身のようでした(イタタ・・)
そして、おまけに風邪をひいたという、おバカさんで
もひとつおまけに、ぎっくり腰?背中?をしてしまった
という。あ〜あ・・。
風呂掃除をしていた時に、ふと腰を伸ばした
瞬間、ぐきっと音がして、背中から腰が固まりました。
ダメですね・・。これまで、ぎっくり腰をいうのは、やった事が
なかったのに。年はとりたくないものです。

仕方なしに、ずっと横になっていたおかげで、本がまとまって
読めたという。・・で、やめときゃいいのに、ちょっとまた文章を
書きたくなる。明日仕事やで、という声がするんですけど、
ちょっとだけ。

カズオ・イシグロの『夜想曲集』(早川書房)を読んだ。
過ぎ去りし日の匂いが、音楽の響きと一緒に感じられる
上質な短編集でございました。
諧謔とか、ほのかに漂うユーモアとか、苦味とかの配合具合が
とっても上手い。その自分の上手さを、よくわかっていて、
少し照れる感じがあるのまで、玄人好みする作品たちだと
思われます。最初の短編と、最後の短編・・ベニスを舞台にした
二つが、良かったなあ。この短編全部が、「音楽」という女神さまを
掴もうとして、なかなか抱きしめさせてもらえない失恋の話という
感じなんですが、最初の「老歌手」は、その失恋具合が面白い。
長年連れ添った妻を捨てて、若い女と結婚することで、もう一旗
咲かせようとする男という、ほんとはグロテスクな話。その傲慢さの
中に、純情が光っているところが面白い。傲慢と純情。
愛情と、裏切り。この方法があっているのか、間違っているのかは
わからねど、何かを引き換えにしなければ音楽の神様は微笑まない
のかも、と思わせられてしまう。
手に入らなかった恋というものは、ますます美しいのね・・と、五つの
失恋を読んで、ちょっとうっとり。(何で、ちょっとやねん)
芸術の神様と握手する・・ということは、ほんとに難しいよなあ、と。
カズオ・イシグロ氏は、言わずと知れた、小説を書くという稀有な才能を
持っている方ですが、もし、音楽の才能と、どっちを選ぶ?と
神様に言われたら、絶対音楽を選ぶでしょうねえ。
音楽に秀でるというのは、ほんとに、神様と握手するようなもんですねえ。
うん、うん。私も、今度生まれてくるなら、音楽したいと思うもんなあ。

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で、あと、私にとっての大長編の「最終目的地」(ピーター・キャメロン・
新潮社クレストブックス)も読みましたよ。いやー、良かった。
ドラマでしたねえ・・。危うい均衡を保っている人間関係に、ぽつん、と
石を投げ込む。そこから生まれた揺らぎが、オセロの駒をひっくりかえすように
人の心を、パタパタと動かして突き動かしていく様が、見事に描かれてました。
自殺を遂げた、ある作家の妻・愛人とその幼い娘・年取った兄と、その恋人が
古い館の中で、時を止めたように暮らしている。そこに、その作家の伝記を
書きたいと、一人の若い男がやってくる・・。
自殺した作家の「死」をそれぞれが出した指で支えていたような、微妙な
均衡が、そこから崩れていく。人生の「時」が動き出していく。
そのダイナミズムが、面白くて、けっこう夢中になって読みました。
心理描写が上手い。何気ないセリフ一つで、登場人物たちの様々な
気持ちや、過去を浮かび上がらせます。

主人公のオマー君がねえ・・なんだか、間抜けで、純情で、ちょっと情けなくて
憎めない。うまく立ち回る、とか、眼から鼻に抜ける、とか、そんな場所から
程遠いところにいる彼が、どうなるのか。何しろ、彼にとって、その伝記を
書くことは、自分の人生をかけた一大選択であるはずなのに、とにかく
やること、なすこと裏目に出たりするんで、ほんと、目が離せなかったですね。
その彼が、じたばたしながら、必死で自分を掴もうとするところが、いじらしくて。
彼は、結局自伝を書けなかったんですが、それよりも、もっと大きくて
素晴らしいものを手に入れた。大切なものを、自分で手に入れた、その彼の
誇らしさと頑張りがうかがえたラストに、じーんとしました。
・・・まあ、私は、こういうタイプに弱いんだな、うん(笑)

と、ここまで書いたら、また腰が痛んできたので、やめます。
体調が戻ったら、書きたいレビューが何冊かあるんで、
頑張ります。ではでは、ご挨拶まで。

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コメント(2件)

内 容 ニックネーム/日時
「長年連れ添った妻を捨てて、若い女と結婚することで、もう一旗咲かせようとする男」というあたり、映画「美しき諍い女」を思い出しました。
あの話では男は画家で、モデルである若い女と結婚はしないし、ふたりの間にあったのは恋愛感情でさえなかったような気はするけれども、かつて彼のミューズであった妻の肖像の上に若いモデルの裸体を上描きする彼の手元の、その躊躇のなさがとても残酷だと思った…そういう自分の残酷さに耐えられる者にしか、芸術の神様は微笑んではくれないのかな。

あ、返信はいいから。
ゆっくり休んで養生してくださいませ。
お大事にね〜♪

S
2009/07/23 08:04
>Sちゃん
コメント、ありがと♪う〜ん・・芸術っていうのはある意味デーモンなんだろうねえ。しかし、その残酷さが、いい結果を産むのかどうかもわからない、というところが、もっとデーモンなのかも。
ERI
2009/07/24 20:35

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