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zoom RSS 霧の森となぞの声 こそあどの森の物語 岡田淳 理論社

<<   作成日時 : 2009/12/11 02:10   >>

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画像大好きなこそあどの森シリーズ10作目。
今回は、スキッパーはじめ、おなじみの森の皆が、妖しい歌声に
とり憑かれます。いつも、ふわっと違う世界に足を踏みいれてしまう
スキッパーですが、今回の冒険は、ちょっとキケンなかほりです。
でも、キケンだからこそ、美しくて、抜け出せなくなる・・そんな世界が、
この目に映る風景の、そこここに隠れている。感じるものだけが
わかる暗号のような秘密の魅力を、岡田さんらしい視線で描いてあって
素敵でした。

春一番が吹き荒れるある日。
スキッパーは、森のある場所から、不思議な歌声が聞こえるのを発見します。
どうしても、その場所を突き止めたくなったスキッパーは、「危ないよ」ととめる
トワイエさんの言葉を振り切って、一人、そこを突き止めようとした彼は、
いきなり空いていた穴から、地下の洞くつに転がり落ちてしまいます。
歌声は、その洞窟から吹き上げていたのです。
そこに、まず、スキッパーを追ってきた双子が転がり落ちる。
そして、彼らを探しにやってきた、こそあどの森の面々が、次々に転がり落ちてきます。
ミイラ採りがミイラになる、という言葉通り、洞窟の底から吹き上げてくる不思議な
音楽に、それぞれが心奪われて、魂抜かれてしまったようになるのです。
はたして、彼らは、その場所から、抜け出すことが出来るのか?

同じ洞窟の中にいて、同じ音を聴いていながら、それぞれが見る幻想は違う。
そこが、面白い。トワイエさんは、母の胎内。そして、ギーコさんは、春の花畑。
スキッパーは、ゆらゆら揺れて燃える火。自分の心の奥底に隠れている、
いろんなものを、「音」が引き出していく。心に響く音楽を聞いていると、
それまで知らなかった自分に出会うことがある。
そっと開く心の扉の中に潜っていくような音楽に出会えることはとっても幸せな事だ。
私なら、ここにいて、どんな夢を見るかなあ・・。
まだ、この世界に出会い始めた頃の、幼い自分。
そして、その自分が感じる、手つかずで鮮烈なおののき。
幼い頃に見た夕日や月の、恐ろしく大きく、美しかったこと。
私は、幼い頃、この世界に絶望していたので(笑)
かえって、垣間見る美しいものが異常に生々しかったことを覚えている。
きっと、そんな風景を見てしまうんじゃないかなあ・・。

そこから帰ってきたスキッパーは、思う。
自分の中に、あんな目に見えない火が、隠れていた。
いつも見ている森にも、あんな妖しい場所が隠れていた。

―すると、今、こうして眺めている森だって、木や草や土、岩のうしろに、べつの世界が
かくれているかもしれない。


物語も、音楽も、絵画も、目に見えるものの後ろに隠れている、目に見えないものを描こうとする。
それは、なぜか。それは、そこに、この世界の、人間の心の真実があると思うから。
一番大切なものは目に見えない。でも・・そのことを、いかに人が容易く忘れてしまうか、
もしくは、忘れてしまおうとするのか、毎日、否が応でも目にしてしまう。
それは、自分も含めての事ですが。
先日、音楽家達が、音楽を子どもたちに聞かせるための予算を削られてしまったことに抗議していた。
音楽や、芸術、などという分野は、大体、一番先に切られてしまうんだよなあ。
目に見えないから。利益に繋がらないから。対費用効果が計算できないから。
しかし、教育というのは、計算できないという事が、大前提である。

今の日本を覆っている、この無気力は、自分たちに誇りを持てないことにもあるような気がする。
だって、ニュースを見ていると、全てがみみっちくて、うんざりしてしまうもんなあ。
お金は大事だけれど、お金で誇りは買えない。
私は、どこか一つの国を思い浮かべる時、その国の芸術家のイメージを大きく投影する。
だから、日本にも、そんな芸術家が、たくさん生まれて欲しい。
若い力だけが、この世界を塗り替えることが出来るのに。
その費用は、惜しまないでほしいなあ・・心から、そう思う。

何だか、話がそれてしまいました。
岡田さんの描きたかったこと・・とても大事なことだと思います。
いい物語に触発されると、語りたくなっちゃいますね(笑)
大人も子どもも、楽しめる一冊です。

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コメント(5件)

内 容 ニックネーム/日時
私も岡田淳さん、大好きです。
「びりっかすの神様」「星モグラサンジの伝説」は面白かったです。こそあどの森シリーズも、楽しい。
美術の先生だったことがわかるような、造形的な貝の家も印象的ですよね。ユニークな登場人物が丁寧に描かれ、お話の世界に引き込まれていきます。
catseye
2010/01/09 00:36
>catseyeさん
コメントありがとうございます。
岡田さんの物語は、私もどれも大好きです。まず、日本語が美しいですし。catseyeさんもおっしゃるように、とても絵画的なんですよね。この「こそあどの森」シリーズは、ご自分で挿絵も書いてらっしゃるので、世界観にブレがなくて細部まで岡田さんなんです。そこが嬉しいですねえ。
お話を読む楽しさ、存分に味わう喜びを感じさせて貰っています。
ERI
2010/01/09 21:32
岡田さんの作品はすべて読んでいます。わたしも大ファンですよ。特にこの「こそあどの森」シリーズは日常の生活にふと疲れた時に、わたしも森の中に入っていくことにしています。どれも好きですが、お気に入りは「ユメミザクラの木の下で」。スキッパー君の繊細な感受性がいいですね。「ぬまばあさんのうた」もわたしの大好きなふたごちゃんが活躍して、それでいてぬまばあさんがどこか物哀しくて。私がもしも霧の森のなぞの声に惹きつけられたらどんな情景を見るのでしょうか。私は小さい時に父を亡くして父親というものを全く知らないので、もしかしたら優しく大きなお父さんの懐に抱かれて安心している、そんな声を聞くのかな?スキッパーやふたごちゃんを取り巻くおとなたちもステキですね。
夢子
2010/07/08 11:58
「わたしたちの帽子」へのさっそくのお返事ありがとうございました。そちらにも今日、もう一つコメントを入れましたので、またお読みになってください。暑い毎日どうぞお体を大切に。では、また!
夢子
2010/07/08 12:11
>夢子さん
はい。私も、岡田淳さんのファンです。作品全部読んでます。「こそあどの森シリーズ」は、私もとても思い入れのある作品です。あそこには、別の時間が流れていますね。あの場所では、スキッパーはいつもお留守番。そのせいか、私はいつもあの「こそあどの森」に帰りたくなります。
「音楽」は、自分の心の深みを垣間見る力を与えてくれますよね。岡田さんの描く美しいものは、いつも危うさと共にいる。「美」というものは、暗闇とともにあるという事を、恐れずにきちんと描く岡田さんの眼差しが好きです。その真実を誰より知っているのは、きっと子どもたちだと思うからです。心があるから、今、命を湛えることへの新鮮な眼差しがあるから、この世界は美しい・・。夢子さんの見たい夢、素敵です。でも、何だか・・もう、夢子さんはお父さんに抱かれてらっしゃるのでは、とも想います。
ERI
2010/07/09 20:04

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