おいしい本箱Diary

アクセスカウンタ

zoom RSS SOSの猿 伊坂幸太郎 中央公論新社 

<<   作成日時 : 2010/01/05 01:04   >>

なるほど(納得、参考になった、ヘー) ブログ気持玉 2 / トラックバック 0 / コメント 0

画像あけましておめでとうございます。
正月三が日はバタバタしていたのもあり、落ち着いて本が読めず。
やっと今日、新年一作目を読み終えました。
伊坂幸太郎氏の新作。読み終わって、あとがきを読んで
知ったのですが五十嵐大介さんとの、コラボだという事で。
競作企画なんですね。
どちらも好きな作家さんなので、その二人がコラボする、
というのは何だか嬉しい。
五十嵐さんの『SARU』も、発売されたら読みたいと思います。

誰かが困っていると「どうにかしたい」と思ってしまう男・遠藤二郎が、
引きこもりの少年を救おうと右往左往する「私の話」と、
プログラムの品質管理を仕事にしている五十嵐真が、
株の大量発注事件の原因を探る「猿の話」が、交差しながら
物語は進んでいく。幻想、夢、心理学、悪魔憑きの話が、時間軸を行ったり来たり
しながら進むので、正月ボケの頭には、なかなかキツかった。
前作の「あるキング」は、シェイクスピアが下敷きになっていましたが、今回はユングと
いうことで、一作ごとに、いろんな実験というか、冒険を試みている意欲を感じます。
ユングかあ・・懐かしいなあ。昔、一時はまって、いろいろ本を読んだことがあります。
「集合的無意識」とか、「曼荼羅」とか・・。物語を読んでいる上で、知っていると
面白いことも多かった。昨日、奈良に剛くんの「時空」という曼荼羅を見にいって
いたので、個人的にこのお正月は、曼荼羅リンクだなあと・・・。偶然ながら、
ちょっと面白かった。

「どこかでね、誰かが、痛い、痛い、って泣いてるんだよ。だから、助けに行くんだよ」
この幼い頃の、母の言葉が忘れられず、困っている人をほっておけない遠藤は、
自分に近い、と伊坂氏は言っておられましたが。
毎日、ニュースを見て、苦しい想いをすることって、ほんとに多いですね。
やりきれない・・と思うことが多すぎます。
いちいち、そんな事を感じていたら、やってられないんだし。
見て見ぬふりをして、スルーしていくのが、大人っていうもんでしょ。
誰かを救おう、なんて、傲慢なんだよ。
・・・そう思ってしまった方が、人間楽です。
でも、そうは思えない感受性を持っているという事が、私はとても大事だと
思っています。

物語で人が救えるのか?
きっと、それは、伊坂氏にとって、大きなテーマなんだろうと思う。
この物語の中の、遠藤くんだって、右往左往しながら、はたして、
どれだけ引きこもりの眞人くんを助けられたのか、はなはだ心もとない。
最後、眞人くんの夢から出てきた孫悟空の分身に、段ボールを積んで、
虐待されてる親子を助けるんだ、と言われて寒空の中、必死で積んだのに、
空振りだったりするし。でも、そこで必死で段ボールを積んだ想いがなかったら、
別の場所でその男は、逮捕されなかったかもしれない。
「歌っていうのは、自己満足じゃないんですか?人を救うんですか?」と聞く眞人に
答える、コンビニ合唱隊の雁子さんのセリフが、いいんですよね。


[隕石としか言いようがないけど。わたしたちの歌はね、空からでっかい石を導くのよ。
聞いてる人の胸に、それをぶつけるの」

小説を書く。歌を歌う・・ちっさなちっさな場所で、こんな言葉を綴る。
それが、何の役に立つの、って言われたら、わからないです、としか
言いようがない。

でも、この物語にしても。
昨日見に行った、剛くんの曼荼羅にしても。
どこかで、小さく光っている「想い」が、巡り巡って誰かの想いと
ぶつかって、メッセージとなる事が、必ずあると思う。
人の無意識を流れる大きな意志は、きっと、大きな、
厳然としてある何かに繋がっていると思いたい。
奈良の星空に呼応するように明滅していた「時空」を思い浮かべて、
その想いが、もっとたくさんの人に届けばいいと思ったように。
この物語を読みながら、痛い、痛い、という声に、寄り添っていこうとする
伊坂氏の願いに、お正月から優しい気持ちになれました。
痛いやつ、青臭いやつ、と思われても、そういう願いを持たない人に、
表現は語れないと思っています。
その願いを自己満足と言われないだけの努力と
自分を客観視する冷徹さがあってこその願いだとは思いますが。

モンキービジネスの7号で、村上春樹氏が、
「物語の善きサイクル」として、自分が物語を書く姿勢について、
書いておられました。物語は、作品というものは、一旦完成して、
自分の手を離れることで命を得る。そして、予期せぬ場面で、
作者や読者に、あっと驚くような真実の側面を見せてくれる。
それが、物語の価値だと。そして、それだけではなく、
その作品が、フィードバックして深いコミットメントを得ることによって、
より深いところにたどりつく、良いサイクルが出来るんだと。
それこそ、世界の片隅の端っこで、ちまちま書いているような、
ささやかなブログですが。
今年も、たくさんの物語と出会って、色々考えてみることによって、
また、その物語たちに何かを返せる、そんなフィードバックが
出来たらいいな、と思っています。

去年は後悔だらけの一年で・・。
助けて、と私に対して発信された声を、聞き逃してしまった事が、
忘れられない。今年は、そんな事のないように、心のアンテナを
しっかり立てて生きていきたいと思うお正月です。

どうか、本年も、よろしくお願い申し上げます。

おいしい本箱 http://www.oishiihonbako.jp/index_f.php

テーマ

関連テーマ 一覧


月別リンク

ブログ気持玉

クリックして気持ちを伝えよう!
ログインしてクリックすれば、自分のブログへのリンクが付きます。
→ログインへ
気持玉数 : 2
なるほど(納得、参考になった、ヘー)
ナイス

コメント(0件)

内 容 ニックネーム/日時

コメントする help

ニックネーム
本 文

記事一覧

SOSの猿 伊坂幸太郎 中央公論新社  おいしい本箱Diary/BIGLOBEウェブリブログ
文字サイズ:       閉じる