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zoom RSS 肝心の子供 磯崎憲一郎 河出書房新社

<<   作成日時 : 2010/02/25 22:35   >>

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画像ブッダ、ブッダの息子、孫という三人の物語。
しかし、その三人を合わせて、106頁という薄さ。
ギリギリまでそぎ落とした文章が、読んでいて心地いい。

仏教の始祖であるブッダと、彼に繋がる子孫の話でありながら
彼らを神格化したり、特別視する視点は一切ない。
インドの大地や森・・川の流れが、自分の記憶をひっそりと
呟くような物語。三人の人生を語りながら、全部で106頁という少なさ。
しかし、この三人の人となりというか・・その人の「核」のようなものは
きちんと伝わってくる。それを伝えるシーンが非情に鮮やかで
印象深い。
ブッダが、幼いラーフラのいる風景に、自分の生まれた意味を悟る瞬間。
そして、ラーフラがその父のいる、信者の集団に一緒に流されていきながら
一人の少女に恋をする瞬間。
ラーフラの子、ティッサ・メッテイヤが、何千もの虫を飼う光景・・。
そのどれもが生命力と結びつく光景でありながら、強烈に「死」を
感じさせる。今を照らす光がくっきりと強いほど、彼らはその影にある
「死」を感じずにはいられない・・。

堀田善衛さんの名著に、「インドで考えたこと」という本がある。
持っているはずなんだけど、埋もれてしまってすぐに出てこない・・。
で、うろ覚えではあるのだが、その中で堀田氏が、気候と思想の
関係について述べておられた。世界の三大宗教は、どれも厳しい
気候の中から生まれていると。
生き抜くのが厳しい自然の中で暮らすには、その精神を支える
強いものが必要になる。照りつける太陽がぎらぎらと落ちていった後に
一面の星が広がる風景の中で、人はどうしても何かを考えずには
いられない・・という事が書いてあったと思う。
何だか、それを思い出してしまった。

真理とは非情なもので、そこに触ろうとすると、まず無傷ではいられない。
また、何が真理なのかを見つめようとすれば、日なたの陽炎のように
目をこらすほどに逃げていく。
逃げていこうとする一瞬を映像で捉え、言葉で焼き付けようとした
挑戦が面白かった。受け取り手の感覚の如何に頼る部分が大きいのが
難点かもしれないけれど、それも、また承知の上の事なのだろうと思う。
表紙や装丁、活字の並べ方の具合も、よく考えられていると思う。
こういう本は、そこがなおざりになると、力が半減してしまうだろうから。
・・また、この人の本を読んでみたいと思った。
興味のある作家さんが増えて、良かった、良かった。
芥川賞もらってらっしゃるんですねえ。(気づくの、遅っ!!)
まあ、こうやって一歩くらい遅れて読むのが、ちょうどいいかも。

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