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zoom RSS 上橋菜穂子さんの講演会 「物語の魅力と魔力」

<<   作成日時 : 2010/02/22 01:43   >>

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今日、茨木市立図書館で開催された、上橋菜穂子先生の講演会に行った。
「物語の魅力と魔力」と題した講演会で、上橋先生がこれまで
どのようなきっかけで物語と出会ってきたか。
そこから、何を受け取り、どんな想いで物語を書くようになったのか、
というお話を聞かせて頂いた。

先生はとても気さくな江戸っ子。
文化人類学からの視点も交えた面白いお話や、ご自分の幼少期の事、
学生時代の事など、飾らない真剣な言葉の一つ一つに、
非常に共感するところがあった。

一番心に残ったのは、「命」と「死」というものに対する時の想いを話された時。
若い頃に、なぜ人は「死」というものがあるのに、なぜ生きているのか、
その虚しさの中で、自分がどのように生きていけばいいのかわからなかった時に
ある物語と出会ったと。それは、ローズマリー・サトクリフの「太陽の戦士」。
その物語世界に、どっぷりはまった先生は、登場人物が枯葉を踏みしめる音が
聞こえるほどだったという。それがきっかけで、サトクリフの物語たちから、
先生は、あることを学んだ。それは、様々な理不尽の中で、人は生きている。
人というものはこういう存在で、でも、その中で、明日に向かって
懸命に生きている事がとても美しいと思えたんだと。
そんな風に、本の世界に旅をして、帰ってきた時に、その好きな物語が力を与えて
くれるような物語を書きたい、とおっしゃっていた言葉に、心から感動した。
それは、自分が心震える物語に出会った時に思う事と、一緒だから。

私たちは、理不尽の中で生きている。
死ぬ事も、生きる事も、思い通りにはならない。
様々な理不尽があるが、それに襲われたところで、運命に悪態をつくわけにも
いかない。私たちは、自分たちの「生」を生きるだけなのだ。
その中で、どう生きるか。その生き方を、自分の物語として構築する事で
私たちは自分だけの命を生きることが出来るんだと思う。
そして、力のある物語は、自分だけの、自分の物語をはぐくむことを教えて
くれると思う。上橋先生の物語から、私はその力を、ひしひしと感じる
事が出来る・・その、先生のパワーの源を、いろいろ教えて頂いて
たくさんの事を考えるきっかけを頂いた。
楽しくて、有意義で、忘れられない講演会だった。

今日の講演会は、たくさんの子ども達が来ていた。
上橋先生の本を握りしめ、バルサや、エリンの事について、いっぱい質問したくて
仕方ない子どもたちの顔を見ながら、「この子どもたちは、こんなに夢中になれる
物語に出会って幸せだなあ」としみじみ思った。
上橋先生と、私はけっこう同世代で、先生が読んでこられた本や、テレビ、
マンガなど、もう、語り明かしたくなるほど重なっていて、講演会の間中、
ぶんぶん頷いていた私は、けっこう不気味だったに違いない。
「これは、ネットには書かないでね」とおっしゃられたことが、けっこうありました。
その、「書かないでね」とおっしゃられた事が、非常に面白かったので、
上橋先生ファンは、もしどこかで機会があれば、絶対にお話を聴きにいくと
いいですよ♪先生の頭の中にある膨大な引き出しの多さと深さには
感嘆しますが、だからこそ、あんな物語が描けるんですよね。
これは、書いていいのかどうか・・先生は、あの詳細な、膨大な物語世界を
思いついたワンシーンから描かれるらしい。
小川洋子さんが、自分は、物語を、語らせて貰っているんだというような事を
おっしゃっていた。死者の声を、あるいは聞こえない声を聴き、それを書きとめるのだと。
私は自分で物語を書かないので、物語というものは、作家さんの手の内にあると
ついつい、思ってしまう。物語世界の「神」のような存在が作家さんなのだと。
でも、そうではないんだなあ・・。物語という世界、生まれてこようとする物語があって、
作家と呼ばれる人たちは、その世界を生み出す生業(なりわい)についている。
そして、それは、抜き差しならない事なのだと・・・うまく言えないのだが、
今日先生のお話を聴きながら、そう思った。生まれてこようとする物語を
「生む」ことは、なまなかなエネルギーでは出来ないことなんですよね。
先生は、ご自分でおっしゃるように、確かに小柄でしたが、非常に暖かい
オーラに満ちた、素敵な方でした。

今日、先生にお逢いできて、自分がこのブログを書いている事についても
色々考えることもありました。作家という方たちが、こんなに真剣に生み出して
いる物語に、私も、やはりまっすぐに、真剣に向き合っていきたいと思いました。
上橋先生、ありがとうございました。

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コメント(10件)

内 容 ニックネーム/日時
 全国のおすすめ図書館及び本屋とその周辺情報より、こちらのブログに伺いました。
 初めまして、まざあぐうすと申します。
 上橋菜穂子先生の本は、精霊…シリーズを読んだだけですが、とても心惹かれました。子どもたちが物語の世界に引き込まれていく気持ちが良く分かります。

 ローズマリー・サトクリフの「太陽の子」は私も好きな作品です。生きることの理不尽に愚痴を言うことなく、自分自身に与えられた命を精一杯生き抜く…上橋先生の作品世界にも通じているような気がします。

 私も先生の講演を聴いてみたいと思いました。
まざあぐうす
2010/02/22 21:34
上記コメントの中、ローズマリー・サトクリフの作品名を間違ってしまいました。「太陽の子」→「太陽の戦士」でした。すみません。
まざあぐうす
2010/02/22 22:46
 ERIさん、こんばんは。
 上橋先生の講演会に行かれたのですね。以前、上橋先生がNHKの週刊ブックレビューにご出演された際に、頭に浮かんだワンシーンから物語が生まれる、とおっしゃっておられたことを思い返しました。最初はなぜそのシーンが浮かんできたのか自分でもよくわからないけれど、ふとした時にそのワンシーンの背後にある物語が見えてくるのだ、と。うろ覚えではありますが…。
 そのお話を聞いて、すごくわかるなあ、と思いました。「ワンシーン」ならば、私も持っている、けれどそれを物語にしてつかまえることができないもどかしさ…。小説を書くという行為ではなくとも、日常を生きるなかで、自分の大切なワンシーンを物語へと昇華させられる人間になりたいものです。遠いなあ…(笑)
桜餅
2010/02/22 22:57
>まざあぐうすさん
はじめまして。コメントありがとうございます。
守り人シリーズ、私も本当に好きです。
「生きていく」という事の厳しさの中で、自分の命を精一杯燃やして生きている登場人物たちの「生」が、ほんとに愛しくなります。人間にとって、この世界の理(ことわり)は非情なものです。でも、その中で、なぜ「心」のある人間が、この世に生きて命を繋いでいくのか。そのドラマが人が人である証のような気がします。上橋先生の作品は、そこに切りこんでいく強さと、それ故の人を包み込む優しさがあります。サトクリフの作品も、そうですね。先生が、「太陽の戦士」を揚げられたとき、もう、ぶんぶん頷いてしまいました。どこかで機会があれば、ぜひ、講演会で先生のお話を直接お聴きになって下さいね。ますます先生のファンになってしまいましたよ♪
ERI
2010/02/23 01:17
>桜餅さん
こんばんは♪私も、頭に浮かんだワンシーンから、作品が生まれる・・と、活字倶楽部の上橋先生の特集だったかで読んだ覚えがあって。知識としては知っていたんですが、目の前で先生が、物語の生まれる過程を説明してくださった時、それがとても腑に落ちたというか、納得できたんです。
「物語が生まれる」というじゃやないですか。あれは、まさに、そうなんだなあと。生まれようとする物語は、自分の命を持ってるんですね。逆にいえば、そういう命を持っている物語だけが、真実を語る物語として、生まれる事ができる。

・・私も、ほんとに、そういう場所から遠い人間なんです(汗)ほんと、物語を生み出す方たちを尊敬してしまいますよね。
でも、きっと、人間って誰でも自分の物語を生きていると思うんです。その中で、自分だけのワンシーンを、私は本から、たくさん頂いているようにも思います。・・しかし、ほんとに思いました。上橋先生の頭の中はどうなってるんだろうと。「物語脳」っていう脳が、あるのかもしれないですね・・。
ERI
2010/02/23 01:32
凄いうれしいです!私は、先生のものがたりがとても好きです。だから、みなさんのコメントを聞き凄く嬉しいんです!
大好き♪
2010/06/20 20:53
先生に一度でもいいからお目にかかりたい。あんな素晴らしいお話が生み出せる方にお会いしたいです。だから皆さんの投稿記事を読み感激してしまいました。
大好き♪
2010/06/21 22:06
>大好き♪さん
はじめまして。コメントありがとうございます。
私も、上橋先生の物語、とっても好きです。
先生はとても気さくな、とってもあったかい方でした。子ども達に、とても優しく応対してらしたのが印象的でした。上橋先生の作品から感じるのは、いつも「生きていく力」の尊さです。読者に命のパワーを与えることが出来る物語をお書きになる方というのを肌で感じました。
幸いな事に、直接お目にかかれてお話を聴けて、ほんとに良かったと思っています。大好き♪さんも、どこかでそんな機会があるといいですね!
ERI
2010/06/21 22:42
ERIさん!コメント下さって本当にありがとうございます!上橋先生のファンの方とそんな風にお話し出来るなんて、凄く嬉しい!もうそのこと自体が夢の様です!
私は、先生の人の心を惹きつける魅力になにより惹かれたのだと想っています。ただ懸命に何かを追いかける果てにあるものが必ずしも良いものであるとは限りません。でもそれでもエリンのひたすらに追い続け、何かに語り続ける姿が美しく、その強さが人を惹きつけて魅力して離さない。そんな物語をかけるひとに本当に心から感動したんです。やっぱり上橋先生も獣の奏者ていう作品にも頭が下がります!
大好き♪
2010/06/22 23:45
ERIさんは、素敵な方ですね♪ERIさんのコメントをまた改めて読み返すと、上橋先生の物語に近付けていけるような気分にさせてくれるんです。先生の作品は、生きているって私は、いつも想います。暖かい優しさが先生の作品には、あるから。だから私は、先生も先生も大好きなんですね。ERIさんの、多くの文学に携わりながら先生の世界を見つめる姿がとても素敵です、ERIさん、私なんかに返事を下さって本当にありがとうございます!
大好き♪
2010/06/23 22:34

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