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zoom RSS 引き出しの中の家 朽木祥 ポプラ社

<<   作成日時 : 2010/03/07 21:39   >>

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画像小さい・・という事は、どうしてこんなに人の心をくすぐるのだろう。特に、女子の心を。この物語を読んでいる間、私はすっかり少女になってしまって、この物語に出てくる少女たちと、煌めくような幸せを味わっていた。煌めくような幸福なんて、滅多にない事。この本には、女の子には堪えられない、小さな幸せがいっぱいに詰まっている。可愛くて愛しい、朽木さんだけの小宇宙の美しさ・・。装丁も、挿絵も、とっても可愛い。この本が、そのまま、心の中の、もうひとつの引き出しみたい。朽木さんの文章の香気を吸いこんで、春の風を感じることが出来ました。

物語の時代は、1960年代。七重は、とても手先の器用な女の子。自分の引き出しの中に、お人形のピョンちゃんのためのお家を作る。小さなベッドに、ソファ。自分で作った、猫足のバスタブ・小さな小さなお布団。ところが、大事なピョンちゃんは新しいお母さんに捨てられてしまった。傷ついた七重は身体を病んで山里にある、古い祖父母の家で暮らすことになる。その家には、古くから「花明り」という、小さい人たちの言い伝えがあった。「花明りにふさわしい大きさのものを仕立てれば、花明りは、きっと、やってくる」。古い家のあちこちにある、秘密の通路に、七重は胸をときめかせる。そして、ある日―。七重の引き出しの中の家に、小さな人が、やってくる・・。

私も作りました。昔々の少女の頃。引き出しの中に、小さな自分だけの部屋を。あの頃、私も小さな人を信じていたんですよ。佐藤さとるさんのコロボックルのシリーズに、どれだけ熱中した事か。そして、ゴッデンの「人形の家」に出てくる、ドールハウスに、どれだけ憧れたことか。当時は、「ドールハウス」なんていう言葉も知らず。夢の中のおとぎ話のようでしたねえ・・。貧乏暮らしの借家で、自分の部屋もなかったんですが。唯一自分だけのものだった引き出しに、あれこれと工夫して小さな部屋を作っていた。でも、この七重ちゃんが作ったような可愛いものは、そういう文化を知らなかった私には、作れなかったなあ・・。そんな私にとって、七重が作った引き出しは、もうもう、昔の夢の再現ですよ。うっとり・・もう、理屈抜きに、うっとりです。挿絵が、また可愛くて(泣)あの頃の自分に、この本をプレゼントしてやりたいと本気で思ってしまった。また、この物語の舞台となる、多分鎌倉の山の中のお屋敷が、とても素敵です。暖炉のある、古い家。様々な花が咲き乱れる広い庭。アンティークの飾りのあるクリスマスツリー。朽木さんの世界は、いつも上質な伝統を持つ、豊かさに溢れている。それが付け焼刃ではなく、ごく当たり前に溢れてくるところが好きなんだなあ。高楼方子さんか、朽木さんぐらいじゃないかしらん。こんな豊かさが描けるのは・・。これは、なかなかに希有な事だと思うんですが。

欧米の児童文学には、こういう由緒ある「家」がよく登場します。どっしりした「家」は長らくそこに在って、暮らす人たちを見守り続ける。私たちは、すぐに老いて、少女ではなくなってしまうけれど、こういう風に変わらず在る「家」があれば、命は受け継がれていく。この物語でも、独楽子と七重は、二人でした約束を果たせないままに別れてしまう。しかし、40年後、今度は薫と桜子という、血の繋がった少女たちの手で、その約束は見事に果たされます。七重と独楽子が、小さな手仕事で気持ちを繋いだように、薫と桜子は甘いお菓子作りで心を繋ぐ。細々と刺繍をしたり、編み物をしたり、お菓子を作ったり。「手」を使って何かを作り、そこに心を込めることは、人間としての根源的な喜び。昔は、そんな事をする暇が子どもにもあったけれど・・。今の子どもたちはどうなのかなあ。薫と、小さな小さな桜子が、二人でクッキーを焼くシーンには、その楽しみがいっぱい詰まっていて、にこにこしながら読みました。

「家」は、そんな二人を見守って、優しくくつろがせます。輝かしい二人の少女時代の黄金の日々が、キラキラと輝いて、年老いた家に、夫を亡くして老けこみそうになっていたおばあちゃんに、新しい命を吹き込んでいく。ラストの、見事な盆栽のしだれ桜でお花見をするシーンの美しさに私は涙してしまった。日本は、変わらない風景を守る、という事が軽視されがちだけれど。こうして、変わらないもの、受け継がれていくものがあってこそ、命の再生があり、瑞々しく育っていく命を見守る優しさに繋がっていく気がする。それは「家」に限らない。自然や風景・・歴史ある場所の力もそうだろうし、しっかりと筋の通った、大人たちの生き方も、そうだろう。少女たちを取り巻く、そんな様々な豊かさが、この物語に深みを与えていて、読んでいて、とても心安らぐものがあります。「赤毛のアン」や、「ニルスの不思議な旅」や、「床下の子どもたち」を読んで育ったお母さん世代にも、あれこれと心くすぐる仕掛けが用意されています。親子で読んで、絶対楽しい。現役の女の子たちと、永遠の女の子たちに(笑)そうそう、読むときに、ぜひ表紙の紙を一度外してみてくださいね。何が出てくるかは、お楽しみです。

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コメント(4件)

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ERIさん、こんばんは♪
まず本を手に取って、その可愛らしさに感動しました。表紙も挿絵も、和紙のような見返しの紙や帯。表紙の下に隠れているもの・・。全てが可愛くて可愛くて、思わず本を抱きしめてしまいました。

物語も本当に素敵です・・。すっかり少女の頃に戻って、夢中で読みました。
私もコロボックルシリーズ大好きでした♪私はお菓子の箱でしたが(笑)小さな人のお部屋を作って、大切にしていました。フェルトのカーペット。厚紙で作ったテーブルや椅子。ベッド・・。今も思い出すと、胸がドキドキときめきます。そんな元少女には、七重の引き出しの中の家は、ただただ、うっとりですねぇ。。。心から憧れます。あの、秘密の通路がい〜っぱいある大きなお屋敷も・・。あんな家に住んでみたかったです。

あと一歩で約束を果たせなかった七重と独楽子が切なくて切なくて泣きました・・。でも、時を超えて、その約束を果たした薫と桜子。その繊細な心と心の繋がり、自然や命・・。大切な事で溢れていますね。ラストのお花見のシーン・・。感動でいっぱいになりました。時は同じく春。今年は更に更に大切に、桜を愛でようと思います。
いいなぁ・・。小さな人と暮らす事が夢だったんですよねぇ・・。『花明りにふさわしい大きさのもの』また仕立ててみようかなぁ(笑)

2010/03/30 17:42
>花ちゃん
こんばんは♪読んでくれたんや〜(*^-^*)
この本可愛いよね。作った人の想い、愛情が伝わってくる。だから、幸せな気持ちになれるのかな。花ちゃんも、作ってたんやね、小さいお部屋。あの小さな引き出しには、あの頃の私の夢や願いが、いっぱい詰まってたような気がする。私は現実を生きるのにとても臆病な子だったので、本の世界や、自分の作る引き出しの中の世界があることで、やっと息をついてた・・。あの頃の自分にプレゼントしてもらったような気持ちで、この本を読みました。あんなお家に住むのは、ほんとに今でも憧れです(^◇^)
愛しいものが溢れているこの作品が教えてくれるものを、大事にしていきたいと思います。また、作ってみたくなるね、小さい人のお部屋・・。乙女の夢やね(*^m^*)
ERI
2010/03/31 00:26
「花明かりにふさわしいもの」、ぜひ仕立てて下さいね。温かい御感想をありがとうございました。
komako
2010/03/31 22:09
>komakoさん
コメントありがとうございます(*^-^*)
「花明かりにふさわしいもの」また、作ってみたくなりました。今年は奈良の吉野に桜を見に行ってみようと思います。また、写真撮ってきたら、アップしますね♪
ERI
2010/04/02 00:05

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