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zoom RSS 志賀越みち 伊集院静 光文社

<<   作成日時 : 2010/04/27 00:58   >>

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画像「伊豆の踊り子」を思い出させる、舞妓と学生の恋。
比叡の山道を登る出だしから、あの有名な
「道がつづら折りになって・・」という冒頭を思い出させる。
主人公である雅彦の年齢も、ちょうど同じくらいだろうか。
やはり、旧帝大の三回生。
舞台は昭和の、オリンピックの頃だから、ライカのカメラを持ち
旅行をするところなぞ、いかにもお金持ちのお坊ちゃん。
東京の山の手の、温室育ちの「僕」が、京都にやってくる。
学業にもう一つ身が入らない雅彦は、お茶屋を経営している、
大学の友人の家に滞在するつもりなのだ。
彼は、そこで運命の恋をする。いわゆる、一目ぼれというやつですね(笑)
相手は祇園でも一番の売れっ妓の舞妓、真祇乃。
立場が違いすぎる恋・・。その喜びと悲しみを、ノスタルジックな文体で
描いた、恋愛小説です。

もう、ほんとに、昔の映画の題材になりそうな、ベタといえば、
これほどベタなものはない、古典的な悲恋なんですが。
丁寧に描かれる、京都の祇園の風景の、何ともいえない湿り気というか
奥深さというか・・上手ですねえ。明るい、志賀越え道を渡って、
複雑に入り組んで、深い闇をはらむ京都という土地に入り込んで
いくリアルさが、「恋」というものの、どうしようもなさと重なって
大人の酩酊を誘う物語になっています。
何とも純情な、まるで赤ん坊のように何も知らん雅彦という男の子を、
つい、ちょっとばかり「アホかいな」と想いましたが(笑)
彼が、うちの息子たちと同じ年齢かと思えば合点がいく。
そら、こんなもんやろなあ・・。
初恋・・ですね。身体で確かめあう、初めての恋。
もう、お金というもので、一歩も身動きできず縛られて、幼い頃から
自分を売って生きてこなければならなかった真祇乃にとって、
その単純でまっすぐな瞳は、何者にも替え難い宝物だっただろうと思います。
雅彦の眼にうつる真祇乃は、ひたすら綺麗で純粋な存在なんですが、
自分がそうでない事を、彼女はよく知っている。
そして、常に彼をリードして、男を知っている女ならではの見事さで
雅彦を絡めとっていくんですが、そんな事に、雅彦は全く気付かない。
女を知っている男なら、初めて抱き合った時にもそれがわかるはずなのに。
始めて結ばれる歓喜の中で、その二人の対比を、たった一言書き添える
だけで、わからせてしまうのは、さすがにベテランというか、上手いというか。
・・・その一言が何かは、自分で探して頂く事にして(笑)
そんな彼女の純情が、雅彦の曇りのなさに照らされて、一瞬の
花火のように煌めいて燃え上がる。その「美」を堪能しました。
ラスト、彼をひっぱたいて、走り去っていった真祇乃の怒りは、現実という
くびきから逃げられない、彼女の叫び。男と女の間に流れる深い川というか
溝の深さをきちんと滲ませながら、一期の夢のような恋を情緒深く描いた
佳品でありました。

私はお芝居をよく見にいくので、歌舞伎や浄瑠璃を、旦那さんや
お母さんと一緒に見にきている舞妓さんや、芸妓さんをお見かけする事が
ままありますが。あれは、不思議に玄人か素人か、すぐにわかるんですよね。
いつやったか、南座の顔見世で、暗くなったら途端に眠りこけてしまう舞妓さんを
見て、何やら微笑ましいな、と思った事がありますが。
そんな京都の街の、あれこれを思い出しながら読む楽しみがありました。
何となく、モテる男である作者の色気を感じてしまう一冊(笑)
それが下品にならない所が、良かったです。
この表紙の美人は、誰だろう・・・。

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コメント(2件)

内 容 ニックネーム/日時
通りすがりの者です。
志賀越みちの表紙の女性は小橋めぐみさんです。
http://kobashi-megumi.arekao.jp/
わたしもこうゆうちょと気になった人とか、小耳に挟んだ曲とか気になるともどかしくなる質なので、余計なおせっかいかとも思いましたがお報せします。
男性だったらそのまま「悩んどき・・」とほっとくのですがね(^^)
こん
2011/07/12 23:40
>こんさん
教えてくださってありがとうございます!綺麗な人だなあと思って気になっていました。ブログも拝見してきました。女優さんなんですね。雰囲気のある方ですねえ。ほっとかれなくて良かったです(笑)
ERI
2011/07/14 00:29

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