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zoom RSS ラストラン 角野栄子 角川書店銀のさじシリーズ

<<   作成日時 : 2011/03/05 10:58   >>

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画像『魔女の宅急便』のシリーズで有名な角野栄子さんの自伝的小説です。角川もとても気合が入っていて、サイトにも角野さんのインタビューが動画で貼ってありました。角野さん、初めて拝見しましたが、とても上品な素敵な方です。ああ・・イメージ通り、と嬉しく拝見しました。バックのピンクの本棚がオシャレでこれまた素敵。ご自宅でしょうか。その本棚に何が入っているのか見たい、と目を皿のようにしましたが、どうもよくわからない。残念でした。(どこを見てるんだか)

そのインタビューの中でも語ってらしたのですが、角野さんは5歳のときにお母さんを亡くされているそうです。この物語は、そのお母さんにカッコいいバイクに乗って会いにいくお話。この、12歳のお母さん、ふーちゃんが可愛いんですよ。可愛い赤いワンピースを着て、金魚のようにひらひらと自由に、74歳の娘のイコさんのバイクにまたがって旅をする。ふーちゃんは幽霊で、自分の心残りのせいであちらに行けなくて、ずっと一人でいたんです。自分が5歳で母親を亡くしてしまったことを引きずって生きてきた、とおっしゃる角野さんが、そのふーちゃんに込める想いは、とてもナーバスな切ないものがあったはずなんですが、その想いが感傷ではなく、「物語」として暖かく結実しているのが素晴らしかった。

バイクのツーリングが趣味74歳のイコさんは、ある日、自分のラストランに出かけようと思い立ちます。そして用意したのは、真っ赤な最新型のバイクにしなやかな革のライダースーツ、真っ赤なヘルメット。そのいでたちで、12歳の母が映っている一枚の写真だけを頼りに、自分の母親の生家を探しに出かけます。奇跡的に残っていたその場所で、イコさんは写真に映っていた母の幽霊、ふーちゃんに出会います。ところが、ふーちゃんはイコさんの事は何も覚えていない様子。まさに、12歳の少女のまんまなのです。イコさんは、ふーちゃんをバイクでの旅に誘います。12歳の母親と、74歳の娘のツーリングの旅が始まります。

74歳のバイク乗り。イコさんカッコいいですよ!運動神経のない私にはとても出来ない。そして、ふーちゃんが一緒にいると、なぜかイコさんにも幽霊が見えます。二人の旅は、あちこちで幽霊と出会う旅。でも、その幽霊たちは生きている人間と、対して何も変わらない。一緒にお風呂に入っていても、そうとは気づかないほどです。息子に一目会いたくてジタバタしているケイさん。そして、彼女にふられたことが信じられない道夫くん。イコさんは、小さい頃からずっと抱いてきた心のしこりが、段々ほどけていく気がします。

五歳の時、母の死と出会って以来、私にとっては死は絶大な力をもっていた。それには絶対逆らえないとおびえていた。・・・(中略)・・でも、ふーちゃんたちゆうれいとつきあって、この二つはもっとゆるーくつながっているような気がしてきた。この人たちの行く先が、まったく隔絶した世界なんて、とても思えない。


これは、角野さんが長い長い心の旅路の果てにたどりついた場所。私も、この角野さんの感慨が少しずつ身にしむ年になってきているのですが、私が素敵だなと想うのは、イコさんが少女の魂と旅をしてこの場所にたどりつくところ。ふーちゃんは幽霊だけど、12歳の心のまんまで恋をします。それは、なりふり構わずに付いていってしまうほどの、切ない恋。誰かを好きになる。その時、世界が煌めいて色も何もかも変ってしまう。そんな瑞々しい心を、ふーちゃんはずっと持っている。ふーちゃんがあちらに行けなかった心残りとは、後に残してしまう大好きな夫のことだったんですよね。ふーちゃんがずっとこの世に幽霊として生きているのは、誰かに恋する心を持ち続けているから。その心の柔らかさ、幾つになっても持ち続けていたい、少女の心を、ラストランで手に入れたイコさんに、私は何だか嬉しくなってしまった。ずっと児童文学を書き続け、少女と少年の心に寄り添ってこられた角野さんの生き方が、そのままそこに輝いているようです。

そして、イコさんとふーちゃんは、もう別れずに、これから一緒に楽しく生きていく現在進行形のまま、物語はおわります。ふーちゃんはイコさんのことも思い出すけれど、それは感動の母子の再会というよりは、新しい友情の始まりのように描かれます。「いっしょに生きていこう、素敵じゃないの」ずっと拘り続けてきた、「母」というテーマに、こんな風にとりくんで、しなやかにまた希望を唄う。命は限りがあって、角野さんもおっしゃるようにそれは私ももう眼の前かもしれないんです。だからこそ、瑞々しく。だからこそ、現在進行形で。そんな角野さんの心意気に、とても元気を頂きました。そして、この物語は、角野さんが五歳の時にお母さんを失ってしまったからこそ書けた物語なんですよね。失う、ということはそれだけで終わるのではなくて、長い年月の間にまたそこから得るものがある。そんな人生の重み、のようなものも感じた一冊でした。

2011年1月刊行
角川書店

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コメント(2件)

内 容 ニックネーム/日時
ERIさん、こちらにもお邪魔します。
ERIさんがこの本のレビューをアップされているのを拝見して、すぐ図書館に予約したのですが、すごい人気で、やっと手許に回ってきたのです。

イコさんのラストラン、とてもかっこよくて、爽やかで素敵でした。
イコさんとふーちゃんの関係、素敵だったです。
最後はどうなるのかな、と勝手に予想していたのですが、見事に裏切ってくれて、おかげでとっても元気になりました。

ところで角野さんのインタビュー!
あわてて検索して、今みてきました。
教えてくださってありがとうございます。
ほんとにあのピンクの本棚、中の本が気になります〜。でも見事にわかりませんでした〜。
角野栄子さん、素敵なかたですね〜。
ぱせり
2011/07/21 17:40
>ぱせりさん
この本、うちの図書館でも大人気なんです。やっぱり角野さんの本は、みーんな待ってるんですよね♪
インタビュー、ご覧になれてよかったです!素敵な方ですよねえ。爽やかな風をまとってらっしゃるみたいで、うっとりしました。あの本棚、やっぱり気になりますよね。絵本だけでも教えて欲しいなあ(笑)
ERI
2011/07/21 21:56

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