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zoom RSS 幸田家のきもの 青木奈緒 講談社

<<   作成日時 : 2011/05/21 21:37   >>

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画像幸田文さんの孫に生まれる、というのはどんな気持ちがすることか。それはさぞかし重かろう、と想うのだがこの本の中に佇んでおられる奈緒さんは凛として、見惚れてしまうほど美しい。『夢に咲く花』という項で、フランスの音楽祭に濡れ描きのきものを着ていったところ、行く先々で大歓迎され、入れないはずの場所にも「キモノがいくから」という一言で入れた、というエピソードを書いてらした。それは着物の魅力もさることながら、幸田家に流れる様々をその身に湛えた「美」を見る人が感じたからに違いない。私なんぞには、遥か遠くたどり着かない佇まいだと、羨ましいという気持ちを通り越して、ただ素敵だと思う。幸田家に生まれたことを福とし、ご自分の生き方も含めて慈しむまでの道のりが、立ち姿一つにも匂う。

幸田文さんと云えばきもの。私たちは単純にそう考えてしまうが、そのきものの一枚一枚に沁み込んだものがある。それは幸せなことだけではなく、例えば母から嫁入り支度をして貰わなかった娘としての想い、結婚してその身にまとわりついた抜き差しならぬもの、文筆という仕事を選んだ後の、きっぱりとした覚悟など、ただ柄や着心地を楽しむだけの想いから遠く隔たったものもあった、と奈緒さんは言う。露伴という傑物の娘であり、その教育を徹底して受けた文さんの小説やエッセイには、いつも身震いするほどの感受性と揺るぎない芯のようなものを感じる。その裏にある揺らぐものを、きものは優しくくるんで、包み込んでいたのかもしれない。

奈緒さんの文章は端正で気配りが行き届き、さすがのセンスの良さで読んでいてとても心地いい。「血」ですかねえ、やはり・・・。しかし、文さんのきものに対する思い切りの良さは、凄い。新しい帯に、ざっくりハサミを入れてしまう場面など、自分には絶対に出来ないことだけに胸がすくような、ドキドキするような(笑)その思い切りの良さは奈緒さんの代には丸くなり、祖母が残してくれたきものとのあれこれを慈しむ形となって流れているようにも思う。何より、文さんが奈緒さんをとても可愛がって愛しておられたことが、奈緒さんにあつらえた着物の数々から感じられるのが、とても暖かくて胸に沁みる。お母さんの玉さんの『幸田文の箪笥の引き出し』もとても読み応えのある美しい本だったけれど、この本もしみじみと、段々消えていく日本の美しいものを感じさせてくれて心に残る本になりそうだ。

「祖母の残してくれたきものは納得の行く着方をする必要がありました」

この一言に込められた日々の積み重ねが、美しく生きるということなのだろう。私には遠すぎる境地だけれど。しばし、きものの奥深さを共に感じさせてもらってとても嬉しい一冊だった。奈緒さんのエッセイは未読だったなあ。これを機会に読んでみようと思います。

2011年2月刊行
講談社

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