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zoom RSS 千年の森をこえて キャシー・アッペルト 片岡しのぶ訳 デイビッド・スモール絵 あすなろ書房

<<   作成日時 : 2011/07/02 20:27   >>

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画像この間、楽しみにしていた『ホットスポット・最後の楽園』の第6回を見ました。最終回は日本で、森に暮らすニホンザル達が主な主人公だったんですが・・その日本の森の美しさに息を飲みました。このシリーズはとても映像が美しくて、これまで紹介された国の自然もとても感動的だったんですが、この日本の森には、ほんとにぐらっとするほど感動してしまいました。これは、自分の日本人としてのDNAがそうさせるのかなあと思ったりもするのですが、ほんとに日本の森、川というのは他にはない瑞々しさです。潤いと緑の色が違いますよね。しかし、
この物語の舞台も森です。でも、日本の森と違って、そこはテキサス州、メキシコ湾にそそぐ大きな河をはらむうっそうとした森。原始の荒々しさを強く感じさせる森に起きた、千年を超える時が刻む物語。神話と今が出会う、まるで叙事詩のような物語で、言葉が醸す音楽に酔いました。

物語は一匹のメス猫・キャリコが、森に迷い込むところから始まります。捨てられてしまい、孤独に震えるキャリコの耳に、心響くブルースが聞こえてくる。それは残酷な飼い主・ガーフェイスに鎖に繋がれたまま打ち捨てられている、年老いた犬・レンジャーの歌声。心の友を見つけたキャリコは、レンジャーの元で、パックとサビーンという2匹の子猫を生む。愛らしい2匹をガーフェイスから守ろうとするキャリコとレンジャー、そして子猫たちは堅い絆で結ばれていく。
一方、千年の時を生きるテーダマツの根が抱える大きな甕には、ラミアという魔物で見かけは蛇の婆が眠っている。愛に何度も裏切られた彼女の口の中には、じんわりと毒が溜まり、やがてくる時を待っている。そして、その婆を姉と慕う、やはり長い長い時を生きる、30mを超す巨大なワニのキングも、この森の河を泳いでいた。ガーフェイスはそのキングを倒すことを生きがいにする、孤独な男。ある日、兄猫のパックは、ガーフェイスに見つかって、母猫のキャリコと共に河に投げ捨てられてしまう。キャリコの「泳ぐのよ!」という必死の叫びに命を助けられたパックは、たった一人森を彷徨う。「必ず妹の元に帰りなさい」という、最後の母の願いを、パックは叶えようと必死で森を歩く・・。

物語は、今進行している子猫たちとレンジャーの物語と共に、甕の中に潜む婆の昔の物語も語られます。長い長い孤独の果てに、やっと出会った愛する娘・ナイトソングと過ごした黄金の日々。しかし、その娘も男を愛して人間の姿となり婆の元から離れていく。寂しさにおかしくなってしまった婆は、娘を騙し、蛇の姿にかえしてしまう。しかし、一度人間の姿を解いた魔物は、二度とその姿に戻ることは出来ないのだ。愛する男と、娘と離れなければならなくなったナイトソングは、生きる希望をなくし、干からびて死んでしまう。再び重い重い孤独の淵に沈んだ婆の回想は、まさに体内をめぐる毒のように、激しく甘く、苦い。

この二つの物語は、お互いに響きあいながら進行し、最後に出会ってドラマチックな化学融合を起こします。その物語のラストにある醍醐味は、語ってしまうと面白くないので伏せますが、それぞれが、生き物として背負う魂に刻んだ音楽が一気に響き合う見事な幕切れです。そう、音楽的なんですよ。文章がとても詩的で、何だかオペラを見ているような面白さがあります。うっそうと繁る木々が、ずっと重低音でコーラスを奏でてる。そこに、荒々しいパンクを吼えたてるガーフェイス、レンジャーのブルース、キャリコと子猫が奏でるキラキラした円舞曲、婆とナイトソングが歌ういにしえから伝わるセイレーンの妖しく美しい子守唄・・・それらが響きあって溶け合う独特の世界がとても魅力的でした。それぞれの生死をつかさどるハチドリの羽音を聴くまで、命のそれぞれが、精一杯生きている。森はその命を包み込んで、しんと静まりかえり、また次の命をはぐくむ。こういう、うっそうとした森は、絶対にこの世界に必要なもの。物語もそこから生まれて、そこに帰っていくような気がして、読み終わったあと、しーんとします。美しい音楽のあとの静けさは、とてもいいものです。

この物語は、2009年のニューベリー賞、銀賞を受賞しています。

2011年5月刊行
あすなろ書房

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