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zoom RSS クロックワークスリー マコーリー公園と三つの宝物 マシュー・カービー 石崎洋司訳 講談社

<<   作成日時 : 2012/01/30 23:58   >>

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画像煌びやかな都会と深い闇の大きな森がある19世紀末のアメリカ東部の町を舞台にした、3人の少年と少女が繰り広げる冒険活劇です。自動人形、オペラ、タロット、降霊会、孤児院、大道芸人・・・もう、ありとあらゆるものを詰め込んで息つく間もなく物語が展開していくのが楽しくて仕方がない。主人公たちと一緒に町を走り回っているうちに時間が経つのを忘れてしまう―いいですね、こんな時間って。

主人公は3人。一日の稼ぎをほとんど親方に巻き上げられてしまうバイオリン弾きのジュゼッペ。彼はある日緑の美しいバイオリンを港で拾います。美しい音色を出すバイオリンで、彼は奇跡のような音楽を鳴らして、その稼ぎで生まれ故郷のイタリアに何とか帰ろうとしますが、鬼のような親方と意地悪な仲間の少年に付け回されてしまうはめになります。孤児院から才能を見込まれて時計職人の親方に引き取られたフレデリックは、一日でも早く一人前の職人になりたいと焦り、自動人形を自分で作ろうとします。そして、病気の父親を抱えて家族を養うホテルのメイドのハンナは、ホテルのスイートルームに宿泊する謎の女性の付き人になり、そのことがきっかけでホテルに隠された宝物を探しだそうとします。それぞれが自分の境遇に悩み、苦しみながら、何とか自分の道を切り開こうと、あっちにぶつかりこっちで転び・・・しているうちに、ひょんなことで知りあって助け合うことになる。盛りだくさんの内容に、主人公も3人という複雑な展開なんですが、これがとっても読みやすい。書きようによっては、もっと長く引っ張れる物語を、きゅっとまとめて飽きさせません。もうね、あらすじは説明しませんよ(笑)とにかく読んでわくわくするのが楽しいと思います。

3人の冒険の楽しさもさることながら、彼らの気持ち、心の動きがきめ細かく書き込まれている印象的なシーンが心に残ります。一旦手にした奇跡をもたらすバイオリンを奪われてしまったジュゼッペが、古いバイオリンでハンナの家族のために心込めて音楽を鳴らすシーン。病み衰えたハンナの父親がその音楽に一瞬自分を取り戻します。ジュゼッペは、この冒険の中でお金のためではなく、ただ相手のことを想って何度かバイオリンを弾くのですが、そのたびにきらきらと音が輝いていくのがわかります。このジュゼッペといい、孤児院でめちゃくちゃに働かされていたフレデリックといい、一家の経済事情を一心に背負って働くハンナといい、19世紀、産業革命の始まりの頃は子どもは労働力の一つにしか過ぎなかった。貧富の差が激しく、光ある場所はますますきらびやかに、一方影の部分はひたすら濃い時代です。そんな時代を背景に、ひたすらに自分の道と居場所を求めていくひたむきさが物語を動かしていくのに惹かれました。彼らはそれぞれ人生の理不尽にぶち当たっているんですが、その中で自分の大切なものを見つけていくんです。フレデリックが自分を捨てた母親のことを聞きたくて、聴けなくて悩む気持ち。そして、ハンナが、自分を頼りっぱなしにしている家族に対する不満、辛さをぶちまけてしまう場面など、自分の境遇に苦しみながら生きている彼らの気持ちが切なかった。思い通りに生きていけないのは、どの時代も同じ。そして、生きていくことの一つ一つが簡単でないのも、やっぱり同じなんですよね。

事情があることとは言え、夫人のネックレスを盗んでしまったハンナといい、自動人形の頭をいきなり博物館から持ってきてしまうフレデリックといい、けっこうきわどいこともしてしまう彼らですが、ひと癖もふた癖もある大人たちと渡り合いながら生きてきた彼らのしたたかさも、また読みどころかもしれません。彼らがいわゆる「いい子」でないところから運命を切り開いていくのは、物語ならではの痛快さです。自動人形や、錬金術や何やかんやの書きこまれた背景を読み解く楽しみもあります。そうそう、この物語の鍵を握る、ハンナの雇い主の謎めいたポメロイ夫人の正体も、また気になるところ。この婦人も、自動人形のマグヌスのように、何か歴史的な背景があるんでしょうか。そのマグヌスは、なぜ電気というエネルギーのことを知ってるのか・・などなど、考えだしたらきりがないほど謎が詰まりっぱなしなんですが(笑)そこをあれこれ追ってみるもよし、うふふと楽しく読んでおしまいにするもよし、の楽しい一冊でした。この作者は、この本がデビュー作だそうです。次の作品も、翻訳されるといいな。

2011年12月発行
講談社

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