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zoom RSS 夢違 恩田陸 角川書店

<<   作成日時 : 2012/02/17 02:13   >>

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画像終わらない悪い夢を見ているような小説。夢診断、フロイト、無意識の領海、香りの記憶、夢の中での記憶のすり替えなど、筒井康隆を強く意識させるような作品に思えました。筒井作品ほど理詰めではないのですが、細部の描写や、延々とくり返されるモチーフで「悪夢」を漂わせる筆力はさすがです。読み終わったあと、ぐったり疲れてうたた寝をしてしまい、作品の続きのような悪夢を見てしまいました(笑)

この作品の中では、夢は「獏」という装置によって記録が可能になっています。記憶された夢は「夢札」と呼ばれ、再生が何度も出来る。全国で小学生たちが集団ヒステリーのような症状を起こす事件をきっかけに、予知夢を見る能力のあった結衣子という女性の謎が浮かび上がってくる。その謎を、彼女を愛していた浩彰という男が追い続ける話です。いろんな謎がどんどん提示されていくのに引っ張られて読み切ってしまいましたが、いつもの恩田作品のように、最後まで読んでも、あまりすっきりとは解決されない(笑)あのでっかい八咫烏は結局何やってん、とか。集団タイムスリップした人たちは結局どこに行ってたんやとか、考え出すと眠れなくなること満載ですが、全ては割り切れない夢の話。全てを解説しろというのは野暮な話なんでしょう。

作品の夢のモチーフに、「奈良」が多く登場してきます。特に大きな背景になるのは吉野の桜の光景。霧とともに浮かび上がる山桜の光景は、私も経験したことがありますが、まさに夢の中のひと時でした。(吉野紀行@吉野紀行A吉野紀行B)あのあたりはまさに神の山。吉野を出発点に、修験道の道が奥へ、奥へと続く場所です。やはり、なにがしかの霊気が満ちていて、信仰を持たない私にも古から積み重なってきた祈りの蓄積、気配が感じられてしまうような場所です。吉野は特別そうですが、奈良って、何だか不思議な土地なんですよね。神々の気配が濃厚なんです。この本の中にも、春日大社の「おん祭」のことが出てきますが、NHKのドキュメンタリーで見た夜中の「遷幸の儀」などは、日本の原始の祈りの形がそのままで背筋に粟粒が立つような神気があるんですよね。そのせいか、年に何度かは出かけてしまう。ぼんやりと奈良の空を眺めているだけで、不思議にリセットされていくものがあります。目に見える風景の後ろに、何やら心に直接触れてくる遠い記憶の気配を感じるような。その空気も含めて、ならまちとか、興福寺とかの雰囲気の捉え方は、さすがに作家の眼だと思いました。

無意識の中に、膨大に膨れ上がっている私たちの記憶にアクセスするのが夢というものであるならば、ちゃちな人の力で開発されたモノに、振り回されるこの物語は、「今」の私たちの安易な選択の危うさもにおわせます。制御できると思えば思うほど、手に負えなくなるもの。理屈では割り切れない、予知という悪い夢の中を漂いながら、恋しい人にあの手この手で呼び出しをかける結衣子の孤独が、最後である結実を迎えます。やっぱり囚われてしまったんやね・・というか。初めから深く彼女に囚われ続けていた浩彰の旅に、とことん付き合った感満載の一冊でした。そうか。これは、ミステリというよりも、恋のお話だったのかもですね。

2011年11月
角川書店

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