箪笥のなか 長野まゆみ 講談社

画像
長い秋の夜に読むのにふさわしい懐かしい匂いのする
幻想譚がおさめられた短編集です。長野まゆみさんの作品は
いつも幻想的なのですが、時々幻想の世界に入りすぎてしまって
私にはしんどいこともあります。
でも、この作品は、現実と異世界のちょうどはざまを歩くような
その兼ね合いが絶妙。本から眼をふっとあげた時に異世界が二重写し
になるような酩酊感をもたらしてくれます。

現実と異世界を結ぶのは、一棹の箪笥。親戚から譲り受けた古い箪笥。
長らく道具として使われていろんな人の思いや不思議をいっぱい詰め込んだ
箪笥は、片方の小引出だけ留め金具の模様がちがう。
その箪笥と、主人公のやたらに人と違うものを見る弟がリンクするように、
不思議なものたちをひきよせる。
そしてそのたびに、引出には違うものが入っている。
ふっさりした毛皮の襟巻。つややかな真珠の一粒。お酒をいれておけば
すっかりそれを飲んでしまう・・。

あらすじらしきものはなく、箪笥と、主人公らしき女性と弟、そしてその家族達
や近所の大家さんなどが、箪笥が作りだす異世界の磁場を自由に出入りして
毎日をおくっていく、その断片が静かにかたられています。
ここでは誰も携帯やパソコンなんてもっている様子もない。
そして語られる日常が妙になつかしい。
田舎の古い家の雰囲気。いろんなものを自転車にのせている物売り。
ホームスパン、天鵞絨なんていう母親が使っていたような言葉遣い。
自由に綴られる姉と弟が幼い頃に見た異世界や不思議の数々。
もしかしたらこの作品で現実として語られている世界も異次元ワールド
で、そこからもう一つはみだした世界が幻想として語られているのかも・・。

あ、この夢は自分も見たようなきがする、と何度か思ってしまった。
その違和感のような既視感のような感覚の中にふわふわ漂って
とても気持ちがよかった・・。
この季節に風の音なんかを聞きながら読むのにとてもふさわしい本です。

おいしい本箱 → http://www.oishiihonbako.jp/detail.php?book_no=000554

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この記事へのコメント

ふらっと
2005年10月14日 06:56
新聞の広告に惹かれて
長野まゆみさん 初体験だったのですけれど
他の作品も読んでみたくなりました。

ちょっぴり≪普通≫から外れた物事を
大袈裟にすることなく、そのまますんなり受け止めている
登場人物たちにとても好感が持てました。
2005年10月14日 15:52
こんにちは、はじめまして♪
長野まゆみさん大好きで
タイトルみて繋いじゃいました☆
But、彼女のホモ系(?)の作品は
イマイチ馴染めず x x x
(ビミョーな作品は多いけど)
デビュー当初の方が好きなんです。
最近は“猫道楽”でチョイがっかり?!
どの作品が好きですか?
2005年10月14日 22:55
>ふらっとさん、TBとコメントありがとうございます。
 今日もやってみたけど、やはりTBはできない・・。くくっ・・。
 
>ゆりさん、コメントありがとうございます。
 私も長野まゆみさんの作品は、当たり外れありますね~・・。
 「海猫宿舎」でしたっけ・・。あの作品は好きです。
 ちょっと位相がずれたような感じが好きですね。
 これがずれすぎると、ダメになっちゃうんですよ。
 「よろづ春夏冬(あきない)中」は微妙でしたねえ。
 BLはキライじゃないんですが、長野さんの作風とBLは合うのか?
 と思ってしまうので。

 
2005年10月16日 09:27
おはようございます♪
ごめんなさい・・・「BL」って何でしょう?

ウチは長野さんの日本語の使い方が好きです。
旧い言葉を使うでしょう。
当て字もとても素敵です。
懐かしく又新鮮な表現の「お菓子」の使い方もいいですよね。
色の表現、小道具、着物、
モダンと云う言葉が生きてた時代の風情があっていい。
「野ばら」を筆頭に、「耳猫風信社」「天球儀文庫」シリーズ、
「銀木犀」「カンパネルラ」あの辺の個人的には作風が好きです。
「野ばら」以降3作程読んだ時、
「この人、絶対“宮沢賢治”の影響受けてる!」
と直感したのですが、案の定
「カンパネルラ」が出て、挙句は
「銀河電燈譜」「賢治先生」が出たときは
したり顔になりました(笑)
---おっと、エキサイトしてしまいました。。。
しかし、ここんトコ実は買ってません。。。
「コドモノクニ」を飛んで読んでみました。
(正直、あまり感銘は「?」でした(^^ゞ・・・)
2005年10月16日 22:54
>ゆりさん、ごめんなさい。BLとは、ボーイズラブのことです。
まあ言ってしまえばホモ系ですか。
ゆりさんはお幾つなのでしょう?私よりはきっとお若いと思うのですが、
旧い言葉に対する感性って、年齢は関係ないんですね。
言葉を自分を表現する道具として使いこなす感性って、大事ですよね。
文体を持っている作家、私も好きです。作品の感想は、日を変えて・・。
2007年04月22日 22:23
ERIさん、こんにちは。
『箪笥のなか』、意外な作品でした(水無月・R的には)。
最近の長野作品は結構ロコツに「少年愛」を描いていたので、ややヒキ気味だったのですが、この作品は安心して読めました(小心者)。
ゆるやかに、人ならぬものを受け入れる語り手・私の視線や、穏やかな語り口が素敵でしたね。

2007年04月22日 22:23
ERIさん、こんにちは。
『箪笥のなか』、意外な作品でした(水無月・R的には)。
最近の長野作品は結構ロコツに「少年愛」を描いていたので、ややヒキ気味だったのですが、この作品は安心して読めました(小心者)。
ゆるやかに、人ならぬものを受け入れる語り手・私の視線や、穏やかな語り口が素敵でしたね。