フリーキー・グリーンアイ ジョイス・キャロル・オーツ 大蔦双恵 訳 ソニー・マガジンズ

画像これはなかなか辛い小説だったんですが、
途中でやめられずに最後まで読んでしまった・・。
少女の目を通して描かれる家庭の崩壊が
非常に繊細なタッチで描かれている作品。
パパがこわすぎる・・。

ミステリーとしても読めるので、ネタばれになるかもしれません。
ご注意!



「フリーキー」というのは、「イカれている」「変わっている」
という意味らしい。この物語は、緑色の瞳を持つ、少女の物語。
主人公のフランキーは十五歳の少女。
「フリーキー・グリーンアイ」とは、14歳の日に生まれた
自分の中に住むもう一人の自分につけた名前。
パパに従順で、友だちとも明るく、そつなくつきあい、
無邪気にママに甘えた自分ではない、もう一つの自分。
フランキーのパパは有名なスポーツキャスター。
若い頃アメフトのヒーローであった彼は、家庭でも
とにかく皆を自分の思うとおりにしようとする。
ママはパパとは対照的な繊細な芸術家タイプ。
パーティに出たり、たくさんの知らない人と付き合ったり
することが苦手。二人の間には、少しずつ亀裂が入っている。
パパであるレイドは、家族すべて、特に妻を自分の思うままに
しておきたい。そしてそのためには暴力をふるうのも辞さない。
自分の価値観でしか家族をみられず、そこから少しでも抜け出す
ことは、「裏切り」である、としか思えない人間なのである。
妻であるクリスタは、そんな夫のおびえながらも、なんとか自分の
居場所を守ろうとする。それは週に何度か家を離れて自分だけのコテージ
に非難すること。しかし、それもだんだん許さなくなるレイド。
そして、子どもたちにも、悪いのは母親だという意識を植え付けようと
する。緊張がたかまる中で、フリーキーの部分ではその本当のところを
わかりながら、パパに同調しておくことで自分を守ろうとするフランキー。
しかし、おそれていたことが起こる。ママが失踪してしまうのだ。
ママのコテージに向かうフランキーは、そこでママの手記を見つけて・・。

思春期に生まれてくるもう一人の自分に「フリーキー」と
いう名前をつける感じやすい少女の内面が緊張感ある筆致で
綴られているのが、印象的。フランキーが自分の裸を鏡にうつして
眺めるシーンは、ムンクの「思春期」を思わせる繊細さに満ちている。
ママの苦悩を察知していながらも、フランキーはそれをママのせいだ、
ママがパパのいうことを聞かないからだ、と思おうとする。
パパに植え付けられた恐怖、もあるのだろうが、えてして思春期の
女の子にとって、ママというのは複雑な存在だと思う。
これまでただ甘えていた人が、自分と同じ女である、ということに
気づく時だから。自分の中の性の存在に気づく、ということが、
母親を見る眼を変えてしまう。同時に批判的な目を向けてしまいがちに
なるわけで・・。フランキーもママがいろんな傷や青あざを作っているにも
関わらず、その母を積極的に助けることはできない。
母はそれをわかっている。だからフランキーに自分から真実を告げる
ことはしない。ただ自分の愛する世界に娘を招いて、なんとか自分を
理解してもらおうとする。このあたりの母娘の感情のやりとりは
よくある思春期の一ページなのだが、パパはそんな母娘の交流も
許さない。二人の気持ちが通じ合う前に、二人を引き裂いてしまうのだ。

このパパの支配欲と独占欲は、すごい。
しかし、妻であるクリスタは、それでも夫を愛している、という。
これは家庭内暴力によくある構図、と聴くが、それだけでも
割り切れない男と女の難しさがあるような気がする・・。
だってねえ、どう見ても夫に殺されるのはわかってるんですね、彼女は。
でも、結局手の届かないところにまでは逃げなかった。
そこまで逃げてしまうと子どもたちを捨ててしまうことになる、
ということが耐えられなかったのか。
それとも愛していた夫への罪の意識なのか・・。
そのあたりがはっきりとは書かれていない彼女の手記が
よりあわれ。

その母親の手記を見つけたことから、フランキーはフリーキーが
わかっていた真実をまっすぐ見据えようと決意する。
たとえそれが一家の完全な崩壊を招くことになっても。
最後に会った父親の姿に、自分達の家庭の本当の姿をみた
フランキー。そこから始まる人生の始まりが静謐な雰囲気を
たたえているのに、救われたような気持ちになった。

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この記事へのコメント

2006年01月26日 23:22
コメント&トラバありがとうございました。
このパパは、ひどかったですね・・・。
支配欲も独占欲も、夫・父親ともなれば、
誰にでも多少あるものなんだと思いますが、
完全に、一線を越えてしまっていましたね。
だから、家族は崩壊してしまっても、
フランチェスカ的には、ハッピーエンドだと思いたいです。
彼女と妹には、幸せな大人になって欲しいですね。
では。
2006年01月27日 22:26
>ゆうきさん
確かにひどかった・・。でもこんな人いそう、というリアリティがありました。日本が母性の国なら、アメリカはやはり父性の国でしょう。しかし、理性をもたない父性は、おそろしいものです。