アグリー・ガール ジョイス・キャロル・オーツ 理論社

画像物語の主人公の魅力は、いうまでもなくその物語の感動を左右するものですが、この「アグリー・ガール」は、特にその魅力が強く感じられる作品。

アーシェラ・リグスは、大柄で、ボーイッシュな高校生。いつも男物の服を着て、耳には9個のスタッド・ピアス。短いブロンドの髪。彼女は自分のことを「アグリー・ガール」と呼ぶ。「アグリー・ガール」とは、醜い女の子のこと。でも彼女が自分をそう呼ぶときは、ただの醜い女の子じゃない。この世でたった一人の自分を誇り高く生きるための名前なのだ。「アグリー・ガール」。戦闘的で、傷つかないで、人にびくびくなんか、しない。背筋をピンと伸ばして、周りを見据える、かっこいい、クールな女・・。しかし、その「アグリー・ガール」の後ろに、アーシェラは繊細な感じやすい心をかくしている。まだアグリー・ガールになる前の、弱い自分に傷ついた悲しみを抱えている。そして、小柄で女の子らしい妹を可愛がる母親に対する反発。自分をあまりかまってくれない父親にたいする複雑な気持ち。バスケ部の友達や先生に対するプライド。揺れ動く自分を支えようとするもう一つの自分がアグリー・ガールなのだ。

物語は、平和な午後の教室に突然刑事がやってきて人気者の優等生マシュー・ドナヒーを学校爆破をたくらんだ
という疑いで連行するところから始まる。昼休みの冗談として言った言葉を、誰かが通報したのだ。恐れをなして、誰もマシューの言葉が冗談だった、と言ってくれない。警察に問いただされ、学校を停学になってしまう、マシュー。その事を知ったアーシェラは、親の反対を押し切って彼のために証言する。あれはただの冗談で真に受ける方がおかしいのだ、と。アーシェラの証言のおかげで難を逃れたマシュー。おどけ者の表面の裏に、鋭い感受性と誠実さを持つマシューは、アーシェラに感謝する。不器用に惹かれあう二人だが、その事件は様々に尾をひいて、二人を翻弄する・・。

アーシェラの自分自身に対するプライドの持ち方が、なんともかっこいい。女の子にとって、容貌というのは、もう一生を左右するばかりの大きな要素です。人はみかけじゃないよ、なんて言う言葉は「美しい」という事実の前でなんと色あせて見えることか。その尽きせぬ願望を打ち砕かれたアーシェラは、「アグリー・ガール」と自分を称することで、違うプライドを保とうとします。それは自分の生き方を律する、彼女だけの美学。その美学を貫くことで、彼女は一人の男の子の信頼を得ることになる。このあたりの勇気とガツンと筋の通った行動力は、胸がすかっとする、かっこよさ。しかし、その男の子を好きになることで今度は本来の繊細な彼女自身が揺らいで、顔をのぞかせる・・。そんな人間臭くて、純粋な彼女の内面を、オーツは非常に瑞々しいタッチで書き上げていきます。マシューと心を触れ合わせることで、アーシェラは友達の視線だけで部活をやめてしまうような、肥大した自分のプライドを溶かしていく。そして、芸術を愛する感受性に満ちた豊かな内面をのぞかせながら、更なる魅力的な女の子へと変わっていく。こうなりたい、と思う女の子はきっときっと多いはず。あたしなんて・・って、よく思っていた青春時代の自分にこの物語をプレゼントしたいなあ。

おいしい本箱 → http://www.oishiihonbako.jp/detail.php?book_no=0001003



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