まほろ駅前多田便利軒 三浦しをん 文藝春秋

画像久々に三浦さんの新しい小説を読むような
気がしますが・・。とっても三浦さんらしい、いい
雰囲気の小説でした。
心に空洞を持つ男同士が、ギリギリのところで支えあってる。
その微妙な立ち位置と、本当にお互いについて何も聞かない
男同士の気持ちのやりとりが、心地いいです。

まほろ市という,
都会と田舎の境目のような街で便利屋を一人で営む多田。
草むしりから、犬の世話から、納屋の整理まで
なんでもする彼のところに、昔同級生であった行天という
男が転がり込む。大して役にもたたず、どちらかというと
ヘンな男である彼を、多田はなぜか追い出せない。
昔、全く口をきかない男だった行天。それがなぜか一人で
しゃべりまくる、酒と煙草で命をつないでいるような男になっていた。
でも、低温動物のような雰囲気はそのまま。
そこから、男二人の不思議な共同生活が始まった・・。

行天という人物の持ち味が、この物語の鍵。
ひょこんと居ついた猫のようだな、と思う。
決して甘えるわけでもなく、尻尾をふってみせるわけでもなく。
はじめから大きな顔をしているのに、憎めない。
テンションが低く、自分にも他人にも興味がないようでいて、
傷ついたものをふっと抱きかかえる優しさを見せる。
彼の小指にはぐるりと傷がある。
昔工作機を使っていた行天にふざけたクラスメイトたちがぶつかって
その小指を落としてしまったのだ。なんとその当時、行天の声を
きいたのは、その時の「痛い」という一言、それきり。
・・・行天は彼に関わる人に、投げ出すように贈り物を残して
いくんだが、自分は一切受け取らない。いや、受け取るすべを
知らないらしい。そんな行天が、なぜか多田のところには
居つく。友達でもなく、仲間でもなく、傷をなめあうわけでもない。
ただ一緒にいるだけの二人。そんな二人が何を抱えているのかは
読んでいただくことにして、そんな二人の空気感が良かったなあ・・。
こういう感じは三浦しをんさんの独壇場ですねえ。
異性なら、くっついちゃうところなんですが、
同性だからそうはならない。お互いのことをべらべら話すわけでもなく、
でもなんとなく肌でわかりあってる・・。女同士だと、とにかく
しゃべりますんで、こういう感じにはならないんだなあ。
男同士が一緒にいる色気、のようなものがただよいます。
女はこういうのに弱いですね・・。(私だけかしら)
オマエのことが大切だ、とか口に出して決していわないくせに、
そいつが危ない、と思ったら全力で走っちゃう。
行天の小指の傷は、二人を繋ぐ絆のようですわ。
痛みでつながる二人。いや、いいですね・・。
この二人が便利屋稼業から発生するいろんな事件に
関わっていくんですが、メインはそこからあぶりだされる
二人の人生なんだと思います。
「血」の繋がりって、なんだろう。
それを考えさせられる話が多いです。
その一番濃い関係からはじきだされてしまったような二人。
そんな二人の「遠い旅」の物語なのかもしれないな、と思いました。

なんで女がこういうのに萌えるかというと、「どうやっても
この間には入り込めないのね」感が、想像力をかきたてる
からかもしれません。なんか男同士には、女にはわからん
なにかが、あるらしい。大した話もしてなさそうで、いっつも
ふざけてばっかりなのに、友達のことになると急にマジに
なったりして。女には見せないそんな顔に、こう嫉妬にも似た
うらやましい気持ちがかきたてられちゃったり・・。
坂木司さんの「青空の卵」のシリーズの、男二人の友情の
お話ですが、それよりは、もうちょっと男くさい感じ。
昔テレビでショーケンがやってた「傷だらけの天使」なんかをちょっと
思い出しました。最近こういう雰囲気のドラマがないなあ。
久々に、なんだか男くさいドラマか映画が見たくなりましたね・・。


おいしい本箱 http://www.oishiihonbako.jp/detail.php?book_no=001052
         http://www.oishiihonbako.jp/detail.php?book_no=000190
         http://www.oishiihonbako.jp/detail.php?book_no=000413
         http://www.oishiihonbako.jp/detail.php?book_no=000428
          http://www.oishiihonbako.jp/detail.php?book_no=000537
          http://www.oishiihonbako.jp/detail.php?book_no=000797


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この記事へのコメント

ふらっと
2006年04月27日 07:36
『青空の卵』シリーズよりも ちょっぴり大人な感じですね。
女同士にはない繋がり方にわたしもぐぐっと惹かれます。
2006年04月27日 21:35
>ふらっとさん
こんばんは!コメントありがとうございます。
ねね、この男くさい感じがなんだか色っぽいですよね。
確かに三浦しをん、全開!の一冊です。
2006年06月17日 07:02
ERIさん、おはようございます。
TBさせていただきました。
しをんさん、いいですね。
ユーモアを織り交ぜながら、伝えたいものをしっかりと伝えれる筆力、凄いと思います。
個人的には直木賞、大きなチャンスだと思っております。
森絵都さんか、しをんさんだと思っております。
2006年06月17日 23:16
>トラキチさん
おはようならぬ、こんばんは(爆)
しをんさんの物語の雰囲気が好きですねえ・・。
最近女性の書く小説をたくさん読みますが、しをんさんの文章には
誰にもない独特の魅力があります。直木賞!そこまでは気が付かなかったんですが、ほんと、とれたらいいですね。
ゆり
2006年07月13日 21:30
ERIさん、こんばんわ!コメントさせて頂くのは2回目です。読書の幅の広さ、美しい文章かつ、的を射たレビュー。とても参考になります。尊敬しています。読書好きの私ですが、仕事等々で時間が満足に取れない現状ですので、ERIさんのレビューを参考に本を選んだりもさせて頂いています。しをんさんのこの作品、私は好きです。多田と行天の関係は、ちょっとだけ羨ましいです。ホント、女同士では、こういうのはありえません。直木賞、森さんとW受賞されましたね!!伊坂さん、残念。ERIさん、お体に気をつけて、これからもブログ頑張ってください。楽しみにしています!長文でごめんなさい。
2006年07月13日 23:59
>ゆりさん
コメント、ありがとうございます。そんなに褒めていただくと、ちょっと身の置き所がないですが・・。素直にうれしいです。本当に励みになります。
ちょっと疲れ気味の私に、素敵なご褒美ありがとうございます。
え~、今日の直木賞の記事ではちょっと辛口になっちゃいましたが、私も三浦
さん、大好きです。物語の切り口がね、独特ですよね。自分の世界をちゃんと持っておられる。その中で伝えたいことがしっかり伝わります。これは、なかなか難しいことです。
長文大歓迎です。ほんと、ありがとう・・。
2006年09月09日 15:24
こんにちは~。
直木賞作品ということで1か月くらい待ちましたが、図書館で借りられました。
“男同士”の会話って絶対に(盗聴でもしない限り)聞くことが出来ませんからねー。その辺りが謎めいていて女にとっては色めいて見えますよね(笑)
多田と行天、シリーズ化したらいいなと思います。
2006年09月10日 00:09
>tokimekiさん
しをんさんは、その謎めいたところから生まれる女の妄想をくすぐるのが、非常にお上手です♪しをんさんとは妄想仲間のような気がする、今日この頃です(爆)
2006年09月19日 13:13
個性的な行天と、おせっかいな多田の奇妙なコンビネーション、空気感、距離感、ちょっと切ない部分が魅力的でした。これはやっぱり男同士でないとわからない世界なのでしょう。“そんな二人の「遠い旅」の物語なのかもしれないな”というセンテンスにERIさんの詩情と読みの深さを感じました。
「傷だらけの天使」ショーケンと水谷豊のコンビでしたね。懐かしいです。そういえば彼らも今で言うトラブルシューター(便利屋?)でした(笑)。
2006年09月20日 10:09
>藍色さん
あのドラマをご存知ということは・・同世代?(爆)
「男同士でないとわからない世界」、もしくはそんな男同士の世界を女がのぞいたときの三浦さん独特の妄想の世界なのかもしれません・・。
ドラマ化、私も希望です・・。