キッドナップ・ツアー 角田光代 新潮社

画像今日はえらく暑い日でした。
クーラーが嫌いなんで、汗だらだら流しながら耐えるん
ですが・・。本を読もうと思いつつ、ミステリーは頭に入って
こないし、恋愛モノは暑苦しい・・。
で、これを読み始めたら、このシチュエーションで読むのに
ぴったりでした(爆)

ハルは、小学校五年生の女の子。
お父さんとお母さんは離婚していて、ハルはお母さんと暮らしている。
ある夏休み、ハルのところに父親がやってくる。
そして、ハルをお母さんに黙って連れ出してしまう。
ハルはお父さんに誘拐されてしまったのだ。
ハルとお父さんの、あてどない旅がはじまる・・・。

このお父さんが、ほんとにどうしようもない(爆)
計画性なし。お金なし。なんだか頼りなくて、情けない。
大人気ないし。大体仕事もしてなさそうだし・・・。
大きな子ども、という感じ。つまり、理想の「お父さん」からは
まったくかけ離れた人。この感じは、最後まで同じ。
ハルの方がよっぽどオトナに見えるほどです。
ハルはもう五年生で、この「五年生」というのが微妙な年頃。
これが中学生になってたりすると、もう絶対に父親についてなんか
いかない。「異性」が強く意識されてしまうだろう。
そして、もっと小さい子のように「お父さん」に、自分の全てを
話してしまえるほど子どもじゃない。女の子は早くにオトナになります。
だから、お父さんと一緒にいても、いつもなんだか仏頂面をしてしまう。
手を繋いでもなんだかぎこちない。
でも、この二人の旅の空気感が、なんだか心地よい。

この本を読んでいて、昔の、本当に昔の自分を思い出して
しまった。私がまだこれくらいの女の子だった頃。
何を思ったか父親と一緒に近くの山にハイキングにいったことがあった。
そんな事は後にも先にも一度だけ。
何となく歩き出したはいいけど、二人で間がもたなくなって、えんえん
黙ったまま歩き通したなあ・・。
あの時のきまり悪さと、でもやっぱり先を歩く父親の背中をずっと見ながら
歩いたことを思い出してしまった。父親はもう亡くなってしまって、
あの日について聞いたことなかったけれども、あの日のぼんやりした
記憶は、とても懐かしい・・・。
このハルも、なんだかんだ文句を言いながら、ずっとお父さんについて歩く。
ほんとうは言いたいたくさんのことをうまく言葉にできまないままに。
それは文句だったり、慕わしい気持ちだったり、ふと思いだしたことだったり
するんだけれど、その言葉を胸に飲み込むたびにちょっとずつお父さんの
胸のうちもしみこんでくる。何も素敵なことの起こらない、最後は一文無し
になってしまうような旅なんだけれども、それはお父さんを一人の人間と
して見始めた旅。その一人の人間としてのお父さんの背中に顔をくっつけて
自転車に乗った日を、きっとハルはずっと忘れないだろう。
親だからこうしなきゃ、とか娘だからこうでなくちゃ、という
「家庭」の中での役割が全くない旅の中で、ハルは「人間」を
見つめる目を獲得したような気がする。

これはまた勝手な想像なんだけど、ハルはきっと大きくなったら
このお父さんみたいなタイプの人を好きになっちゃうんじゃないかな・・。
それは、それでいいことです(爆)

おいしい本箱 → http://www.oishiihonbako.jp/detail.php?book_no=001020

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